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シークエンス 022
しおりを挟む「ほら!ヘンタくん!あと5分です!!」
マンビさんが廊下の先から、リビングの壁にある時計を指差して叫ぶ。
どうする?
このまま何もせずに、2人で自爆するか。
もしくは、一か八か暗証番号を打ち込んで、どちらか1人が脱出するか。
どうすれば・・・
・・よし!
「マンビさん!」
意を決して俺が叫ぶ。
「何!?」
「さっきの暗証番号って何の番号を押したんですか!?」
俺が、廊下をオロオロするマンビさんに聞く。
「えっと・・僕が映研に入会した日付と、辞めた日付と、僕の誕生日を足した数です!」
は?
「何ですか?ソレ?」
「数字の組み合わせです!彼らは数字遊びが好きなんですよ!
特に小さい方は数字が得意です!」
小さい方?
レナの事か?
そう言えば、マンビさんって、マリ監督とレナの事を名前で呼んだことないよな?
それだけ嫌な思いをしてきたのだろうか?
というか、数字が得意?
レナが?
カードキーの裏にエントランスの暗証番号をマジックで書き込んでたぞ?
数字を覚えるのが苦手じゃなかったのか?
あれはウソなのか?
いや、まあ、確かに、飛び入学で大学に入るぐらいだ。
本当は、普通とは違うのだろう。
てか、そんな事は今どうでもいいことだ!
「それじゃ、2回目の数字は?」
「1回目の数字を逆から打ちました!」
マジか・・・こいつアホやろ・・
いや、まてよ・・・そうでもないかもしれない!
なぜなら俺には心当たりがあるからだ。
そう!俺の家にある金庫の暗証番号だ!
あの番号は、俺の家の部屋番号だった!
だから、もしかして、ドアロックの暗証番号は部屋番号かもしれない!
0303!
いや!そうに違いない!
たぶんソレだ!
「あと1分です!!」
マンビさんが叫ぶ。
ど!どうする?
一か八か、部屋番号を押してみるか?
それで、もしカギが開いたら・・・
「マンビさん!俺、試したい番号があります!」
「え!?」
マンビさんが玄関のドアまで駆け寄って来る。
「0303・・・この部屋の番号です」
「そ、そんな・・そんな単純な数字じゃないですよ!!」
「大丈夫です。俺、自信があります」
「・・わ・・分かりました・・
それじゃ、カギが開いたら、君・・先に出てください」
マンビさんが真っ直ぐな目で俺を見る。
え?この人・・・
どうしたんだ?
なんで急に・・・
「いや、マンビさんが先に出て下さい・・」
俺は諦める。
ここは潔く諦める。
確かに、マンビさんを巻き込んだのは俺だ。
その結果、一度はチャラになっていた63万円を蒸し返してしまった。
これは1人の人生を大きく変える転機でもある。
そんな責任を俺は背負うことはできない・・・
だって、よく知りもしないギャンブル野郎にこれ以上、関わりたくないやろ?
ピ!
俺は、暗証番号を押しはじめる。
ピ!
「ちょっと待って下さい」
マンビさんが、テンキーから俺の手をそっと遠ざける。
「え?」
俺がマンビさんを見る。
「僕を信じてもらえますか?ヘンタくん」
マンビさんが小声でささやく。
え?
「それは、どういう・・」
「いいから、信じてください」
「で、でも、時間が・・」
ど、どういうつもりだ?
残された時間は、あと数十秒だ。
2人とも自爆するって事か?
せっかく俺が助けてやろうとしているのに、どういうつもりだ?
「僕、思い出したんです」
「何を、です?」
「いいから、そろそろ制限時間です。見ててください・・・」
マンビさんが目だけ動かし上を見て、耳をすます表情をする。
カシャン!
ドアロックが開き、赤いランプが緑に変わる。
あ!開いた?
「思った通りです」
マンビさんが、ニヤリと笑う。
これは、時間切れって事?
それとも脱出成功って事?
ガチャ。
マンビさんがゆっくりドアを開ける。
「これで2人とも無事です」
は?
「どういう事ですか?」
「僕、思い出したんですよ。
これ、プロジェクト・ダラボン、でしたよね?」
「はい」
「ダラボンといえば、映画史上、最も最悪とも言われている『ミスト』という映画があるんですよ」
「は、はい」
「究極の選択を迫られて、どちらかを選ばなければいけない場合、どうするか?」
「どうするんです?」
「何もしない」
「え?」
「何もしない、が正解なんですよ。時として時間が解決することもあるんです。
今これが正にそうなんです。さ、一緒に出ましょう。同時に」
「え?あ・・はい」
俺とマンビさんは、同時に303号室を出る。
あ!
「でも制限時間オーバーしたらダメだってありましたよ?」
「大丈夫です」
「え?」
「まだ、時間はあります」
は?
「ど、どういう事ですか?」
「君、携帯電話、持ってます?」
「はい」
俺が携帯電話を取り出す。
「時間を見て下さい」
「2時28分・・・」
え?
あれ?制限時間の90分まで、あと2分ある!
「えへへ、僕、これでも、元映研の助監督ですよ?
こんな事もあろうかと、時計を少しだけ進めてたんですよ」
あ!
そういえば、隠しカメラの位置を知りたいとかって言って、壁の時計を外してたな・・
「でも、どうして・・・」
「これは賭けです。
僕、あの2人が監視カメラで見ているのを想定して、わざと残り時間を叫んでたんですよ」
「どういう事ですか?」
「タイムリミットがあるって事は、終了しなければならないんですよ、このプロジェクトを!」
「はぁ・・」
だからどういう事だよ!
「終了時間に合わせて、このキーロックを解除するって事ですよ。
それが、このプロジェクトの終了を意味します。
だから僕が時計を早めて、残り時間を叫ぶことで終了時間と思わせたんです。
それで終了したと思った彼らは遠隔でキーロックを2分早く解除したんですよ」
「と、言う事は・・」
「そう!まだプロジェクトは終わっていないんです!
えへへ、僕らが、まんまと彼らを騙したってことです」
マンビさんが笑顔で答える。
「でも、勝者を決めなければ・・」
「だから同時に出たんですよ!
一緒に出れば、勝ち負けは関係ありません!でしょ?」
「は、はい・・」
いいのか?
これで・・いいのか?
こんな結末で大丈夫なのか?
「それじゃ、僕はこれで!
こんな事!もう2度とゴメンですから!もう巻き込まないで下さいね!」
マンビさんが片手を上げて遠ざかって行く。
「は、はい・・」
遠ざかるマンビさんの背中に、俺も片手を上げる。
ガチャン!
後ろからドアの開く音がする。
振り向くと、301号室(俺の家)から、マリ監督とレナが現れる。
やっぱり俺の家で監視していたのか・・・
「チッ!マンビの奴め」
レナがつぶやきながら俺の方へ来る。
「ですわね。面白くないですわ!」
マリ監督も首を振りながら俺に近寄る。
「何なんですかコレ?」
「プロジェクト・ダラボンですわ」
マリ監督が肩をすくめる。
「で、終わりですか?
俺とマンビさんは助かったんですか?」
俺が2人に聞く。
「ああ、目的は果たした。
だが、つまらない結末だ」
レナが不満げに俺をにらむ。
目的は果たした?
何なんだよ?
どうなればよかったんだ?
どっちかが先に出て、負けた方が警察に捕まればよかったのか?
冗談じゃねぇ!
ふざけんな!
人を何だと思ってんだ!
「ヘンタ、何してる。早く家に戻れ」
レナが301号室を指差す。
「は?何で?」
「ヘンタさん。3時から、プロジェクト・ワイラーの始まりですわ」
「へ?」
「へ?じゃありませんわ、ヘンタさん!
あと30分しかありませんわ!急いで準備ですわよ!」
マリ監督が俺の手を取り、301号室(俺の家)に駆け込む。
何?何?何?
どうなってんのよ!?
今、プロジェクトなんとかが終わったばっかりやろ!
で、何!?ワイラー?
なんだよそれ?
「監督!今度は何なんですか?プロジェクト・ワイラーって?」
玄関から押し込まれた俺が、マリ監督に聞く。
「ワイラーと言えば、ローマの休日ですわ!
さすがにヘンタさんでも、知ってますよね!?」
「ええ、まぁ・・なんか白黒の映画ですよね?」
いや、見た事は無いけど、なんとなくは知っている。
「そうですわ!アレをやるのですわ!」
マリ監督が嬉しそうにはしゃぐ。
「やるって何を・・?」
「デートだ」
レナがダイニングに入りながら答える。
デート?
は?
「ど、どういう事だよ?」
俺もダイニングに入り、レナに尋ねる。
「言葉通りだ。お前、サキとデートしろ」
はぁ?
はぁあああ!?
ま、マジで?
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