11 / 54
姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、快適なスローライフを妄想する
しおりを挟む
リィナが天に召された翌日の朝、私は小鳥の囀りで目を覚ました。
まぁ死んでないんだけど。
太陽の光が程よく眩しく、窓を開けると気持ちのいいそよ風が私の赤い髪を靡かせた。
「よしっ、今日も頑張ろう!」
私は頬を軽く叩いたのであった。
「っていう展開を希望してるんだから、邪魔しないでほしいんだけど」
髪はボサボサ。明らかに寝ているところを叩き起こされましたっていう表情をしながら、リビングで水を飲んで文句を言う私。
「ですが姫様。緊急事態なのに、のんきに起きるまで待つことなど私には出来ません」
一歩も引いてくれないオカリナ。まだ夜明け前だというのに、パジャマ姿なのに巨大で物騒な鎌を背負っている。この子はいつ鎌を外しているのだろうか?
「だからって、扉を破壊して大声を上げられても困るのよね」
そう言って私は木っ端みじんにされた扉を見る。
修理するのにいくらするんだろう?
不安でしかない。
「ですが緊急事態です。仕方ないと割り切って下さい」
「で、その緊急事態って何? 家の外は静かなんだけど」
「恐ろしい夢を見ました。トイレに一人で行けませぬ。お付き合い下さい」
「私の部屋にくる途中にトイレあるじゃん! 一人で行けないどころか通り過ぎてる!」
「ハッ、よく考えたらそうでした!」
「ってか、ただ扉を壊しただけじゃない。私の部屋、外から丸見えじゃない?」
こいつは一体何をしてくれるんだ、と苛立ち始めた。
「姫様。若干ですが絶望の波動が身体からあふれ出してます」
「もう大声で叫びたいくらいよ」
「私は構いません。さぁ、波動を解放しましょう! そして憎たらしい聖女の結界を破壊し、魔族再興の次なる一歩に!」
「あのさぁ、この辺りはもう結界は破られてるの。ここで絶望の波動を解放しても、あんまり意味ないと思うよ?」
「そうですね。でもストレスを溜め込むと身体を壊します。とりあえず叫んでおきましょう」
叫べと言われると、したくなくなったので、
「まぁいいわ。今日はこのまま寝る。来客が来たらまず私を起こして」
「かしこまりました!」
敬礼をするオカリナ。忠誠心は認めるがリィナ並みにポンコツなのは残念なところである。
私は壊された扉の修繕費の心配をしながら再び眠りにつくことにした。
どれくらい寝たかはわからないが目を覚ますと、
「おはようございます。姫様」
「うおっ!」
べッドの横で半裸のアクアが片膝をついていたことに驚いた。
「よくお眠りになられておりましたので見守っておりました」
なんか、起こさなかったぞ。俺を褒めろといった顔をしているが、私から見たら変態による不法侵入者である。
褒めるわけがない。
「オカリナはどうしたのよ?」
「多分寝てるんじゃないですかね? 入り口を何度もノックしましたが誰も出て来ませんでしたので、万が一の敵襲がないよう、俺が家を守っておりました」
やってくれたことは褒めてあげたくなったが、服を着ていないから帳消しだ。
「てか、服はどうしたのよ?」
「清涼飲料水を試しに作っていたら爆発してしまい、服がずぶ濡れになり、今乾かしています」
「どうやったら清涼飲料水で爆発するのよ」
「甘さを求めて色々調合を試したのです。ですが姫様。こんなのが出来ました。是非試飲していただきたく思います」
上半身裸のマッチョが両手で透明のグラスに黒い液体が入った物を献上してきた。
怪しさ以外の何物でもない。
しかし、目を凝らすと、小さな粒が液体の中で泡立っているのが見える。
「これ、もしかして炭酸?」
気にはなるが、どうしても飲む気になれない。
リィナがいないのがこんなに辛いとは。
黒い炭酸水といえばコーラが頭に浮かんだのだが、おそらくコーラに似せた液体だろう。
「口にしなくても見ただけで鑑定できる人が欲しいわね」
待てよ?
「アクア。この黒い着色なしで、炭酸水は作れる?」
「その泡の水ならレシピは残しております。早速作って来ましょう」
アクアは出て行こうとすると、
「待って」
「はい。なんでしょう?」
「次から我が家に来る時は服を着てくることを義務化するわ」
「......心に留めておきます」
誰もいないリビングで、私は妄想を膨らませた。
もし炭酸水が完成したらビールが作れるかもしれない。その前にサワーが作れるなぁ。
仕事から帰っていっぱいひっかける。
あぁ、夢のようだ。
「おはようございます。姫様」
オカリナが起きてきた。
「おはよう。オカリナ。起きて早々悪いんだけど頼まれごとしてくれない?」
「ハッ! 姫様のご命令ならばなんなりとお申し付け下さい!」
「森にある果物取って来て欲しいの。果物ならなんでもいいわ。でも甘い物がいいわ」
「かしこまりました!」
「私はアクア待ちだからここにいるわ」
しばらく待つと、
「姫様お待たせしました」
タイミングよくアクアとオカリナが一緒に戻って来た。
アクアが大きな鍋をテーブルに置く。
見れば見るほど炭酸水に見えた。
「姫様。こんなのでよろしいですか?」
オカリナが置いた果物に、私は目を丸くした。
「なんで森にメロンがあるのよ。しかもなんか高級そうなんだけど」
「あちこちにありますよ?」
たまに私の常識が通じない異世界だがメロンにありつけるのはありがたかった。
「オカリナ。この二つを融合して」
「かしこまりました」
言われた通りオカリナは魔力を込めると、メロンが水に溶けていくように見えた。
「姫様。果汁百パーセントのメロンソーダが出来上がりました」
「果汁百パーセントのリンゴジュースなら聞いたことあるけど」
私はそう言いながらコップですくって一口飲んでみる。
「な、何これ。メロンを炭酸で丸ごと飲んでるみたいじゃない」
私が転生前に飲んできた市販品とは大違いだ。
これって最高級ホテルにも出せないくらいのジュースなんじゃない。
予想よりも遥か彼方斜め上な物を作ってしまったことに驚いたが肝心なことにも気づいた。
誰が買うの? こんな超高級メロンソーダ。
でも売れたら一年は遊んで暮らせる気がする。
私は快適なスローライフを妄想するが、
「うん。これはうまいな」
「なかなかですね」
気づいたらアクアとオカリナは私の思いを気にも留めず超高級メロンソーダを水のように飲んでいた。
「多分一年は遊んで暮らせるようなメロンソーダがぁ」
鍋の中はすっかり空になってしまっていたのであった。
まぁ死んでないんだけど。
太陽の光が程よく眩しく、窓を開けると気持ちのいいそよ風が私の赤い髪を靡かせた。
「よしっ、今日も頑張ろう!」
私は頬を軽く叩いたのであった。
「っていう展開を希望してるんだから、邪魔しないでほしいんだけど」
髪はボサボサ。明らかに寝ているところを叩き起こされましたっていう表情をしながら、リビングで水を飲んで文句を言う私。
「ですが姫様。緊急事態なのに、のんきに起きるまで待つことなど私には出来ません」
一歩も引いてくれないオカリナ。まだ夜明け前だというのに、パジャマ姿なのに巨大で物騒な鎌を背負っている。この子はいつ鎌を外しているのだろうか?
「だからって、扉を破壊して大声を上げられても困るのよね」
そう言って私は木っ端みじんにされた扉を見る。
修理するのにいくらするんだろう?
不安でしかない。
「ですが緊急事態です。仕方ないと割り切って下さい」
「で、その緊急事態って何? 家の外は静かなんだけど」
「恐ろしい夢を見ました。トイレに一人で行けませぬ。お付き合い下さい」
「私の部屋にくる途中にトイレあるじゃん! 一人で行けないどころか通り過ぎてる!」
「ハッ、よく考えたらそうでした!」
「ってか、ただ扉を壊しただけじゃない。私の部屋、外から丸見えじゃない?」
こいつは一体何をしてくれるんだ、と苛立ち始めた。
「姫様。若干ですが絶望の波動が身体からあふれ出してます」
「もう大声で叫びたいくらいよ」
「私は構いません。さぁ、波動を解放しましょう! そして憎たらしい聖女の結界を破壊し、魔族再興の次なる一歩に!」
「あのさぁ、この辺りはもう結界は破られてるの。ここで絶望の波動を解放しても、あんまり意味ないと思うよ?」
「そうですね。でもストレスを溜め込むと身体を壊します。とりあえず叫んでおきましょう」
叫べと言われると、したくなくなったので、
「まぁいいわ。今日はこのまま寝る。来客が来たらまず私を起こして」
「かしこまりました!」
敬礼をするオカリナ。忠誠心は認めるがリィナ並みにポンコツなのは残念なところである。
私は壊された扉の修繕費の心配をしながら再び眠りにつくことにした。
どれくらい寝たかはわからないが目を覚ますと、
「おはようございます。姫様」
「うおっ!」
べッドの横で半裸のアクアが片膝をついていたことに驚いた。
「よくお眠りになられておりましたので見守っておりました」
なんか、起こさなかったぞ。俺を褒めろといった顔をしているが、私から見たら変態による不法侵入者である。
褒めるわけがない。
「オカリナはどうしたのよ?」
「多分寝てるんじゃないですかね? 入り口を何度もノックしましたが誰も出て来ませんでしたので、万が一の敵襲がないよう、俺が家を守っておりました」
やってくれたことは褒めてあげたくなったが、服を着ていないから帳消しだ。
「てか、服はどうしたのよ?」
「清涼飲料水を試しに作っていたら爆発してしまい、服がずぶ濡れになり、今乾かしています」
「どうやったら清涼飲料水で爆発するのよ」
「甘さを求めて色々調合を試したのです。ですが姫様。こんなのが出来ました。是非試飲していただきたく思います」
上半身裸のマッチョが両手で透明のグラスに黒い液体が入った物を献上してきた。
怪しさ以外の何物でもない。
しかし、目を凝らすと、小さな粒が液体の中で泡立っているのが見える。
「これ、もしかして炭酸?」
気にはなるが、どうしても飲む気になれない。
リィナがいないのがこんなに辛いとは。
黒い炭酸水といえばコーラが頭に浮かんだのだが、おそらくコーラに似せた液体だろう。
「口にしなくても見ただけで鑑定できる人が欲しいわね」
待てよ?
「アクア。この黒い着色なしで、炭酸水は作れる?」
「その泡の水ならレシピは残しております。早速作って来ましょう」
アクアは出て行こうとすると、
「待って」
「はい。なんでしょう?」
「次から我が家に来る時は服を着てくることを義務化するわ」
「......心に留めておきます」
誰もいないリビングで、私は妄想を膨らませた。
もし炭酸水が完成したらビールが作れるかもしれない。その前にサワーが作れるなぁ。
仕事から帰っていっぱいひっかける。
あぁ、夢のようだ。
「おはようございます。姫様」
オカリナが起きてきた。
「おはよう。オカリナ。起きて早々悪いんだけど頼まれごとしてくれない?」
「ハッ! 姫様のご命令ならばなんなりとお申し付け下さい!」
「森にある果物取って来て欲しいの。果物ならなんでもいいわ。でも甘い物がいいわ」
「かしこまりました!」
「私はアクア待ちだからここにいるわ」
しばらく待つと、
「姫様お待たせしました」
タイミングよくアクアとオカリナが一緒に戻って来た。
アクアが大きな鍋をテーブルに置く。
見れば見るほど炭酸水に見えた。
「姫様。こんなのでよろしいですか?」
オカリナが置いた果物に、私は目を丸くした。
「なんで森にメロンがあるのよ。しかもなんか高級そうなんだけど」
「あちこちにありますよ?」
たまに私の常識が通じない異世界だがメロンにありつけるのはありがたかった。
「オカリナ。この二つを融合して」
「かしこまりました」
言われた通りオカリナは魔力を込めると、メロンが水に溶けていくように見えた。
「姫様。果汁百パーセントのメロンソーダが出来上がりました」
「果汁百パーセントのリンゴジュースなら聞いたことあるけど」
私はそう言いながらコップですくって一口飲んでみる。
「な、何これ。メロンを炭酸で丸ごと飲んでるみたいじゃない」
私が転生前に飲んできた市販品とは大違いだ。
これって最高級ホテルにも出せないくらいのジュースなんじゃない。
予想よりも遥か彼方斜め上な物を作ってしまったことに驚いたが肝心なことにも気づいた。
誰が買うの? こんな超高級メロンソーダ。
でも売れたら一年は遊んで暮らせる気がする。
私は快適なスローライフを妄想するが、
「うん。これはうまいな」
「なかなかですね」
気づいたらアクアとオカリナは私の思いを気にも留めず超高級メロンソーダを水のように飲んでいた。
「多分一年は遊んで暮らせるようなメロンソーダがぁ」
鍋の中はすっかり空になってしまっていたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる