泰斗と透の日常

野鳥

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憧れの食べ方

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「泰斗、生乳届いたぞー」
「……来たか」
「ふはっ、そんなに緊張しなくても」
「緊張じゃない、喜びに震えてるんだ」

ここでおさらいをしよう。
柳川泰斗は牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする体質で、オブラートを外して言うとめちゃくちゃお腹が下る。水みたいに出ちゃう。

牛乳の味は好きだから、テレビのコマーシャルで見ているだけだったチョコクッキーにダンク。猿や象や虎のコーンフレーク。なんなら刑事ドラマのアンパンと牛乳。カステラと牛乳。ドーナツと牛乳。
どれも美味しそうで、だけどお腹が下るからと買って貰えなかった少年時代。

大袈裟にいったが、泰斗にとっては昔から憧れていた。
一体どれだけ美味しいのだろうか…。
コマーシャルが流れるたびに思いを馳せた。

しかし、ついにそんな泰斗でも飲むことが出来る牛乳を透が見つけてきてくれた。
最初は半信半疑だったけど、次の日になっても全くお腹を壊さなかった。
奇跡だ…!!と感動したが、美味しすぎて飲み干してしまったことを思い出した時には膝から崩れ落ちた。
なんでもっと早く気が付かなかったのか!

しくしくと泣く泰斗に、よしよしと背中を撫でて慰めながら、

「今週も来週も再来週もずっと来るからな?そんなに哀しむなよ」

どっかで聞いたことがあるようなフレーズだが、優しい声で提案してくる。

「だからさ、来週までに食べたいもの全部買っとこうな」

な   に   そ   れ   最    高。

その時泰斗には透が菩薩のように微笑み、後光がさして輝いて見えた。


そして冒頭に戻る。

この日のために用意したのは虎のイラストのコーンフレーク、アンパン、ドーナツ、カステラだった。

「あああ、どれから食べよう…悩む」
「オススメはカステラかドーナツだな」

透は準備していた2つのマグカップに生乳を注ぐと、悩む泰斗の横で個包装のカステラを開けて口に放り込む。
もぐもぐと数回噛むと生乳を口に含んだ。

「ん、やっぱ美味いな」

透が食べるのを意味もなく固唾を飲んで眺めてしまった。
ハッと気がついて、泰斗もカステラの封を開ける。

「お、俺も食べる」

そっとカステラを頬張り、数回咀嚼し、いよいよ生乳を口に含んだ。

……………うっま。

もぐもぐごくごく、もぐもぐごくごく──。

一気にカステラもドーナツもアンパンも夢中で食べてしまった。

「おいしい。牛乳と合わさるとまろやかになる。おいしい」
「良かった良かった。ほら次はコーンフレーク食べてみるか?」
「みんなこんなに美味しく食べてたのか…」

まだ幸せに浸っている泰斗に、良かったなぁと頭を撫でて喜びを分かち合う透。

そして初めてコーンフレークを食べる泰斗にアドバイスをする。

「コーンフレークにはサクサク派としっとり派がいる。サクサク派は牛乳を入れてすぐに食べるんだ。柔らかいと不味いとまで言ってくる」
「へぇ、そんなに断言するほど?」
「そうだ。しっとり派はザクザクでもしっとりでも楽しめるけど。いや、厳密に言うとしっとり派にザクザクは好きじゃない派もいたな」
「知らなかった…コーンフレークに食べ方の派閥があるなんて」
「ただの好みだけどね」

ザラザラと器にコーンフレークを入れ、生乳をトポトポと入れていく。

「どっちが好きかわからないから、すぐに食べてみる」

ザクリッと音を立ててスプーンですくい、口に入れて咀嚼すると、ザクザクとした食感が心地よい。
だけど牛乳の液体部分とは混ざり合わない感じがした。
徐々にコーンフレークが牛乳を吸って柔らかくなり始めた。時間の経過で色々な食感を楽しめるのがとても楽しい。
夢中で食べ終えた感想は、少ししっとりしてから派が泰斗の好みだった。
その方が牛乳との相性がいい気がする。

さすがにこれだけ食べたらお腹もいっぱいになり、今回の憧れの食べ方イベントは無事に終了した。

「はぁ、美味しかった…他にも色々試してみたい…」
「また来週な。気づいてないと思ったけど、生乳全部飲み干してるからな」
「え?」

驚く泰斗の目の前には空っぽのガラス瓶が2本。

720mlって……実は少ない……?

と絶対に少なくはないが、またしても夢中になって飲んでしまった。

学習しない自分に打ちひしがれながら、今度こそ大事に飲むんだと誓う泰斗であった。



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