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「明日、街を出よ」! 聖女チセリを待ち受ける、宴会という名の最終試験
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前回のあらすじ。
襲ってきた魔族が自爆したように死んだのに蘇らせてしまった。どう言い訳しよう。
「ではゴーショーグンとその家族よ。大地の復活とこの街の守護を頼むぞ」
『かしこまりました! チセリ様! 一度家に帰り準備して参ります!』
いなくなる魔族たち。
ふぅ、とため息をひとつ。
「チセリ様、ワシは感動しました! 魔族を改心させるとは! さすが慈愛の象徴です!」
老人が私の両手をつかみ、縦に振ってくる。
「うむ。一応念のため本当に奴らが私の命令を聞いて働いているか確認はするから安心するが良い」
「わかりました! それにしてもさすがはチセリ様。最後まで責任感をお持ちで我々民衆のことを気にかけて下さるとは」
いや、同族と戦いたくないから、ここから出て行きたくないだけなのだが。この先魔族が襲ってきてもあの家族がなんとかしてくれそうだし。
「チセリ。それにしてもお腹がすいた。なんか食べたいんだけど」
ラクエルが余計なことを言ってくる。そんなことを言ったら食事までこの老人が監視してくるではないか。
私は出来たら一人でいたい。
「ははは。従者殿。しばらく待たれよ。今、勝利の祭りの準備をしております。今日は宴会ですぞ!」
「やったー!」
はしゃぐラクエル。
どこが良い。大衆でお前を監視しているぞ。下手な真似をしたら殺すと言ってるのがわからぬのか?
しかも宴会なら酒付き。酔った勢いとは恐ろしいものじゃ。
「チセリ様。宴会の準備が整うまで、少し休まれては。ここへどうぞ」
老人は私を、町で一番立派であろう建物の二階にあるテラスへと案内した。ここからは、民衆が忙しなく宴の準備を進める様子がよく見える。
そして、当然ながら老人の視線も、常に私に向けられている。
「私は少し疲れた。少し眠るから準備が終わったら呼んで欲しい」
「かしこまりました。チセリ様。では後ほど」
頭を深く下げて老人は部屋から出ていった。
「ラクエルよ。この宴会は、我々にとって新たな試練となるぞ」
私はラクエルに言う。
「なんで?」
「馬鹿者! 奴らは我々を酒で酔わせ、油断させようとしているに決まっておる! 下手なことを言えば背後から刺される可能性すらある」
「さすがに考えすぎじゃないの?」
「愚か者め。奴らはきっと私が悪魔姫だということに薄々感じ取っているわ。じゃが証拠がないから自白させるつもりじゃ。レベル17じゃと腹一杯になった奴らには到底勝ち目はない」
私は頭を抱えると、ドアをノックされた。
「失礼します。チセリ様。長老がどのような酒を嗜むか聞いてこいと言われまして」
知らない女。レベル察知をするとレベル17。同格か。少し安心する。
「私は酒は好まぬ。水で良い」
「ならば聖水を用意しますね。山の麓でとれた美味しい水です」
「は?」
聖水じゃと? 悪魔姫の私にしたら即死レベルの毒なんだけど。私に毒耐性や即死耐性があるかも知れぬとは言え確証はない。というか、自ら毒を飲んだ時って耐性って働くの?
酒を飲まぬなら自決せよということか。
「また踏み絵じゃな」
「は?」
「シルフィよ。アルコールが薄い酒があると助かると老人、いや、長老に伝えてくれ」
「私ごときにまで聖女様のお名前の洗礼を! 一生大事に致します!」
両膝をついて拝んでくるシルフィ。
この女はシルフィ。シルフィ。
必死に名前を覚えようとする。
「では長老に伝えてきます。今夜の宴会、楽しみにしてて下さいね!」
そう言うと彼女は出ていった。
「ラクエルよ。どう思う? この身体に聖水は危険じゃよな?」
「さぁ。案外普通に飲めるんじゃない? 蘇生の魔法を使った時に思ったけど、チセリの身体はレベル17の聖女だと思うよ?」
言われてみればそうだ。私は悪魔姫だとわかっているから、周りが敵に見えるだけで、見た目は聖女。
おそらく周りは私を聖女として扱っているのだ。
長老もレベル80の強者だが、私を大切に扱ってくれるだろう。
それなら皆の行動も納得できる。
そうわかると身が軽くなった思いだ。
「フッ、愚かな人間どもよ。私を敬うが良い」
「私、思ったんだけどチセリって案外単純よね」
「やかましい。杖に戻すぞ。しかし聖女として振る舞っていれば身の保証は安心できることがわかったのは大きい」
日も暮れた頃、宴会の準備ができ、長老に呼ばれ祭りの会場に向かう私たち。
「チセリ様。休まれたみたいで顔色が良くなった気がしますな」
「フッ、戯言を」
相変わらず長老は隙だらけだ。とてもレベル80とは思えん。しかし襲ってこないならこちらから手を出す必要性もないだろう。精々油断するがいい。
「チセリ様。どうぞ主役席に。ささやかではございますが、今夜は楽しんで下さい」
「ウム」
「明日には魔王討伐のため街を出られますゆえ、鋭気を養ってくだされ」
「え? 明日?」
「100年くらい面倒見てくれるのではないのか? ほら、あの魔族たちが約束を守るとは限らんし。しばらく様子をみないといけないじゃろ?」
「100年なんてまたまた御冗談を。それにあの魔族たちですが先程来て、共存する契約を結びましたから大丈夫です。魔族とはいえ、改めて話をしてみると我々でも心が通じ合うんですな」
あの魔族め。余計なことを。
こうなったら酒で長老を酔い潰し、出発の日程を後伸ばしにするか、暗殺するしかない。
そう覚悟を決めさっき油断している時にやっておけばよかった、油断していたのは私だったと後悔した。
適当なスピーチを終え、宴会が始まり、皆楽しそうだ。私はというと明日から始まるデスマーチが来ないようチャンスを狙っていた。
「長老、それは?」
私は長老が片手に持っている酒瓶について尋ねた。
「チセリ様もお飲みになられますか?」
「いや、飲む飲まないでなく、名称に魔王と書かれておるが」
「はい。帝都の職人が作った銘柄らしいですが、これを飲んだら強くなりそうな気がしますの」
「フッ、戯言を。酒を飲んだくらいで強くなったら苦労せんわ」
「それもそうですな!」
そんな会話をしていると、
「あ、日付けが変わったな。皆!」
知らない男がみんなに呼びかけると、
「長老。おめでとうございます!」
次々に長老を褒め称えた。
何事じゃ?
私は長老にレベル察知をすると、
レベルが81になっているではないか。
魔王という酒のせいか?
ますます差が開いてしまったではないか。
「村長。実は私も18になったんです」
確かこやつはシルフィじゃったか。
私と同じレベル17じゃったから印象に残っておるわってレベル18じゃと!?
いつの間にレベルを上げたのじゃ?
「シルフィよ。お主、何をしたのじゃ?」
「あっ、チセリ様。何をしてたって私、未成年だから聖水を飲んで踊ってました」
クッ、あの猛毒か。
私もレベルを上げたいがさすがに毒はまずい。いや、聖女の身体じゃから大丈夫か?
覚悟を決めてこう言った。
「私にも一杯くれないか?」
こうしてチセリは、生まれてから初の猛毒チャレンジを試みるのでありました。
次回に続く。
襲ってきた魔族が自爆したように死んだのに蘇らせてしまった。どう言い訳しよう。
「ではゴーショーグンとその家族よ。大地の復活とこの街の守護を頼むぞ」
『かしこまりました! チセリ様! 一度家に帰り準備して参ります!』
いなくなる魔族たち。
ふぅ、とため息をひとつ。
「チセリ様、ワシは感動しました! 魔族を改心させるとは! さすが慈愛の象徴です!」
老人が私の両手をつかみ、縦に振ってくる。
「うむ。一応念のため本当に奴らが私の命令を聞いて働いているか確認はするから安心するが良い」
「わかりました! それにしてもさすがはチセリ様。最後まで責任感をお持ちで我々民衆のことを気にかけて下さるとは」
いや、同族と戦いたくないから、ここから出て行きたくないだけなのだが。この先魔族が襲ってきてもあの家族がなんとかしてくれそうだし。
「チセリ。それにしてもお腹がすいた。なんか食べたいんだけど」
ラクエルが余計なことを言ってくる。そんなことを言ったら食事までこの老人が監視してくるではないか。
私は出来たら一人でいたい。
「ははは。従者殿。しばらく待たれよ。今、勝利の祭りの準備をしております。今日は宴会ですぞ!」
「やったー!」
はしゃぐラクエル。
どこが良い。大衆でお前を監視しているぞ。下手な真似をしたら殺すと言ってるのがわからぬのか?
しかも宴会なら酒付き。酔った勢いとは恐ろしいものじゃ。
「チセリ様。宴会の準備が整うまで、少し休まれては。ここへどうぞ」
老人は私を、町で一番立派であろう建物の二階にあるテラスへと案内した。ここからは、民衆が忙しなく宴の準備を進める様子がよく見える。
そして、当然ながら老人の視線も、常に私に向けられている。
「私は少し疲れた。少し眠るから準備が終わったら呼んで欲しい」
「かしこまりました。チセリ様。では後ほど」
頭を深く下げて老人は部屋から出ていった。
「ラクエルよ。この宴会は、我々にとって新たな試練となるぞ」
私はラクエルに言う。
「なんで?」
「馬鹿者! 奴らは我々を酒で酔わせ、油断させようとしているに決まっておる! 下手なことを言えば背後から刺される可能性すらある」
「さすがに考えすぎじゃないの?」
「愚か者め。奴らはきっと私が悪魔姫だということに薄々感じ取っているわ。じゃが証拠がないから自白させるつもりじゃ。レベル17じゃと腹一杯になった奴らには到底勝ち目はない」
私は頭を抱えると、ドアをノックされた。
「失礼します。チセリ様。長老がどのような酒を嗜むか聞いてこいと言われまして」
知らない女。レベル察知をするとレベル17。同格か。少し安心する。
「私は酒は好まぬ。水で良い」
「ならば聖水を用意しますね。山の麓でとれた美味しい水です」
「は?」
聖水じゃと? 悪魔姫の私にしたら即死レベルの毒なんだけど。私に毒耐性や即死耐性があるかも知れぬとは言え確証はない。というか、自ら毒を飲んだ時って耐性って働くの?
酒を飲まぬなら自決せよということか。
「また踏み絵じゃな」
「は?」
「シルフィよ。アルコールが薄い酒があると助かると老人、いや、長老に伝えてくれ」
「私ごときにまで聖女様のお名前の洗礼を! 一生大事に致します!」
両膝をついて拝んでくるシルフィ。
この女はシルフィ。シルフィ。
必死に名前を覚えようとする。
「では長老に伝えてきます。今夜の宴会、楽しみにしてて下さいね!」
そう言うと彼女は出ていった。
「ラクエルよ。どう思う? この身体に聖水は危険じゃよな?」
「さぁ。案外普通に飲めるんじゃない? 蘇生の魔法を使った時に思ったけど、チセリの身体はレベル17の聖女だと思うよ?」
言われてみればそうだ。私は悪魔姫だとわかっているから、周りが敵に見えるだけで、見た目は聖女。
おそらく周りは私を聖女として扱っているのだ。
長老もレベル80の強者だが、私を大切に扱ってくれるだろう。
それなら皆の行動も納得できる。
そうわかると身が軽くなった思いだ。
「フッ、愚かな人間どもよ。私を敬うが良い」
「私、思ったんだけどチセリって案外単純よね」
「やかましい。杖に戻すぞ。しかし聖女として振る舞っていれば身の保証は安心できることがわかったのは大きい」
日も暮れた頃、宴会の準備ができ、長老に呼ばれ祭りの会場に向かう私たち。
「チセリ様。休まれたみたいで顔色が良くなった気がしますな」
「フッ、戯言を」
相変わらず長老は隙だらけだ。とてもレベル80とは思えん。しかし襲ってこないならこちらから手を出す必要性もないだろう。精々油断するがいい。
「チセリ様。どうぞ主役席に。ささやかではございますが、今夜は楽しんで下さい」
「ウム」
「明日には魔王討伐のため街を出られますゆえ、鋭気を養ってくだされ」
「え? 明日?」
「100年くらい面倒見てくれるのではないのか? ほら、あの魔族たちが約束を守るとは限らんし。しばらく様子をみないといけないじゃろ?」
「100年なんてまたまた御冗談を。それにあの魔族たちですが先程来て、共存する契約を結びましたから大丈夫です。魔族とはいえ、改めて話をしてみると我々でも心が通じ合うんですな」
あの魔族め。余計なことを。
こうなったら酒で長老を酔い潰し、出発の日程を後伸ばしにするか、暗殺するしかない。
そう覚悟を決めさっき油断している時にやっておけばよかった、油断していたのは私だったと後悔した。
適当なスピーチを終え、宴会が始まり、皆楽しそうだ。私はというと明日から始まるデスマーチが来ないようチャンスを狙っていた。
「長老、それは?」
私は長老が片手に持っている酒瓶について尋ねた。
「チセリ様もお飲みになられますか?」
「いや、飲む飲まないでなく、名称に魔王と書かれておるが」
「はい。帝都の職人が作った銘柄らしいですが、これを飲んだら強くなりそうな気がしますの」
「フッ、戯言を。酒を飲んだくらいで強くなったら苦労せんわ」
「それもそうですな!」
そんな会話をしていると、
「あ、日付けが変わったな。皆!」
知らない男がみんなに呼びかけると、
「長老。おめでとうございます!」
次々に長老を褒め称えた。
何事じゃ?
私は長老にレベル察知をすると、
レベルが81になっているではないか。
魔王という酒のせいか?
ますます差が開いてしまったではないか。
「村長。実は私も18になったんです」
確かこやつはシルフィじゃったか。
私と同じレベル17じゃったから印象に残っておるわってレベル18じゃと!?
いつの間にレベルを上げたのじゃ?
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「あっ、チセリ様。何をしてたって私、未成年だから聖水を飲んで踊ってました」
クッ、あの猛毒か。
私もレベルを上げたいがさすがに毒はまずい。いや、聖女の身体じゃから大丈夫か?
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