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姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、プリンセス・サーバンツを開設する
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森の中央にある広場にて。私の横にはオカリナが立ち、前には学校の全校集会のように、元盗賊団、エルフ、数少ない魔物、魔族、チヒロが立っていた。総数で百名ほど。
「今日ここに私たちの村の設立を宣言するわ。今日からプリンセス・サーバンツとして住民登録して、仕事と報酬を得るといいわ。嫌な人は出て行ってもらってかまわないわ」
大きな歓声が上がるものの、去ろうとするものはいなかった。
予想通り、プリンセス・サーバンツ施設は多少混雑したものの、現在募集しているのは食料生産担当チヒロが管理する畑仕事。建築担当、元盗賊団の頭である名前は確かオカシラだったか。他に四天王アクアの水関連の仕事しかない。
チヒロや、オカシラ、アクアは私が決めた直轄のしもべ。ようするに大臣みたいな地位だ。
そんな時、
「なんか火の鳥がこっちに近づいてないか?」
誰かが空を指差して叫んだ。
「あれは炎の怪鳥。火の四天王フレアの得意スキルです」
アクアが冷静に説明する。
「しかし、フレアは自宅が火事になってから火を恐れるようになったはず。あの役立たず女神がトラウマを克服させたというのか?」
ありえないといった顔のオカリナだが、私は鳥をよく観察して言った。
「リィナもやる時はやるってことなんじゃない? でもあの鳥が口に咥えているの。間違いなくリィナよね?」
「はい。力尽きてグッタリしてますね。しかもこんがり焼けてます」
「てか、気になることがあるんだけど。正直リィナなんかどうでもよくなるくらい」
「はい。なんなりと」
「多分、鳥の背中に立って腕組みしてるのが四天王よね?」
「はい。間違いなくフレアです」
「全裸じゃね?」
「いえ。黒いビキニパンツを履いております」
「肌が黒いから全裸にしか見えないんだけど。アクアといい、四天王って全員こんなのしかいないわけ?」
「姫様。彼らからしたら正装がアレなんです」
そんな話をしていたら、炎の怪鳥が私たちの前に降り立った。思ったよりも熱くない。
「久しいな。大元帥にアクアよ」
渋い声で怪鳥から飛び降りた日焼けしすぎた男は頭を下げた。
「フレアよ。以前よりも力をつけたのではないか?」
「フッ、新たな主人に仕えた時のために日々技を磨いてきたからな」
そう言うと、彼は私の前に片膝をついた。
「これより火の四天王フレア。忠実なしもべとして働きたく思います!」
「え? あ、うん。よろしくね」
働く前に服を着てくれと言いたかったが、話がうまく行きすぎている気がして逆に不安になった。
「フレアよ。姫様は鳥が咥えている女神像が気になっているのだ」
オカリナはこんがり焼けたリィナを指さすと、
「あ、すまん。忘れていた」
フレアは指を鳴らすと炎の怪鳥が姿を消した。
「焼け死ぬかと思ったわ」
ポテッと落とされたリィナは、アクアに水で黒焦げを流してくれと頼んでいた。
「焼け死んでしまえばよかったのに残念だ。それにしてもフレアよ。噂では貴様、火を恐れるようになったと聞いたが?」
「あぁ。しかしこの女神の言葉に感動し、今一度立ち上がることにした」
「女神に?」
「あぁ。なんでもこの村は、アットホームな雰囲気で上司と部下の距離が近い。みんな家族同然で困ったらみんなで助け合うらしいじゃないか。素晴らしい!」
それを聞いて、ブラック企業の謳い文句を思い出した。
「俺は火を扱うことと、体力には自信がある。ぜひ一度、夢と理想を形にしてみたいものだ!」
なんだろう。このブラック企業の求人に騙された体育会系の人。
「早速で悪いんだけど、フレアには村の熱源関連の仕事をしてもらいたいんだよね。暖炉とかキッチンのガス火とか湯沸器とか作って欲しいの。人手足りなかったらプリンセス・サーバンツに依頼するから」
「かしこまった!」
こうして、我が家から工事が始まり、簡単にガスコンロが使え、暖炉が使え、お風呂が沸かせるようになった。
「この刻印が消えましたら再度魔力を吹き込みますので教えて下さい」
意気揚々と次の家に向かうフレアを見送って、リビングで優雅に茶を飲んでいるリィナに
「それにしても良く説得出来たわね。見直したわ」
素直に褒めた。
「妾は女神じゃ。いかなる困難も可能にするのじゃ」
「で、ブラック企業みたいな勧誘フレーズは抜きにしてどうやって説得したのよ」
「あの激流に流された後、領主のいる都市に落とされてな。とりあえず腹を満たそうと金のインゴットを片手に向かったのじゃが、食糧難らしく誰も売ってくれなかったのじゃ」
いかにも大変だったみたいな顔をし出す。
「仕方なくフレアがいそうなところに向かったら池があってな。魚がいたのじゃが、焼く手段がなくてどうしようか考えていたら、フレアがうらめしそうに見ていたのじゃ」
「基本的に初対面の人、みんな飢えてるよね」
「何でも火が怖いとかぬかしおるから、このまま飢え死にするのと、トラウマを乗り越えるかを選ぶが良いと説諭したら、奴は見事に魚に火をつけて妾はそれを食したのじゃ」
「いや、フレアも飢えてたんでしょ? 分けてあげなさいよ」
「魚を見つけたのは妾じゃ。ま、その後は池で妾が魚を釣って、奴が焼き魚にする生活をして心が通じ合い、お主のことを話したのじゃ」
「なんかリィナにしてはいい話じゃない」
「妾は神ぞ。もっと讃えるが良い」
胸を張るリィナ。
そんな時、フレアが戻って来た。
「そういえば女神よ。魚をぼったくり価格で領主に売り払って入手した魔力石はちゃんと姫様に渡したのか?」
「魔力石?」
「フレアよ。お主はお主の任務を全うするのじゃ」
「そうもいかん。あの魔力石は屋敷くらいなら簡単に買えるくらい価値があると女神自身が言っていたではないか。それを世話になっている姫様に献上すると」
私は笑顔で手のひらをリィナに見せると、
「妾は働かずとも食べていけると思ったのにのぅ」
と、泣きそうになりながら魔力石を私に握らせるのであった。
「今日ここに私たちの村の設立を宣言するわ。今日からプリンセス・サーバンツとして住民登録して、仕事と報酬を得るといいわ。嫌な人は出て行ってもらってかまわないわ」
大きな歓声が上がるものの、去ろうとするものはいなかった。
予想通り、プリンセス・サーバンツ施設は多少混雑したものの、現在募集しているのは食料生産担当チヒロが管理する畑仕事。建築担当、元盗賊団の頭である名前は確かオカシラだったか。他に四天王アクアの水関連の仕事しかない。
チヒロや、オカシラ、アクアは私が決めた直轄のしもべ。ようするに大臣みたいな地位だ。
そんな時、
「なんか火の鳥がこっちに近づいてないか?」
誰かが空を指差して叫んだ。
「あれは炎の怪鳥。火の四天王フレアの得意スキルです」
アクアが冷静に説明する。
「しかし、フレアは自宅が火事になってから火を恐れるようになったはず。あの役立たず女神がトラウマを克服させたというのか?」
ありえないといった顔のオカリナだが、私は鳥をよく観察して言った。
「リィナもやる時はやるってことなんじゃない? でもあの鳥が口に咥えているの。間違いなくリィナよね?」
「はい。力尽きてグッタリしてますね。しかもこんがり焼けてます」
「てか、気になることがあるんだけど。正直リィナなんかどうでもよくなるくらい」
「はい。なんなりと」
「多分、鳥の背中に立って腕組みしてるのが四天王よね?」
「はい。間違いなくフレアです」
「全裸じゃね?」
「いえ。黒いビキニパンツを履いております」
「肌が黒いから全裸にしか見えないんだけど。アクアといい、四天王って全員こんなのしかいないわけ?」
「姫様。彼らからしたら正装がアレなんです」
そんな話をしていたら、炎の怪鳥が私たちの前に降り立った。思ったよりも熱くない。
「久しいな。大元帥にアクアよ」
渋い声で怪鳥から飛び降りた日焼けしすぎた男は頭を下げた。
「フレアよ。以前よりも力をつけたのではないか?」
「フッ、新たな主人に仕えた時のために日々技を磨いてきたからな」
そう言うと、彼は私の前に片膝をついた。
「これより火の四天王フレア。忠実なしもべとして働きたく思います!」
「え? あ、うん。よろしくね」
働く前に服を着てくれと言いたかったが、話がうまく行きすぎている気がして逆に不安になった。
「フレアよ。姫様は鳥が咥えている女神像が気になっているのだ」
オカリナはこんがり焼けたリィナを指さすと、
「あ、すまん。忘れていた」
フレアは指を鳴らすと炎の怪鳥が姿を消した。
「焼け死ぬかと思ったわ」
ポテッと落とされたリィナは、アクアに水で黒焦げを流してくれと頼んでいた。
「焼け死んでしまえばよかったのに残念だ。それにしてもフレアよ。噂では貴様、火を恐れるようになったと聞いたが?」
「あぁ。しかしこの女神の言葉に感動し、今一度立ち上がることにした」
「女神に?」
「あぁ。なんでもこの村は、アットホームな雰囲気で上司と部下の距離が近い。みんな家族同然で困ったらみんなで助け合うらしいじゃないか。素晴らしい!」
それを聞いて、ブラック企業の謳い文句を思い出した。
「俺は火を扱うことと、体力には自信がある。ぜひ一度、夢と理想を形にしてみたいものだ!」
なんだろう。このブラック企業の求人に騙された体育会系の人。
「早速で悪いんだけど、フレアには村の熱源関連の仕事をしてもらいたいんだよね。暖炉とかキッチンのガス火とか湯沸器とか作って欲しいの。人手足りなかったらプリンセス・サーバンツに依頼するから」
「かしこまった!」
こうして、我が家から工事が始まり、簡単にガスコンロが使え、暖炉が使え、お風呂が沸かせるようになった。
「この刻印が消えましたら再度魔力を吹き込みますので教えて下さい」
意気揚々と次の家に向かうフレアを見送って、リビングで優雅に茶を飲んでいるリィナに
「それにしても良く説得出来たわね。見直したわ」
素直に褒めた。
「妾は女神じゃ。いかなる困難も可能にするのじゃ」
「で、ブラック企業みたいな勧誘フレーズは抜きにしてどうやって説得したのよ」
「あの激流に流された後、領主のいる都市に落とされてな。とりあえず腹を満たそうと金のインゴットを片手に向かったのじゃが、食糧難らしく誰も売ってくれなかったのじゃ」
いかにも大変だったみたいな顔をし出す。
「仕方なくフレアがいそうなところに向かったら池があってな。魚がいたのじゃが、焼く手段がなくてどうしようか考えていたら、フレアがうらめしそうに見ていたのじゃ」
「基本的に初対面の人、みんな飢えてるよね」
「何でも火が怖いとかぬかしおるから、このまま飢え死にするのと、トラウマを乗り越えるかを選ぶが良いと説諭したら、奴は見事に魚に火をつけて妾はそれを食したのじゃ」
「いや、フレアも飢えてたんでしょ? 分けてあげなさいよ」
「魚を見つけたのは妾じゃ。ま、その後は池で妾が魚を釣って、奴が焼き魚にする生活をして心が通じ合い、お主のことを話したのじゃ」
「なんかリィナにしてはいい話じゃない」
「妾は神ぞ。もっと讃えるが良い」
胸を張るリィナ。
そんな時、フレアが戻って来た。
「そういえば女神よ。魚をぼったくり価格で領主に売り払って入手した魔力石はちゃんと姫様に渡したのか?」
「魔力石?」
「フレアよ。お主はお主の任務を全うするのじゃ」
「そうもいかん。あの魔力石は屋敷くらいなら簡単に買えるくらい価値があると女神自身が言っていたではないか。それを世話になっている姫様に献上すると」
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