暗殺スキルで守りたい~最強暗殺者の息子、父から教わった技でもう誰も失いたくない

えうのむとさ

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08 出発

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 時は刻々と進み、魔法学園の入試まで一週間をきっていた。

 

 そして今日、俺はこの村を出て王都グランメルに向かうことになっていた。

 

 グランメルまではここから馬車で三日ほどだ。

 今日出発すれば試験日よりは少し早めに到着するが、入試までの間は王都の雰囲気を味わうつもりだ。



 流石に、着いてすぐに試験だと慣れていない街に戸惑い、より緊張するかもしれないからな。

 少し早めに王都に行き空気感を味わうつもりだ。



 時刻は朝の8時。

 俺はもう準備を済ませ、玄関に立っていた。

 家族全員が見送りのため玄関に集まっていた。



 「ハンカチは持った?お洋服は十分ある?財布は入ってる?水筒は?危険なことはしちゃあ駄目よ。あとそれから……」



 「分かってるよ」



 リアルに10回は聞いたであろう台詞を途中で遮るように俺は言った。

 テイラさんはやはり心配症だな。

 俺や妹のシエルのことになるとすぐにこれだ。

 しかしそんなテイラさんをウザイと思ったことは一度もない。

 これも俺達の事を本当に大切に思っているからだと気づくくらいには、俺も成長していた。



 そんなテイラさんとは対象的にギフルさんは



「頑張れよ」



 と、この一言だった。

 いつも陽気なギルフさんにしては少し以外だったが、その一言が妙に色んな意味を含んでいるように感じた。

 

 お前なら必ず合格できる、と。

 実力はもう十分ある、と。



 そう伝えられている気がした。



 そしてシエルは……



 「お兄ちゃん……」



 と小声でつぶやいた。

 このあとの台詞を当ててやろう。

 どうせ『お土産よろしく』とか、『私も連れてって』とか言うんだろうな……

 いつも自分が優先。

 まぁそんなところがまだまだ子供で可愛いのだがな。

 

 しかし、そんな予想は当たらなかった。



 「絶対に合格してきてねっ」



 「!?」



 まさかあのシエルがそんな事を言ってくれるなんて……

 あんな予想をしていた自分が少し恥ずかしい。

 俺も成長しているということは、シエルも成長しているのだ。

 もうそんな幼くはないということか。

 俺の中ではまだまだ子供なんだがな。



 「ああ、もちろんだ」



 馬車はもう家の前に待たせてある。

 俺は家族三人と正面から向かい合った。

 

 「行ってきます」



 そう言って扉を開いた。



 「「「行ってらっしゃい」」」



 

 扉を開けた瞬間、日光が俺を照らし出す。

 

 気持ちいい青空もまた、俺を応援してくれているようだった。
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