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07 激怒って何でしょうか?
しおりを挟む「く!来るわよッ!!タツキチーッ!!」
エレノアさんが悲鳴のように叫びます。
そうです。
中心の白っぽい建物に行くまでもなく、
魔物がドンドンこっちに押し寄せて来ているのです。
ドガガガガ!!
とかいう巨大な地響きと共に、魔物の波が押し寄せて来ております。
もうね、ほふく前進とか言ってる場合じゃないんですよ。
魔物に見つかるとかの問題じゃないんですよ。
ドガガガガ!!
僕はあと数秒で押し潰されます。
ただそれだけの話しなのですよ、これは。
「タツキチーッ!!」
エレノアさんの悲鳴が聞こえます。
あっという間ですよ。
一瞬で僕の視界が真っ暗になりましたよ。
魔物に覆われました。
ギューギューの満員電車を思い出しますよ。
あれの上にも大勢の人が乗ってるバージョンです。
ま、僕には魔物を消す力があるのですが、その方法が分かんないわけですよ。
魔物に消えろって言っても消えません。
目を閉じても消えません。
そしてこれが本当の最後ですね。
エレノアさん。さようなら・・・
僕は目をそっと閉じます。
ビシューーッ!!!
何かを引き裂くような凄まじい音がします。
そしてあの地鳴りのような音が、プレイヤーの停止ボタンを押したかのようにプツンと静かになりました。
僕は目を開けます。
「だから、あなた・・・どうやってるのよ・・・」
エレノアさんが呆然と立ち尽くしてつぶやきます。
「消えて・・・ますね・・・魔物」
見回すと、やっぱりウソのように魔物がいません。
エレノアさんがポカンと口を開けたまま動きません。
サラサラ~とか爽やかな風が吹いていますよ。
頬に当たると心地よい風です。
大量の魔物に踏みつぶされた雑草も、倒れてはいますが風にゆっくりと揺らいでおります。
遠くには、魔物に覆いつくされていた白い建物が、置物のようにポツンとあります。
「あの、僕、今も、」
「光ったわよ・・・」
エレノアさんがつぶやきます。
でも、ちょっと待ってくださいよ。
これ、
もしかして・・・
「分かったかもしれません。エレノアさん」
「なにが?」
「魔物を消す方法です」
「そ、そうなの?」
「はい。
でも今は、あの建物まで行ってみましょう」
「そうね」
僕たちは建物へ向かいます。
------- 白っぽい建物の前 -------
白っぽい建物は、薄いピンク色です。
それが遠くからは白に見えたのでしょう。
建物はキューブ型です。
真四角の面にそれぞれ大きな丸い円がくり抜かれています。
天井部分にも丸い穴が開いています。
穴は真っ暗、というか真っ黒で、近くから見ても中の様子は分かりません。
異空間の入り口の装いです。
「この穴から魔物が出て来てたのね」
エレノアさんが言います。
「そうですね、入ってみます?」
「そうね」
とエレノアさんが言った瞬間、
ヌーーーッと魔物が穴から顔を出します。
「うわぁあ!!」
突然の事でエレノアさんが驚きます。
「タツキチ!来たわよ!」
エレノアさんが魔物を指差します。
よーし。
試してみよう。
一か八かですよ。
エレノアさんが心配そうに見ています。
まず、
「魔物、消えろ」
僕はつぶやきます。
目を閉じます。
そして、
「エレノアさん・・・」
とささやきます。
ビシューーッ!!!
何かを引き裂くような凄まじい音がします。
僕はそっと目を開けます。
「き、消えたわよ、タツキチ」
建物の丸い穴から顔を出していた魔物は消えています。
「やっぱり・・・」
「ねぇ、タツキチ。
どうして私の名前をささやいたの?」
「分かりませんが、共通していたのは、最後にエレノアさんのことを考えていました」
「私のことを?」
「そうです。だからソレを試したんです」
「そ、そう、なのね・・・」
エレノアさんが少し顔を赤らめる。
「ねぇ、タツキチ、その、私の事って・・・うわっ!!」
え?
女の人?
突然、建物の穴から、エレノアさんの前に女性が飛び出してきました。
何?
なんですか?
「ウガァァアアガ!!」
今度は飛び出した女性のすぐ後ろから魔物が現れました。
「タツキチ!」
エレノアさんが叫びます。
僕はすぐに魔物の消去にかかります。
「魔物、消えろ」
そして目を閉じてささやきます。
「エレノアさん・・・」
ビシューーッ!!!
魔物が消えます。
「やめてーー!!」
穴から飛び出してきた女性が叫びます。
え?
「お願い!やめて!!」
女性が僕に向かって言います。
え?
やめるって何を?
僕はあなたを助けたのですよ?
「どういう事ですか?」
僕が女性に聞きます。
「あなたが、魔物を消したのよね?」
「は、はい。そうですけど・・・」
僕が答えます。
「私について来て!」
女性は、ちょっと不機嫌にそう言うと、何のためらいもなく穴の中に入ります。
僕はエレノアを見ます。
エレノアが頷きます。
僕たちは真っ暗な穴の中に入ります。
------- 穴の中 -------
ボワン!
という感覚と共に、目の前が明るくなります。
やっぱり、あの穴は異空間の入り口ですね。
あの小さな建物からあれだけの魔物が出てくるわけですから。
そこには街並みが広がっております。
この街並みというか、これ、巨大なショッピングモールの感じですね。
とてつもない巨大な空間の中に作られた美しい街。
でも誰一人いません。
オープン前のショッピングモール。
そんな感じです。
「こ、ここは・・・」
「ここはマモノースの街」
「マモノース?」
「そう。クイーンによって作られた街。
これからあなたをクイーンの所へ案内するわ。こっちへ」
女性はそう言うと近くの扉を開け、中に入ります。
僕も女性の後から中に入ります。
ショッピングモールで店員さんに連れられ、スタッフオンリーとか書いてあるドアに入る感じです。
通路をしばらく歩くと大きな空間というか巨大なホールのような所に出ました。
ちょっと薄暗いです。
奥の上座らしき所に背の高いイスがあります。
そのイスに女性が座っています。
そして、なぜかそこだけスポットライトが当たっています。
イスに座る女性は、体のラインが分かるピタッとした黒い服を着ています。
襟がでっかいです。
たぶん横からだと顔が見えないくらい、でっかいです。
「お前か!アタイの魔物を消したのは!」
イスの女性が叫びます。
この女性、かなり怒っていますね。
どうやら、私の魔物とか言っているので、ボスですね。この人。
悪党ですよ。美人さんですけど。
案内してきた女性が僕を指差します。
「はい、そうです、クイーン!
この者が魔物を消しました!
私はこの目で見ました!」
何だか大げさに両手を広げたりして演劇風です。
「きさま!よくも!アタイの魔物を!!」
とか叫んで、クイーンとかいう女の人が僕を指差します。
・・・・・。
指差してます・・・
シーーーン
しばらく沈黙の時間が流れます。
でもまだ、指差してます。
クイーンとかいう人は、僕を指差したまま動きません。
「あの人、どうしたんでしょうか?」
僕は小声で、隣のエレノアさんに聞きます。
「あなたの番よ」
「何がです?」
「会話の順番よ」
会話の順番?
「何ですソレ?」
「順番に会話をしないと先に進まないでしょ!」
とか言われてもですね。
意味がわかりませんよ、僕にはね。
ま、とりあえず、
「村長に頼まれました」
と僕が言います。
「村長?
あのクソジジイめ!
そうか・・・
あのジジイから、何て頼まれた!?」
お!
話しが進み始めましたよ。
「魔物が女性をさらって行くので、連れ戻して欲しいそうです」
「ケッ!連れ戻す?
なに言ってやがんだ、あのクソジジイ!
あれは解放してんだよ!女たちを!」
「は、はあ・・・」
「いいかい、あの村は考え方が古いんだよ!
いつまでも女を妙なしきたりで縛り付けて、村から出さないようにしてんだよ!!」
「は、はあ、そうなんですね」
「だから、アタイが魔物を使って女たちを救い出してんだよ!
だいたい魔物が何をしたって言うんだい!?
誰も傷つけてないし、何も壊してもいない!
女たちを救い出しているだけだ!
何もしちゃいない!
見た目が怖いだけなんだよ!」
「あの~、その辺の事情は僕、関係ないんで、とりあえず村長と話してもらえます?」
「は?」
「いや、だから僕、関係ないんで、本人同士で話し合いをですね、」
「お前!!
誰に向かって!モノ言ってんだコノヤロウ!!
ぶっ潰すゾ!てめぇ!!」
「いや、無理ですよ」
「は?」
「僕、消せるんで。
魔物」
「てめぇ!コノヤロウ!!
よかろう!出ておいで!みんな!!」
「はい!!」
巨大なホールに大勢の声が響き渡りました。
女性の声です。
で、その時はじめて、僕を遠巻きに大勢の女性たちが囲んでいる事を知りました。
なんか、みなさんそれぞれが、物騒な武器を構えてますよ。
こん棒に無数のトゲが出てたり、クサリの先にトゲ付きの鉄球がついてたり。
当たったらそうとう痛いであろう武器を持って、ジリジリと近づいてくるんですよ。
これ、あれです。
女性の戦闘民族ですね。アマゾネスとかいう女性の集団ですね。
僕、ピンチですよ。
「あの~、エレノアさん?」
僕がとなりのエレノアさんに言います。
「な、何?タツキチ」
「人は、消しちゃダメですよね?」
「だ、ダメに決まってるじゃない・・・」
エレノアさんが、挙動不審に周りを見回しております。
物騒な武器をゆっくり振り回しながらアマゾネスたちがジリジリと近づいてきます。
「どうすんの?タツキチ!」
どうしましょうね、コレ?
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