暗殺スキルで守りたい~最強暗殺者の息子、父から教わった技でもう誰も失いたくない

えうのむとさ

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05 魔物討伐と裏切り

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 晩御飯を食べ、準備を終えてそろそろ家を出発しようとしていた。 

 玄関まで、テイラさんが見送りに来る。 

 「気を付けてね。無茶してはだめですよ」 

 「はい」 

 

 俺はしっかりと答えた。

  

 「あなたもルカに無茶させないでよね」 

 「おう。まかしとけ」 

 

 ギルフさんは腕の力こぶを見せつけながら、笑顔で答えた。 

 

 「もう。本当かしら」 

 「大丈夫、大丈夫。ルカはもう俺たちが心配するほど弱くないよ」 

 

 ギルフさんはもっと早い時期から俺を魔物討伐に参加させてもいいと言っていたが、テイラさんは俺の身を心配して魔法学院の入試ギリギリまで魔物討伐の参加を許可してくれなかった。 

  

 テイラさんの後ろからシエルがひょこんと顔を出した。

  

 「お兄ちゃん……」

 うつ向きながら、か細い声で話しかけてくる。 

 お、シエルも俺のことを心配してくれるのか。やっぱり優し…… 

  

 「お土産、よろしくね!」 

 

 違った。 

 

 「あ……ああ!たくさんワイルドボアのお肉持ち帰ってくるからな……」 

 「わーーい」 

 

 

 まぁ、そんなもんだろう。

 年相応の子供の反応だ。

 いつも食べ物のことしか考えていないんだから。

 無邪気でかわいいな。



 

 「それじゃ、行ってきます」 

  

 二人に見送られながら家のドアを閉めた。 

 

 

 ---

 

 今から討伐しに行くのはワイルドボアという魔物だ。 

 毎年この季節になると、村の畑を荒らしに山の中から降りてくる。 

 そしてワイルドボアは可食部が非常に多い。 

  

 土地が悪く、農業が上手くいっていない、このキナノ村では貴重な食料だ。

 食べられない毛皮も服などに利用されている。

 

 ということで、度々討伐が行われている。

 

 討伐の仕方は簡単だ。 

 ワイルドボアは昼は活発に動きまわり、夜は死んだようにぐっすり眠る。 

 だから、寝込みを襲う。 

 あまり人手はいらない。 

 

 逆に人が多すぎると、ワイルドボアを起こしてしまう可能性がある。

 夜に2、3人で行くのが主流だ。

 

 今回は俺とギルフさんの二人だけ。

  

 ギルフさんの装備は身長よりやや長い槍が一本だけ。  

 とても軽装だ。 

 あとはワイルドボアの運搬用そりを左手で運んでいる。

 

 「ルカ。自分のナイフは持ってきたか?」

 「え?」

 

 なんで俺がナイフ隠し持っていること知っているんだ。

 

 「あいつの息子だからな。ナイフの一本や二本くらい隠し持ってるだろ」 

 「うん……バレてたんだ」

 「まぁな。でも、テイラに見つかったら、没収されると思うけどな。うまく隠せよ。テイラは良くも悪くも過保護だからな」

 「わかってるよ」

 

 家ではこの歳にもなって包丁すら持たせてもらえない。 

 ナイフの所持がバレたらどうなることか。 

 考えるだけで恐ろしい。

 

 「ナイフだけで大丈夫か?」

 「うん。てかナイフしか武器は扱えないよ」 

 「魔法の練習もしているんじゃないのか?」 

 「まだ飴玉みたいな水弾しか作れないんだよ。実用的じゃないんだ」 

 

 今日の午前中は魔法の練習をしていた。 

 

 「いやー俺も魔法に関しては全然ダメでな。あいにく教えてやれないんだ。テイラは治癒魔法使えただろ?テイラに教わらなかったのか?」 



 もちろん今日の夕方、家を出る前テイラさんに治癒魔法について聞いた。 

 そして実際にやってみた。 

 が…… 

 

 「まったくできなかった」 

 「はっはっは。そうか!」 

 

 ギルフさんは大きな口を広げて快活に笑った。 

 変に同情されるより気が楽だ。 

 

 「治癒魔法に適正がある奴なんて滅多にいないからな!」 



 俺もできない、と堂々と胸を張っていた。 

 いや自身気に言う所ではないだろ!! 

 

 一体俺はどんな魔法に適正があるんだー。 

 もしかしてどんな魔法にも適正がないとか……。 

 そ、そんなわけないか。 

 

 これ以上考えるのは辞めておこう。

 

 「あと一応これは受け取っておけ」



 ギルフさんはポケットから一つの首飾りを取り出した。

 「これは?」

 「俺が普段身に付けてるちょっとしたお守りだ。」

 

 古い物だが、見た所高価な水晶の首飾り。

 水色の、ひし形に加工された水晶が付いてる。

 上に上げると月明かりでキラキラと輝いていた。

 俺は素直にそれを受け取り、自分の首にかけた。

 

 

 二人で会話を続けながら山の中へ入っていく。

  

 「ワイルドボアは一匹なら大したことない」 

  

 ギルフさんが説明する。

  

 「いいか。注意するのはワイルドボアが群れで寝ていた時だ。一匹倒すとその音で周りの連中も次々に目を覚ましだし、襲ってくる」

 

 一匹で寝ている場合はあまり難易度は高くないが、そうなったら全力で逃げるしかない。 

 ワイルドボアは相当足が速いのが特徴だ。 

 だが俺も逃げ足には自信がある。 

 毎日走り込みを行っている。 

  

 暗殺においても足の速さはとても重要だ。 

 小さい頃から父にも言われてきた。 

 

  

 改めて道中で作戦を振り返る。

 寝ているワイルドボアを見つけたら音を立てないように接近する。

 まず、近くに他の魔物がいないか確認する必要がある。

 いなければ一撃で仕留める。

 

 とてもシンプルだ。

  

 「そういえば……」

 「ギフルさん!!」

 

 小さいけれど鋭い声でそう言った。



 「ああ。……いるな」



 静かな森の中に息を吐くときのかすかな音が聞こえている。

 暗く目が見えない分、聴覚がいつもより研ぎ澄まされる。

 じっと周りの音を聞く。

 

 ヒュー、フー、ヒューという音が規則正しいリズムを刻んでいる。

 周辺にはワイルドボアの寝息以外の音はない。

 

 「一匹だけみたいだね」

 「……そうだな」



 よし。

 これなら後は簡単だ。

 

 ……。

 なんだかギフルさんはあまり嬉しくなさそうだな。

 いや。

 おそらく集中しているのだろう。

 一匹だけだからといって気を緩めたりしないんだ。

 流石プロだ。

 面構えが違う。



 



 足元に落ちている枝に注意を払いながら音を立てず近づいていく。

 ゆっくり、ゆっくりと。

 一歩ずつ。

 

 あれ? 

 後ろを振り返った。

 ギルフさんは立ち止ったままだ。 

 どうしたんだろう。 

 俺一人でやってみろということか? 

 

 「ギル……」 

 「ルカ」

 

 俺の言葉を遮るようにギルフさんが名前を呼んだ。 

 

 「本当は群れでいたら良かったんだけどな」

 

 ん? 

 何を言ってるんだ? 

 

 「お前は強い。寝ているワイルドボア一匹じゃ簡単すぎるだろ」

 

 もともとそういう計画だろ? 

 本当に何を言ってるんだ?

 

 「俺はお前にもっと実戦経験を積ませてやりたいと思ってる」 

 

 そう言うとギルフさんは、スッーーーーーと大きく深呼吸した。

 なんだ? 

 何が始まるんだ? 

 

 「うああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 

 

 

 ……え? 

 

 ボフッ!?

 驚いたワイルドボアが一瞬で目を覚ました。

 

 「はっはっは!というわけだ!ワイルドボアと一対一で戦ってみろ!」

 

 は……? 

 ちょっ……

 ええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!?
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