きみこえ

帝亜有花

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Halloween Monster if

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    街がオレンジのカボチャや、オバケ達のマスコットで装飾される十月、ほのか達の学校では球技大会や合唱コンクールといった行事の他に、レクリエーションの一環で学校としては珍しいハロウィンパーティーがあった。
    ルールは簡単で、仮装する、しないは自由。
    一人が所持出来るお菓子の数は大小問わず十個まで。
    一年から三年のクラス対抗で自由にお菓子を贈り、お菓子の獲得数が多い優勝クラスは食堂で使えるデザート券一週間分が貰える。
    仮装の衣装は各自用意だが、生徒会に目をつけられたクラス代表者三名は強制参加で仮装し、仮装コンテストにも出なくてはならない。
    その代わり、衣装は生徒会から無償で貸与されるが、用意された衣装に関して、一切の拒否権は無い・・・・・・。
    こんな行事があるのも、完全に暴走しがちな名物生徒会長の趣味からであった。


    ほのかは生徒会にコンテストへの参加を強く押され、クラス代表に選ばれてしまっていた。
    勿論、クラスの陽太と冬真も強制参加組だった。
    ハロウィンの当日、ほのかは用意された衣装を生徒会の人々に無理矢理着させられた。
    ほのかの衣装は黒猫のモチーフで猫耳のついたフードを被り、レースやフリルたっぷりの黒いミニのスカートにリボン付きの長いしっぽ、ピンクと黒の縞模様のニーハイソックスにショートブーツという格好だった。
    自分の格好が変じゃないだろうかと思いつつも教室の扉を開けると一斉に注目を浴びた。

「あ、月島さん黒猫さんだ!」

「本当だ、流石は生徒会クオリティ! 可愛いー!」

    そんな声が上がるもほのかには相変わらず聞こえてはいなかった。
    教室の中を見ると仮装している人が半数、もう半数は普通の制服姿だった。
    陽太達の姿を探すとクラスの中心に人だかりが出来ていて覗き見ると、早速陽太がお菓子を集めていて机の上は様々なお菓子の山が出来ていた。

「あ、月島さん着替え終わったんだ。可愛いじゃん」

    そう言う陽太の姿をマジマジと見ると、犬の様なフワフワな耳に、赤いヘアピンで片側の前髪を分け、千切れた鎖が付いた赤い首輪に、ベルトや鎖が多く使われたゴシックパンク風の服に、勿論思わずモフモフしたくなる様なしっぽも付いていた。

【犬さん? カワイイ】

「惜しい! 狼男だよ。もう参ったよ、生徒会の奴らに揉みくちゃにされて、好き勝手いじられてさー」

    そう言いつつも陽太の格好はとても似合っていて、衣装の完成度もかなり高かった。
    こんなに沢山の衣装を生徒会はどうやって用意したのだろうと、ほのかは疑問に思った。
    ほのかは陽太の傍にいつも当たり前の様に居る存在をキョロキョロと見回して探した。

【氷室君は?】

「ああ、冬真なら隣に居るけど」

    そう言われてほのかは小首を傾げながらも再び辺りを見回した。
    そこに存在するのは陽太と、群がる女子と、お菓子と、仮装した人しか見当たらなかった。

【?】

    冬真の事を見つけられずにいるほのかを見かねて陽太は隣の白いシーツを引っ張った。

「ほーら、お前もいつまでそのシーツ被ってるんだよ」

    陽太が掴んだそれは、ただのシーツに目の穴を開けた物を被っただけの、いわゆるシーツおばけだった。

「や、やめろ! 引っ張るな!」

    シーツおばけはジタバタと暴れ、陽太の手を振り払った。
    ほのかはまさかと思いスケッチブックに【そのおばけが氷室君?】と書いて見せた。

「そうそう、こいつも生徒会に無理矢理衣装着させられたんだけど、冬真のは俺より凝ってて凄いぞ! おい、いい加減皆に見せてやれよ」

    陽太はシーツの端を持ち下の方をチラリとめくった。

「おい、ふざけるなよ! 捲ろうとするな! こんな格好人に見せられるか!!」

   冬真はシーツの中からくぐもった声を出しながら陽太の手を再び振り払った。

「そんな事言っちゃって律儀に衣装は着てるのに、勿体無い」

    二人のそんなやり取りをほのかはじっと見ていた。
    冬真の口元はシーツで隠れているので何を言っているのかは分からなかったが、取り敢えず衣装が恥ずかしいという事だけ分かった。




    自由行動の時間になりクラスの人々は各自持参のお菓子を渡しに行ったり、またはお菓子を集めに行ったり、興味の無い者は教室で談笑するなど、各々の行動を取り始めた。
    ほのかもまたクラスの為に、そしてデザート券の為にお菓子集めに行こうと教室を出た。
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