プリンセス・サーバンツ

みずほたる

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姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件

姫様、イチゴを最優先にする

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「この魔力石なんだけど、どんな使い道があるの?」

私はリィナから受け取った魔力石をいろんな角度から見て言う。

手のひらサイズで赤く輝く魔力石。

「基本は、杖にはめ込んで術者の魔力の底上げじゃな。その大きさなら二段階は上がりそうじゃな」

「へぇ。すごいアイテムじゃん。もらって良かったの?」

「元々は妾が釣った魚を売って手に入れたのじゃから、妾の物だと思うのじゃが」

「だったら何でフレアに私にあげるって言っちゃったのよ」

「見栄を張りたいと思ってしまったのじゃ」

「じゃあ仕方ないね」

「そこは、次から気をつけなさいよって言って妾にくれる流れじゃないのか。妾、神なのに悲しみ」

そんな会話をしていると、オカリナがリビングにやって来た。

「姫様。土の四天王サムスの居場所がわかりました。フレアがここに向かう途中、上空から見つけていたそうです」

「手がかりが全くなかったから、まさかフレアが偶然見つけてるなんてね。 これでチヒロの畑の広さ問題も解決するかもしれないわね。で、どこにいたの?」

「それが大変申し上げにくいのですが。というか、見てもらった方が早いです。ついて来て下さい」

私とリィナは家を出てオカリナについて行く。

森を進んでいくと、道端で全身ローブ姿の男がうつ伏せで倒れていた。

「姫様。あれが土の四天王サムスです」

「なんで倒れているのよ」

「毒キノコを食べたみたいです」

「それにしても彼は服を着ているのね。安心したわ」

「ローブの中は全裸ですよ」

「学校近くの公園に出てくる変なおじさんじゃない」

「とりあえず、タライで隠すよう言いつけておきます」

私とオカリナが話し合う後ろでリィナが、

「まず目を覚まさせるのが先のような気がするがのう」

と、呟くのだが、

「いや、全裸とわかってこっちから触りたくないでしょ。自然に目覚めるのを待った方が良さそうじゃない」

「目覚めるどころか死ぬ可能性の方が高い気もするが。まぁ土の四天王が毒キノコで死なれても魔族の威厳が廃りそうじゃがな」

リィナがオカリナをチラリと見ると、カチンときたのか、オカリナがおもっきり土の四天王サムスを蹴り飛ばした。

「はっ! オラとしたことが毒キノコを食べてしまったって、大元帥じゃねぇか? 何故こんなところに?」

我にかえるサムス。

「それはお互い様だ。貴様、四天王でありながら無様な醜態を晒して恥ずかしくないのか?」

「オラ、いつから四天王に? なった覚えないんだけども!」

「自覚すらしてなかったのか、この愚か者目 め!」

何となくわかって来た。彼だけが冒険者ギルドのお尋ね者でなかった理由が。

多分彼は超マイペースなのだ。だから彼は土いじりをやってればいいと思っていたのだ。

「ねぇ、あんたこの前、人間の女に畑を譲ったでしょ?」

私は質問をすると、彼はしばらく考えて

「そういえばそんなことあったな」

「村の食料源にしたくて、あなたの力で畑を拡大してほしいの」

「あれ、ただの畑だから別にオラがやる必要ないだよ?」

「だって、あの畑、念じた作物がとれるよ?」

「え? 何それ! すごいじゃん!」

「自覚してなかったんかい!」

私はつい大声でツッコミを入れると、オカリナが大鎌を手に取り、

「とりあえず、我々と運命を共にするか、ここで死ぬか。選ばせてやる」

と、脅すが、

「どちらも嫌だなぁ。オラは誰にも縛られずに生きていきたいだよ」

「貴様っ!」

おそらく、彼は彼のポリシーみたいのがあって、衣食住や権力などでは説得は無理だろう。

彼は土いじりだけをしていたいだけなのだ。

「オカリナよ。そなたは口下手じゃのう」

どうしたらいいか悩んでいたらリィナが口を開いた。

「サムスとやら。この村は食料を得るため開墾をしなくてはならぬ。じゃが、そのためにはそなたの協力が必要不可欠じゃ。どうか手伝ってはくれぬか?」

ぺこりと頭をさげると、

「口先だけのペテン師みたいなセリフだ」 

「ぐぬぬ。オカリナよ。その物騒な鎌を妾に貸すのじゃ」

「いや、奴の言ってることは的外れじゃない」

「お主、何故ここで手のひらくるっくるなのじゃ!」

「オラ、帰ってもいいべか?」

サムスが言い出したので、

「いいんじゃない?」

と、私は言った。

「姫様!?」

「強制労働は趣味じゃないし、畑は彼の言うとおり自分たちで耕していけばいいだけだし」

「よく考えたらそうですね」

「じゃあチヒロのとこに寄って事情を説明して、アレを開発するかぁ」

「前、話されていたビニールハウスというやつですか?」

「そそ。他にもフレアとアクアがいたら、水耕栽培や熱帯果物もできると思うし、可能性を広げないとね」

「さすが姫様です。では早速行きましょう」

私たちは説得を諦め、チヒロのところに向かうことにした。

小さかった畑が人手が急に増えたことにより、一気に開拓されていた。

チヒロにサムスを見つけたが説得に失敗したことを教えると少し残念そうにしていたが、気持ちをすぐに切り替えていた。

今後の畑の打ち合わせを終えたのち、私は土をつかんでみた。

「これに魔力石で念じたらゴーレムとか出来たりする?」

冗談で言うと、

「できぬわ。術者の魔力の底上げが主な用途じゃ。それに、動かぬ石と動く土は別物じゃろう。お主はすぐに面倒なことを考えるのう。 妾はさっさとビニールハウスとやらで、イチゴを食したいのじゃ」

私は肩をすくめた。

「まあ、そうよね。まずはイチゴね」

するとチヒロが魔力石を見て、

「なんか高そうな宝石ね」

「宝の持ち腐れよ。農具とか必要だったら、街に行って売って資金源にしてもいいよ」

私は魔力石を渡すと、

「街に行ったこともないのに売れって、この世界にもリサイクルショップってあるの?」

チヒロは文句を言うと、魔力石が割れた。

同時に新たに開墾された畑も含めて、大地が一瞬光った。

「な、何じゃ!?」

リィナが驚きの声を上げる。

しかし、一瞬光っただけで何が起きたのか、誰にもわからない。

「オラが説明するだ」

どこかに行ったと思ったサムスが土の中から現れた。怖い。

全身黒いローブで現れた。なお怖い。

しかし一番怖いのは、ローブの中が全裸ということだ。

「この辺りの畑は他の大地とは違う、生きた畑になってるだ。おそらく姉ちゃんの魔力が魔力石に乗っかったおかげだろうな」

「つまり、肥料とかいらないとか、そういうこと?」

私が尋ねると、サムスは興奮して土を掘り返した。

「いらないどころじゃねぇ! この土、熟成した堆肥と腐葉土の栄養を、自分で勝手に生み出し続けてるんだ! しかも、この土に生ゴミ混ぜれば、一日で完璧な完熟肥料に変換される!」

チヒロは割れた魔力石を見つめたまま、呆然としていた。

「嘘……肥料を自分で作る畑……? 割れちゃったけど、売る資金源どころじゃなく、畑そのものがチートになったってこと?」

「そうだ。この土は、世界最高の土だ! オラ、この土の進化を、オラの手で最後まで見届けたい! 姫様! オラを、この畑の土いじり係にしてくれ!」

サムスは目を輝かせ、全裸ローブのまま畑に跪いた。

オカリナは満面の笑みで大鎌を天に突き立てた。

「姫様! 四天王が自ら志願しました! これで食料問題は永久に解決です!」

私は深く溜息をつき、オカリナに教えるのだった。

「多分彼、今でも四天王って自覚がないと思うよ? っていうか、黒いローブって暑苦しくないのかな。脱いだら全裸だし」



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