千里さんは、なびかない

黒瀬 ゆう

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こんなに苦しくないのかな

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 「えー、図書委員は月に5回集まりがあります。他の委員会よりもかなり多めですが、『日本一の読書の高校』を目標としており、本にはかなり力を入れております。なので、くれぐれもサボるといった行為は……」


 去年と同様、おじいちゃん先生がゆっくりと説明を始める。心を無にしている3年生、気だるそうな2年生、何も知らずに入り期待に目を輝かせる1年生。
 きっとこの子達は、来年一人もいないだろう。


 サナとは同じクラスになれたものの、今宮とは離れてしまった。私が1組で、今宮が5組。体育の時間も同じにならない。


 「クラスが離れても、図書委員に入ろう」


 そう約束したのに。今ここに、今宮の姿がなかった。3年5組には、知らない顔が二つ。
 今宮がいないのなら、図書委員になった意味がない。そもそも何でいないわけ⁉ そっちが言ってきたのに! うわー、なんかムカついてきた。私だって、好きで入ったんじゃない。


 万年不人気で、毎年図書委員はじゃんけんで負けた人がなるのに、今年は私のおかげですぐに決まった。神だと崇められた。全く嬉しくない。


 「すみません。辞退したいのですが」
 「却下です」


 おじいちゃんが私の声に被せるように言った。最悪だ。


 ーー三年生にもなると、途端に進路進路進路。新学期早々気が滅入る。


 「いやー、花凛が進学とはね。明日にはオーロラが見えるというか何というか」


 サナがケラケラと笑いながら、お昼の菓子パンを頬張る。なんて失礼な発言なんだ。


 「サナは美大だっけ」
 「うん。絵描くの好きだからね~。……そのことで、真面目な話がある」


 サナが咳ばらいをする。食べかけのメロンパンが、袋に入ったまま机に置かれた。


 「私、オタ卒するね」
 「……え?」


 オタ卒って。なんで、そんな急に。


 「いや~、あの、実は……。違う界隈の子の特典会ついて行ったらさ~見事釣られちゃいまして。てへ」
 「てへじゃないよ! 久我君どうすんの! 初期から応援してたじゃん!」
 「いや~WORLDもう十分有名になったじゃん? もうドームやるかもって噂だし。私、まだあんまり出てない子推すの好きなんだよね。
 てことで、名義何個か使う? 必要情報教えるけど」
 「3つください」
 「了解した」


 中学生の時からオタクをやっているのだ。おまけに目を引く美人だから注目されるのは当然のことで。顔の広いサナだから、友達はたくさんいる。特典会に呼ぶことがあれば、逆に呼ばれることがあった。
 サナが、いなくなってしまった。
 こんなに価値観合う子、いなかったのに。……次からは、一人かぁ。寂しい。


 「でもさ! もし一緒に行く人いなかったりしたらいつでも誘って! オタクの行けたら行くは、絶対行くだから」
 「わかった。そうする」


 どんどん変わる、周りの環境。
 春休み前に、私はプロットを元に一本の小説を書き上げた。タイトルは「君の指先は恋を奏でる」。人生で初めて書いた、私だけの作品。


 せっかく今宮に見てもらおうと思ったのに、いないし。あの日、委員会が終わってからすぐにスマホのメッセージアプリを使ってメッセージを入れた。そしたら、今年は変わった子がいて立候補され取られてしまったと。いやそこは負けるなよ、とスマホに向かって思わず文句を言ってしまった。


 それなら、PDFにでもして送ろうかな? 何より初めて最後まで書き上げた作品だ。何でもいいから、感想が聞きたい。
 そう思った矢先のことだった。


 今宮が、国立大学を狙っていると聞いたのは。学年一の秀才の進路、情報が漏れるのはあっという間だった。
 この自称進学校から国立大合格なんて出たら、きっと翌日には学校の外に垂れ幕がかかるだろう。それくらい珍しく、無謀。


 バカな私でもわかる。今宮はこれから、死ぬほど勉強しなくてはならない。
 勉強だけじゃない。アイツは「零」の名前も背負ってる。
 今のところ、活動休止やそれと言った情報は見ていない。つまり、受験と平行しながら執筆活動も続けるということだ。


 そんな多忙な生活になるのに。私の駄文を見てもらうなんて、申し訳なくなった。
 もしかしたら、図書委員に入らなかったのも意図してのことだったのかもしれない。そうだよね、忙しいのにこんなことやってられないよね。
 でも、大丈夫。今の私には、友達がいるから。
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