異世界転生派遣組織 ヒョンナコト・カンパニー

刺片多 健

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09 穴って何でしょうか?

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「エレノアさん?」
僕はクイーンの部屋を出たところで、隣のエレノアさんに聞きます。

「なに?タツキチ」

「オプシタイトの塊が手に入ると、どうなるんですか?」

「オプシタイトにはエネルギーが凝縮されているの。
 大きければ大きいほど価値があるの」

「へぇー」

「だから指輪のエネルギーも簡単に貯まるわ!
 そうなると2人ですぐに帰れるわ!」

「エレノアさんは、そんなに僕と一緒に帰りたかったのですか?」

「え?」

「だって、オプシタイトの塊って聞いて、あんなに喜んでましたから」

「あ、えっと実はね、タツキチ」

「はい」

「あなたは私のパートナーでしょ?」

「はい」

「異世界にパートナーを置いて1人で帰ると減点になるの」

「減点?」

「そう。
 だって少しの時間でも、あなたを1人にするのは危険でしょ?
 この世界は違うみたいだけど、もっと時間の流れが違う世界だったとしたら、私がこっちに戻ると1年たってる事もあるかもしれないでしょ?
 そうなったら、タツキチは1人で1年間待つことになるわ」

「はあ。まあ、そうですね」

何かよく分かんないですけど。

「だから異世界の移動はパートナーと一緒じゃないといけないの。
 それに、私、あと一回でも減点になると・・・」

「減点になると?」

「クビよ」

「クビ?」

「そう、解雇よ」

「解雇ってことは僕のアルバイト代は、」

「ないわ」

「ですよね。
 てことは一緒に帰らないといけないって事ですね?」

「そうなの」

「わかりました」

エレノアさんがそう言うのなら、そうなのでしょう。
だから僕はオプシタイトの塊を手に入れるために、モンスターなんとか・・・
えっと、そうそう、モンスターセルエッグとかいう宝石を見つけて、クイーンに持って行かなければなりません。

「あ!いた!」
僕をクイーンの部屋に案内してくれた女性が手を振って叫んでおります。

僕が女性に近寄ると、
「私の名前は、キャサリン。
 あなたをガイスト鉱山まで案内するわ!ついて来て!」
と言い、スタスタと歩き出します。

「あ、どうも、キャサリンさん。
 僕はタツキチと言います。
 案内ありがとうございます」

僕がそう言うと、キャサリンさんはチラッと見ただけで、スタスタと歩きます。

何か、機嫌が悪そうな人ですね。
美人さんですけど。





------- 白っぽい建物の前 -------


真っ黒い穴から抜けた僕らは、おそらく南西と思われる方へ進みます。
キャサリンさんが何の迷いもなくスタスタと歩いているので間違いないのでしょう。

僕は、前をスタスタ歩くキャサリンさんに尋ねます。
「あの~キャサリンさん」

「何?」
キャサリンさんは振り向きもせず答えます。

「ガイスト鉱山までは、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?」

「もうすぐよ」

え?
見渡す限りの台地ですよ?

「あの~、もうすぐって、山なんか見えませんけど」

「地下よ」

「え?地下?」

「ガイスト鉱山は地下鉱山なの。
 ほら!そこが入り口よ」
キャサリンさんが指差す。

マンホールらしき物があります。
キャサリンさんがマンホールのフタらしき物を持ち上げると穴が出現しました。

「じゃ、入って!」
キャサリンさんがアゴで穴を指します。

「入るって・・・」

これ、真っ暗ですよ?
人が一人やっと入る大きさですよ?
入ったらどうなるんですか?これ?

「あの、キャサリンさんから、お先にどうぞ」
僕は、こんな不気味な所に入りたくないので、キャサリンさんに先をゆずります。

「私はここまでよ。
 ガイスト鉱山の入り口まで案内するのが私の役目。
 さ、入って!」
キャサリンさんがアゴで穴を指します。

「これ、入るとどうなるんですか?
 なんか下まで落っこちる感じですか?」

「知らないわ」

「知らない?」

「ここに入って、出てきた人はいないの」

「え?
 それじゃ、どうしてココがガイスト鉱山の入り口って分かるんですか?」

「知らないわ。
 みんながそう言ってるから」

「みんなって誰です?」

「みんなよ!
 いいから早く入って!
 私もヒマじゃないんだから!」
キャサリンさんがイライラし始めましたよ。

「どうすんの?タツキチ」
エレノアさんが穴を覗き込んで言います。

「どうすんのって・・・
 この依頼は、やめましょう。エレノアさん」

「え?
 あなた、誰と話してるの?」
キャサリンさんが不思議な表情で僕を見ます。

「あ、いえ、何でもないです。
 独り言です」

ちょっと油断してしまいました。
キャサリンさんにはエレノアさんの姿が見えていません。
そして声も聞こえません。
でも僕には見えてますし、声も聞こえます。
思わず返事をしてしまいました。

「あなた、今、エレノアって言った?」

「え?言ってませんよ」
僕はウソをつきます。

「言ったわよ!エレノアって!」

何ですか、この人。
すごい興奮してますよ。

「あなた、もしかして見えるの?エレノアが!」

え?
キャサリンさんとエレノアさんって知り合いなんですか?

僕がエレノアさんを見ます。
エレノアさんは、ハトが豆鉄砲で撃たれたよう顔で、首を横に振っています。
どうやら知らないらしいです。

「どうなの!答えて!あなたにはエレノアが見えるの!?」

なんか、すごい必死ですよこの人・・・
どうしよう。なんか面倒くさいことになりそうですよ。
だから僕はこう言います。

「いいえ。見えません」と。

「ウソよ!
 あなた、さっきエレノアと会話してたわ!」

「・・・・・」

「お願い。
 本当の事を言って・・・お願い」

なんかね、僕、思ったんですけど、
こんなキレイな人にお願いされる事なんて滅多にないじゃないですか。
だからね、僕、
言いますよ。

「はい、見えてます」と。

「やっぱり!」
キャサリンさんの顔がパッと明るくなります。

「エレノア!どこ!
 私が見えてる?」
キャサリンさんが両手で探すような動きをしてキョロキョロします。

「あの~」
僕が、キョロキョロするキャサリンさんに声を掛けます。

「ねぇ!お願い!タツキチ!
 教えて!私、エレノアと話しがしたいの!」
キャサリンさんが僕の両肩をつかみ前後に揺らします。

話しって。
たぶん人違いですよ。
お互い知らない人ですよ。

「穴を覗いてます」
僕が言います。

「え?」

「エレノアさんは、穴を覗いてます」

「ここ?ここに居るの?エレノア!」

「はい、そこに居ます」

キャサリンさんが、穴を覗くエレノアにヨロヨロと近づきます。
エレノアさんが、近寄るキャサリンさんを見ています。

「エレノアーーー!!」

キャサリンさんが叫びながら穴に落ちて行きました。
スーっと吸い込まれる感じです。

「タ、タツキチ・・・」

「はい」

「あの人、落ちたわよ・・・」

「ですね」

「どうすんのよ?」

「はあ・・・」

どうしましょう?





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