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美容室 『 ハナの場合 』
しおりを挟む『ハナちゃん。学校の帰りにお店に寄って自転車に乗って帰ってくれるかな?』
お母さんからのメールだ。
私は今、学校の帰りで、お母さんの美容室に向かっている。
トキオのお父さんが、車でお母さんを迎えに来て買い物に行くらしい。
だから私がお母さんの自転車を家まで乗って帰るのだ。
これから、こういった事が増えてくるのかな・・・
わたしは、ぼんやりと考える。
というか!
今日、学校はプチパニック状態だった。
進路指導の教師2人が逮捕されたからだ。
なかなかの衝撃ニュースだ。
わたしはあの日の事がバレるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、
ナジミがマモルから聞いた話では、今のところは、なんとか大丈夫そうだ。
とにかくこの数日は大変だった。
ユイのストーカー事件からはじまり、
ナジミの拉致。
トキオの殺し屋。
そして突然のトキオの告白。
さらにトキオの記憶喪失。
その流れでの引っ越し作業。
もうヘトヘトだ。
引っ越しも土曜と日曜で必死に片付けて、寝る場所は確保しているが、まだまだである。
帰ったらすぐに片付けが待っている。
--- お母さんの美容室に到着 ---
わたしが美容室のドアを開けると、待合のイスに座っている男性が小さく頭を下げる。
おッ、新しいヘアモデルかな?
なかなかの男だわ。
かなりタイプかも。
わたしも男性に小さく頭を下げる。
「あら!ハナちゃん!来てくれたのね!
ありがとう!」
店の奥からお母さんが現れる。
「うん」
わたしが、お母さんの所に移動する。
店には、わたしとお母さんとヘアモデルの男性の3人だ。
「ごめんなさいね。ハナちゃん!
自転車、お願いできる?」
「うん、いいよ」
ま、そんな事より今はヘアモデルの男よ!
この男の情報を聞き出すのよ!
「ねっ!お母さん!」
わたしが小声で聞く。
「なに?」
「ねぇ!ねぇ!あのイスの人って、」
「あ、そうそう!
ハナちゃん、一緒に帰ってくれる?」
「え?」
「トキオくんと」
は?
「と、トキオ?」
「そう、トキオくん。
ほら、こういう状況なので気分転換にでもなるかなぁと思って、ヘアカットしてみないか聞いたの。
そしたら、お任せでお願いしますって言うから、お母さん頑張っちゃった」
はぁ?
私はイスの男性をゆっくりと振り返る。
「あれ・・・相田くん・・・なの?」
「そう、かなりスッキリしたでしょ?」
マジか!
この男が、ボサボサ頭?
ウソやろ!
めっちゃタイプやん!
ど真ん中やん!
わたし!撃ち抜かれとるやん!
「ハナちゃん、大丈夫?」
「あ、う、うん・・・」
「トキオくん、1人だと家に帰れるか不安だから、
ハナちゃん、連れて帰ってあげて」
「う、うん」
「それじゃ、お願いね!」
「わ、分かった」
わたしは、めっちゃタイプの男に近づく。
「あ、あの~、よろしくお願いします」
めっちゃタイプの男がわたしに話しかける。
マ!マジかぁー!
どどど!どうしよう!
わ!わたし!どうしよう!
ボサボサの前髪で隠れてて分かんなかったけど、
コイツ!見れば見るほどイイ男やん!
そ!そうか!
これ!お母さんがトキオのお父さんを連れて来た時の感じだ!
トキオのお父さん、わたしのタイプやん!とか思ったヤツや!
そりゃそうやろ!
落ち着いて考えたら分かる事やろ!
だって、あのお父さんの息子なんやもん!
ヤバイ!
緊張してきた!
だ!ダメだ!
落ち着け!落ち着くのよ!
わたしは、
「あ、それじゃ、行こうか」
と素っ気なく言い、先に店を出る。
「は、はい」
後ろから、めっちゃタイプの男の返事が聞こえる。
こ、これ・・・
ヤバくね?
わたし、この男と、ひとつ屋根の下とかいう状況ってことよね?
ど、どうしよう・・・
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