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聖女の法衣は脱げない!? 装備に縛られた、Lv.17の悪あがき
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前回のあらすじ。
私の手が震える。
手にはグラスに注がれた、どこかの山から採集した美味しい水。
通称、聖水。
飲んだら死ぬかも。
正直、聖女レミットに敗れた時よりもずっと怖い。
しかし、どこかのサイヤ人も死にかけたら強くなるという話を聞いたことがある。
私もこの水を飲んだことによりレベルが上がるはずだ。
それに、一度決めた覚悟だ。
私は目を閉じて一気に飲み干す。
そして安堵して一言つぶやいた。
「命あることに感謝を」
翌日、納得がいかないまま街を出発することになった。
「魔王は東の果てに住むと聞きます。十分お気をつけ下さい」
長老にそう言われて、少ない金貨を渡されたが、死を覚悟して聖水を飲んだのにレベルが上がらなかったのは納得がいかぬ。とリターンの皆無を気にしていた。
結局、少ない金貨が入った袋を握りしめ、長老と、彼らの熱狂的な視線から逃れるように東へ向かって歩き出すことになった。
ラクエルは歩きたくないという理由で杖の姿に戻り、私に背負われている。
途中にゴミ箱があったらぶん投げていきたい気分だ。
東か。とりあえず北か南に曲がろう。
寄り道してはいけないというルールはないし、そもそも私が魔王を倒す義理はない。
魔王に何かされたとかいうならまだしも、恨みなんかなければ、むしろ魔王目線、私のことを何もしてないのに殺しに来た人間と認識することだろう。
しばらく歩いていると、立て札があった。
北:聖女の里
東:魔王城
南:勇者協会本部
西:旅立ちの街
東に歩くしか選択肢がないように見えるのは私だけだろうか?
チセリは立て札を凝視し、絶望的な気分になった。
「ラクエルよ。お主はどう思う? 北は聖女の里。聖女としての振る舞いを四六時中求められる上に、憎たらしいレミットの残した聖なる教えを聞かされるに決まっておる。拷問じゃ」
背中の杖が、小さく揺れた。
「南は勇者協会本部。あそこにはLv.100を超えるような脳筋の人間どもがゴロゴロおるはずじゃ。もし私が元悪魔姫だとバレたら、Lv.80の長老に殺される前に、あやつらに晒し者にされて、レベル測定の実験体にされるかもしれん」
チセリは杖を掴む手に力を込めた。
「そして東は魔王城。Lv.17の私では、即死じゃ。だが、長老に命じられた通り東へ向かうフリをして、魔王城の近くで法衣を脱ぎ捨て、Lv.999の力を取り戻せるチャンスはある……」
「…...今ここで脱いだら?」
「下着でうろつきたくはない。私にそんな趣味はない。長老から資金はもらっておる。街につき、服を買うまでの我慢じゃ」
東に再び歩き出してしばらくして。
「ラクエルよ。街が見えたぞ。野宿は避けられそうじゃな」
街に着くなり、門番が二人立っていた。
レベル察知をすると、レベル31と45だった。
「これは聖女様。やわらぎの街へようこそ!」
おそらく、聖女の法衣を見て判断したのだろう。簡単に街に入れてくれた。
「ラクエルよ。随分目立ってないか? 視線を感じるんだが」
「そりゃそんな格好で街を歩いたら皆とりあえずは見ちゃうよね。ほらあの人なんか二度見してるよ?」
「宿を探し、服屋を探そう」
街の地図を頼りに宿につくと、一泊二日食事付きで金貨一枚と言われた。
全財産ではないか。これでは服を買う金がない。食い逃げを考えた方が良いな。
「目立った格好で逃げたらすぐに捕まると思うんだけど」
「とりあえず宿は一旦保留にして服を見に行こう。今は宿や食事よりも着替えることを優先したい」
「普通、衣食住の衣は優先度低いはずなんだけどね」
再び地図を頼りに服屋についた。
「私にあう服を買いたい。見せてくれぬか?」
店主(レベル56)に頼むと、色々見繕ってくれた。
「持ち金が全然足りない服ばかりではないか」
「勇者や聖女目線、ここは魔王城へ最後の街だから店売りの最強装備しか売ってないんだ」
「旅立ちの街からいきなり最後の街に来てしまったのか。普通の服は売っていないのかのう?」
「村娘の服でよろしいですか?」
「おお。そんなので良い。褒美として金貨一枚をやろう。釣りはいらぬぞ」
私は機嫌良く全財産である金貨一枚を渡すと、
「村娘の服、金貨一枚です」
「釣りがないではないか。まぁ着替えて良いか?」
「どうぞ。あちらです」
私は誰もいない部屋に入ると、
ようやく聖女生活も終わりじゃな。これさえ脱げれば、レベルも999に戻れるはずって、これ、どうやって脱ぐのじゃ?
『聖女の法衣は呪われているため、装備をはずすことはできません』
警告メッセージが伝えてきた。
聖女の法衣が呪われているじゃと!? 悪魔装備さえ呪われておらんというのに! さすがに設定おかしくないか?
『聖女の法衣は自動洗濯機能がついております。なお、柔軟剤つきです』
そんな機能つけるくらいなら呪いとけよ。
あきらめて店主の元に行き、
「村娘の服を売りたい」
カウンターに一度も着ていない新品の服を置くと、
「銅貨一枚で買い取りましょう」
「え? この場合返金じゃろ?」
「そんな消費者に優しい法律、この街にはありませんので」
「悪魔よりも悪魔じゃな」
こうして全財産が金貨一枚から銅貨一枚になったチセリ。泊まる宿も食事もない中、これからどうなるのか?
次回に続く。
私の手が震える。
手にはグラスに注がれた、どこかの山から採集した美味しい水。
通称、聖水。
飲んだら死ぬかも。
正直、聖女レミットに敗れた時よりもずっと怖い。
しかし、どこかのサイヤ人も死にかけたら強くなるという話を聞いたことがある。
私もこの水を飲んだことによりレベルが上がるはずだ。
それに、一度決めた覚悟だ。
私は目を閉じて一気に飲み干す。
そして安堵して一言つぶやいた。
「命あることに感謝を」
翌日、納得がいかないまま街を出発することになった。
「魔王は東の果てに住むと聞きます。十分お気をつけ下さい」
長老にそう言われて、少ない金貨を渡されたが、死を覚悟して聖水を飲んだのにレベルが上がらなかったのは納得がいかぬ。とリターンの皆無を気にしていた。
結局、少ない金貨が入った袋を握りしめ、長老と、彼らの熱狂的な視線から逃れるように東へ向かって歩き出すことになった。
ラクエルは歩きたくないという理由で杖の姿に戻り、私に背負われている。
途中にゴミ箱があったらぶん投げていきたい気分だ。
東か。とりあえず北か南に曲がろう。
寄り道してはいけないというルールはないし、そもそも私が魔王を倒す義理はない。
魔王に何かされたとかいうならまだしも、恨みなんかなければ、むしろ魔王目線、私のことを何もしてないのに殺しに来た人間と認識することだろう。
しばらく歩いていると、立て札があった。
北:聖女の里
東:魔王城
南:勇者協会本部
西:旅立ちの街
東に歩くしか選択肢がないように見えるのは私だけだろうか?
チセリは立て札を凝視し、絶望的な気分になった。
「ラクエルよ。お主はどう思う? 北は聖女の里。聖女としての振る舞いを四六時中求められる上に、憎たらしいレミットの残した聖なる教えを聞かされるに決まっておる。拷問じゃ」
背中の杖が、小さく揺れた。
「南は勇者協会本部。あそこにはLv.100を超えるような脳筋の人間どもがゴロゴロおるはずじゃ。もし私が元悪魔姫だとバレたら、Lv.80の長老に殺される前に、あやつらに晒し者にされて、レベル測定の実験体にされるかもしれん」
チセリは杖を掴む手に力を込めた。
「そして東は魔王城。Lv.17の私では、即死じゃ。だが、長老に命じられた通り東へ向かうフリをして、魔王城の近くで法衣を脱ぎ捨て、Lv.999の力を取り戻せるチャンスはある……」
「…...今ここで脱いだら?」
「下着でうろつきたくはない。私にそんな趣味はない。長老から資金はもらっておる。街につき、服を買うまでの我慢じゃ」
東に再び歩き出してしばらくして。
「ラクエルよ。街が見えたぞ。野宿は避けられそうじゃな」
街に着くなり、門番が二人立っていた。
レベル察知をすると、レベル31と45だった。
「これは聖女様。やわらぎの街へようこそ!」
おそらく、聖女の法衣を見て判断したのだろう。簡単に街に入れてくれた。
「ラクエルよ。随分目立ってないか? 視線を感じるんだが」
「そりゃそんな格好で街を歩いたら皆とりあえずは見ちゃうよね。ほらあの人なんか二度見してるよ?」
「宿を探し、服屋を探そう」
街の地図を頼りに宿につくと、一泊二日食事付きで金貨一枚と言われた。
全財産ではないか。これでは服を買う金がない。食い逃げを考えた方が良いな。
「目立った格好で逃げたらすぐに捕まると思うんだけど」
「とりあえず宿は一旦保留にして服を見に行こう。今は宿や食事よりも着替えることを優先したい」
「普通、衣食住の衣は優先度低いはずなんだけどね」
再び地図を頼りに服屋についた。
「私にあう服を買いたい。見せてくれぬか?」
店主(レベル56)に頼むと、色々見繕ってくれた。
「持ち金が全然足りない服ばかりではないか」
「勇者や聖女目線、ここは魔王城へ最後の街だから店売りの最強装備しか売ってないんだ」
「旅立ちの街からいきなり最後の街に来てしまったのか。普通の服は売っていないのかのう?」
「村娘の服でよろしいですか?」
「おお。そんなので良い。褒美として金貨一枚をやろう。釣りはいらぬぞ」
私は機嫌良く全財産である金貨一枚を渡すと、
「村娘の服、金貨一枚です」
「釣りがないではないか。まぁ着替えて良いか?」
「どうぞ。あちらです」
私は誰もいない部屋に入ると、
ようやく聖女生活も終わりじゃな。これさえ脱げれば、レベルも999に戻れるはずって、これ、どうやって脱ぐのじゃ?
『聖女の法衣は呪われているため、装備をはずすことはできません』
警告メッセージが伝えてきた。
聖女の法衣が呪われているじゃと!? 悪魔装備さえ呪われておらんというのに! さすがに設定おかしくないか?
『聖女の法衣は自動洗濯機能がついております。なお、柔軟剤つきです』
そんな機能つけるくらいなら呪いとけよ。
あきらめて店主の元に行き、
「村娘の服を売りたい」
カウンターに一度も着ていない新品の服を置くと、
「銅貨一枚で買い取りましょう」
「え? この場合返金じゃろ?」
「そんな消費者に優しい法律、この街にはありませんので」
「悪魔よりも悪魔じゃな」
こうして全財産が金貨一枚から銅貨一枚になったチセリ。泊まる宿も食事もない中、これからどうなるのか?
次回に続く。
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