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好き好き目を見て言えたなら
Ⅲ
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ーーどう電車に乗ったのか、覚えていない。ただ、あれからの会場がお通夜状態だったことは覚えている。
和泉君が本当に脱退してしまうことを突きつけたのは、配信された時事ニュースだった。
「WORLD 和泉裕斗(21)、本日付で脱退&芸能界引退」
「花凛! 今日入ってるよね? 大丈夫?」
サナから連絡が入る。返事ができない。指が動かせない。窓から見える真っ暗な景色が、ただ流れてゆく。
千歩譲って、脱退は良い、良くないけど。でも、引退って。そんな急に。案の定、ファンからは何かしでかしたんじゃないかと噂されている。
家に着くと、電気も付けずにベッドに飛び込んだ。ただいまも言わない私に、お母さんの小言がブツブツと聞こえた。
壁に貼ってある、和泉君のポスターと目が合う。この頃から、脱退とか考えていたのかな、なんて勘繰ってしまい、余計落ち込んだ。
あ、小説の更新。……明日でいいや。
今は何も考えたくない。私はゆっくり目を閉じた。
翌朝目を覚ますと、もうお昼だった。授業のサボりが決定した。おまけに化粧を落としていない。最悪だ。気のせいか、目がゴロゴロする。
無意識にスマホを触る。WORLDの公式アカウントからは、和泉君の写真が消えていた。あっけない。こんなものなのか。
中学三年生、5月3日。見るもの全てにキラキラのエフェクトがつくほど、世界が輝いて見えた。和泉君が与えてくれたのは、将来の夢と生きがいと幸せ。
大学一年生、11月30日。好きだったのに。誰よりも応援してたのに。光が消えちゃった。私の体は、ほとんどが和泉君で出来ている。
私は、午前中で授業が終わるサナを近所のレストランに呼び出した。そして、思い切り泣いた。人目も憚らず、気が済むまで泣いた。
「最近さ、芸能人もインフルエンサーとして活躍してる人増えてるじゃん? だから、和泉君も近いうち個人アカウント開設するんじゃない? てか、もう事務所決まってたりして」
テーブルにてんこ盛りになったティッシュには目もくれず、サナはハンバーグを切っていく。私は何度目かわからない鼻をかむ。
「だと良いんだけど」
「てか、和泉君が一抜けとはねー。佐野かと思ったわ。あ、失礼か」
この日も、その翌日も、明明後日も。私はこまめにSNSを見ていたけれど、和泉君らしきアカウントが見つかることはなかった。
和泉君のいの字すら見なくなった頃。私は全てを諦めた。そしてそれと同時、「みんなの文芸部」を開くことをやめた。
どうしよう、何もやる気が起きない。授業にも出たくない。今まで何であんなに動けてたんだろう、私。あっという間に堕落した生活に逆戻りだ。
和泉君、今さら一般人なんかに戻れるのだろうか。小学生から今まで芸能界にいて、就職活動なんて出来るのだろうか。
何であんな急に辞めたんだろう。理由は一向に語られない。一度も女と撮られたことのない、完璧なアイドルだった。もしかして本当に、クスリとか犯罪絡み? うわ、嫌すぎる。和泉君はそんなことしない。ぶんぶんと頭を振る。軽い脳震盪。アホすぎる。
私の夢、なくなっちゃった。
和泉君が本当に脱退してしまうことを突きつけたのは、配信された時事ニュースだった。
「WORLD 和泉裕斗(21)、本日付で脱退&芸能界引退」
「花凛! 今日入ってるよね? 大丈夫?」
サナから連絡が入る。返事ができない。指が動かせない。窓から見える真っ暗な景色が、ただ流れてゆく。
千歩譲って、脱退は良い、良くないけど。でも、引退って。そんな急に。案の定、ファンからは何かしでかしたんじゃないかと噂されている。
家に着くと、電気も付けずにベッドに飛び込んだ。ただいまも言わない私に、お母さんの小言がブツブツと聞こえた。
壁に貼ってある、和泉君のポスターと目が合う。この頃から、脱退とか考えていたのかな、なんて勘繰ってしまい、余計落ち込んだ。
あ、小説の更新。……明日でいいや。
今は何も考えたくない。私はゆっくり目を閉じた。
翌朝目を覚ますと、もうお昼だった。授業のサボりが決定した。おまけに化粧を落としていない。最悪だ。気のせいか、目がゴロゴロする。
無意識にスマホを触る。WORLDの公式アカウントからは、和泉君の写真が消えていた。あっけない。こんなものなのか。
中学三年生、5月3日。見るもの全てにキラキラのエフェクトがつくほど、世界が輝いて見えた。和泉君が与えてくれたのは、将来の夢と生きがいと幸せ。
大学一年生、11月30日。好きだったのに。誰よりも応援してたのに。光が消えちゃった。私の体は、ほとんどが和泉君で出来ている。
私は、午前中で授業が終わるサナを近所のレストランに呼び出した。そして、思い切り泣いた。人目も憚らず、気が済むまで泣いた。
「最近さ、芸能人もインフルエンサーとして活躍してる人増えてるじゃん? だから、和泉君も近いうち個人アカウント開設するんじゃない? てか、もう事務所決まってたりして」
テーブルにてんこ盛りになったティッシュには目もくれず、サナはハンバーグを切っていく。私は何度目かわからない鼻をかむ。
「だと良いんだけど」
「てか、和泉君が一抜けとはねー。佐野かと思ったわ。あ、失礼か」
この日も、その翌日も、明明後日も。私はこまめにSNSを見ていたけれど、和泉君らしきアカウントが見つかることはなかった。
和泉君のいの字すら見なくなった頃。私は全てを諦めた。そしてそれと同時、「みんなの文芸部」を開くことをやめた。
どうしよう、何もやる気が起きない。授業にも出たくない。今まで何であんなに動けてたんだろう、私。あっという間に堕落した生活に逆戻りだ。
和泉君、今さら一般人なんかに戻れるのだろうか。小学生から今まで芸能界にいて、就職活動なんて出来るのだろうか。
何であんな急に辞めたんだろう。理由は一向に語られない。一度も女と撮られたことのない、完璧なアイドルだった。もしかして本当に、クスリとか犯罪絡み? うわ、嫌すぎる。和泉君はそんなことしない。ぶんぶんと頭を振る。軽い脳震盪。アホすぎる。
私の夢、なくなっちゃった。
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