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トキオの部屋 『 ナジミの場合 』
しおりを挟む「ごめん!わたし、自分の部屋の片づけがあるから!」
ハナ先輩がそう言ってトキオの部屋から出て行く。
当然だ。
引っ越しの真っ最中なのだから。
引っ越し業者が大量の荷物を運び込んで、帰っていくのと入れ替わりにトキオが病院から戻ってきた。
トキオのおじさんが車で連れて帰ってきたのだ。
美少女のユイと一緒に・・・
なんかもう2人で寄り添って、寄り添って、見ちゃいられないってわけよ!
どうなってんのよ!トキオ!!
あんたが好きなのは、ハナ先輩なのよ!!
で、アタシがあんたの事を好きなのよ!!
どうすんのよ!コレ!!
ま、アタシが撒いた種なんですけどね!
自業自得なんですけどね!
「トキオくん、それじゃ私、帰るね!」
おう!帰れ!帰れ!美少女!
「うん、ありがとうユイちゃん」
何だ!トキオ!
その名残惜しそうなデレデレした顔は!!
アタシに一度でもそんな顔をしたことがあんのかよ!こんちくしょう!
「明日、また来るからね!」
来なくていいよ!美少女め!
「うん、待ってる、ユイちゃん」
ま!待ってる!?
何言ってんだ、おめぇ!
てか、目の前にアタシがいるのが見えてないのか?
この2人には、アタシが見えていないのか!?
美少女のユイがクルッとアタシを見る。
「ナジミちゃん!後はお願いしますね!」
「は、はい」
「それじゃ、トキオくん!またね!」
「うん、またね!」
美少女のユイが帰っていく。
バタン。
ドアが閉まり、部屋にはトキオとアタシの2人になる。
な・・・なによ!
この気まずさは!
そ、そうよ!いつもの感じでいいのよ!
いつものアタシとトキオでいいのよ!
「トキオ、具合はどう?」
アタシがベッドに腰掛けているトキオの真横にストンと座る。
「え?」
トキオが小さく声を出して、アタシから少し距離を取って、座りなおす。
ちっ!トキオ!
あんた!何アタシから離れてんのよ!
なんなんだよ、てめぇ!!
「どうなのよ?
まだ頭、痛いの?」
「は、はい・・・少し・・・
あ、あの~、あなたは僕の幼なじみの・・・」
「ナジミよ!
あーー!もう!!
トキオ!」
アタシがトキオの顔を両手でバシッ!と挟む。
トキオの頬っぺたが圧縮され唇が飛び出す。
「あんた!ホントにアタシが分かんないの!
演技じゃないでしょうね!」
「ち、ちがい・・ますぅ」
アタシが両手で挟んだトキオの口が動く。
ちっ!
アタシが両手を離す。
「あの~、良ければナジミさんの事を教えてもらえますか?」
マジか・・・こいつ。
「トキオ!
アタシ達は幼稚園からの知り合いなの!
家は目の前に見えてるソコよ!
歳は一つ下!
だから、アタシに敬語なんか使うな!」
「は、はい・・・あ、
うん、分かったよ、ナジミさん」
「だから、ナジミさんもヤメろ!」
「う、うん、ナジミちゃん」
え?
ナジミちゃん・・・
なんか久しぶりにトキオからナジミちゃんなんて呼ばれた!
こ、これはこれで、なかなかイイじゃない。
なんかちょっと新鮮じゃない!
「そ、そうよ。
それでいいのよ」
「な、ナジミちゃん・・・」
「な、なに?トキオ」
「ちょっと僕、横になっていいかな?
やっぱり、まだ少し頭が痛くて・・・」
「あ、そうね。
ゆっくり休んで、トキオ」
アタシがベッドから立ち上がる。
「ありがとう・・・」
トキオが横になる。
そしてトキオがアタシを見つめる。
なによ?
何でそんな目で見るのよ!
そんな純粋な目で見られたら、なんか照れるじゃない!
やめろよ!トキオ!!
「何でまだ居るの?」
「は?」
「いや、何でまだココに居るのかなぁって・・・」
「は?
別にいいじゃない!ココに居たって!
いつもの事じゃない!」
「いつもの事なの?」
「そ!そうよ!
最近まで一緒に寝てたんだから!」
「え!?
一緒に!!」
ウソよ。
小学校ぐらいまでだけどね!
「幼なじみなんだから、それぐらい当たり前でしょ!」
当たり前なのか?
「そ、そうなんだ・・・
でも、ナジミちゃんといると、
ユイちゃんとはまた違って、なんだか落ち着く感じなんだよね」
「え?」
「なんか、一緒にいて安心するというか・・・」
な!何コイツ!
なに言ってんの!!
美少女のユイよりアタシのが落ち着く?
え?
アタシ、美少女に勝ってるってこと?
ヤバ!
アタシ、自分の顔が、真っ赤になってんのが分かる・・・
てか、トキオって、こんな事言うヤツだったのか!?
「ナジミちゃんが良ければ、もう少し一緒にいてくれる?」
「う、うん。
トキオが寝るまで、居てやるよ。
でも寝るまでだからね!
ハナ先輩の片づけを手伝わないといけないから!」
「ありがとう、ナジミちゃん・・・」
そう言って、トキオが目をとじる。
何だコイツ・・・
本当にトキオなのか?
コイツ、純粋無垢じゃないか!
よし!
いいだろう!
トキオ!お前はこのアタシが染めてやる!
アタシの色にな!
ヘッ!楽しみだぜッ!!
うっはっはっはっはーっ!!
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