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うまく言葉にできなくて
Ⅰ
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「てことで、私本書きたいんだよね。今宮は書いたりしないの?」
「ほ、本? それって小説家ってこと? 千里さんが書くの?」
「そ。で、書くの?」
「まあ、うん……。本当に趣味でちょこちょこ書いてるだけだけど……」
2学期が始まった。早速図書委員の当番決めが行われ、一年生がホワイトボードに自分たちの組を書いて行く。
今宮が眼鏡を直す。もしかして、パソコンをいじっていたのって、小説を書いていたのだろうか。聞きたいことがたくさんある。
「あ、そっか。一クラス少ないから足りないのか」
空欄の水曜日をみて、爺ちゃん先生が顎を撫でた。私たち二年生は五クラスあったからちょうど良かったけれど、1年生は四クラスだ。ぽっかり空いている、水曜日。
私は勝手に右手を上げていた。
「二年三組、水曜日やります!」
隣でえ、と小さい声が聞こえた。今宮が、ホワイトボードと私を交互に見ていた。ありえない、とでも言いたそうな顔だ。
「何、用事あるの?」
「いや、その、ちゃんと来てくれれば……」
「おお、助かる。千里さんがやっと真面目になったようですねえ」
爺ちゃんが、水曜日に2年3組、と小さい文字で書いた。嫌味なんて気にしてられない。そんなことより、やらなきゃいけないことがあるんだ。
「急に、どうしたの?」
すっかり仕事にも慣れ、新刊のカード作りをしていると、今宮がぼそぼそと話しかけてきた。初めは嫌で仕方なかった図書室の空気も本の匂いも、嫌いではなくなっていた。サボってもいない。かなり精進した。
「WORLDって知ってる?」
「……世界?」
「違う、いやあってるけど、アイドルグループ。そのメンバーの和泉君って子が好きなんだけどね、私が小説家としてデビューして、それを演じてくれたら最高だなって。あと優越感が欲しくて。バカみたいな理由だと思うけどさ」
行きたい高校すらなかった私に、夢を与えてくれたのは和泉君だ。背表紙にカードをセットし、キャスターに乗せていく。
「だから、本ばかり読んでるアンタに色々聞きたくて」
机の拭き掃除をしている今宮が、手を止める。それからふらふらと、本棚へと姿を消してしまった。やばい、何考えてるか全然わからない。
しかしそれからすぐに戻ってくると、手には2冊の文庫本が抱えられていた。
「これ、短編集だから読みやすいと思う。その、千里さん本全く読まないって言ってたから、まずは読むことが一番良いかなって。あ、でもあくまでオススメなだけだから、もしつまらなかったら全然戻してもいいし」
途中早口になる今宮。まさかこの短時間で、私に合う本を見つけてくれていたなんて。嬉しいというか、すごいというか。
「全然、ありがと。今日から2週間借りる。あ、そうだ」
どうせなら、和泉君が出る映画の原作も借りてみるか。タイトルなんだっけな。
「アレだ。初恋上級者……って知ってる? あるかな」
「返却されたばかりな気がする。でも、これ結構退屈かも」
展開遅いし、正直つまらない。そう言って、本を返却棚に置こうとした手を掴む。意外と太く、指がまわらなかった。だって、あの今宮が全否定なんて珍しいじゃん。逆に気になってしまった。
「良い! 読む! これ、和泉君が出るの」
「……うん、わかった。期限には気を付けて」
3冊の本の貸し出しカードに、自分の名前を書く。つまらないと言っていた恋愛上級者は、短編集よりも名前が埋まっていた。
「ほ、本? それって小説家ってこと? 千里さんが書くの?」
「そ。で、書くの?」
「まあ、うん……。本当に趣味でちょこちょこ書いてるだけだけど……」
2学期が始まった。早速図書委員の当番決めが行われ、一年生がホワイトボードに自分たちの組を書いて行く。
今宮が眼鏡を直す。もしかして、パソコンをいじっていたのって、小説を書いていたのだろうか。聞きたいことがたくさんある。
「あ、そっか。一クラス少ないから足りないのか」
空欄の水曜日をみて、爺ちゃん先生が顎を撫でた。私たち二年生は五クラスあったからちょうど良かったけれど、1年生は四クラスだ。ぽっかり空いている、水曜日。
私は勝手に右手を上げていた。
「二年三組、水曜日やります!」
隣でえ、と小さい声が聞こえた。今宮が、ホワイトボードと私を交互に見ていた。ありえない、とでも言いたそうな顔だ。
「何、用事あるの?」
「いや、その、ちゃんと来てくれれば……」
「おお、助かる。千里さんがやっと真面目になったようですねえ」
爺ちゃんが、水曜日に2年3組、と小さい文字で書いた。嫌味なんて気にしてられない。そんなことより、やらなきゃいけないことがあるんだ。
「急に、どうしたの?」
すっかり仕事にも慣れ、新刊のカード作りをしていると、今宮がぼそぼそと話しかけてきた。初めは嫌で仕方なかった図書室の空気も本の匂いも、嫌いではなくなっていた。サボってもいない。かなり精進した。
「WORLDって知ってる?」
「……世界?」
「違う、いやあってるけど、アイドルグループ。そのメンバーの和泉君って子が好きなんだけどね、私が小説家としてデビューして、それを演じてくれたら最高だなって。あと優越感が欲しくて。バカみたいな理由だと思うけどさ」
行きたい高校すらなかった私に、夢を与えてくれたのは和泉君だ。背表紙にカードをセットし、キャスターに乗せていく。
「だから、本ばかり読んでるアンタに色々聞きたくて」
机の拭き掃除をしている今宮が、手を止める。それからふらふらと、本棚へと姿を消してしまった。やばい、何考えてるか全然わからない。
しかしそれからすぐに戻ってくると、手には2冊の文庫本が抱えられていた。
「これ、短編集だから読みやすいと思う。その、千里さん本全く読まないって言ってたから、まずは読むことが一番良いかなって。あ、でもあくまでオススメなだけだから、もしつまらなかったら全然戻してもいいし」
途中早口になる今宮。まさかこの短時間で、私に合う本を見つけてくれていたなんて。嬉しいというか、すごいというか。
「全然、ありがと。今日から2週間借りる。あ、そうだ」
どうせなら、和泉君が出る映画の原作も借りてみるか。タイトルなんだっけな。
「アレだ。初恋上級者……って知ってる? あるかな」
「返却されたばかりな気がする。でも、これ結構退屈かも」
展開遅いし、正直つまらない。そう言って、本を返却棚に置こうとした手を掴む。意外と太く、指がまわらなかった。だって、あの今宮が全否定なんて珍しいじゃん。逆に気になってしまった。
「良い! 読む! これ、和泉君が出るの」
「……うん、わかった。期限には気を付けて」
3冊の本の貸し出しカードに、自分の名前を書く。つまらないと言っていた恋愛上級者は、短編集よりも名前が埋まっていた。
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