プリンセス・サーバンツ

みずほたる

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姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件

姫様、鳩に襲われる勇者を助ける

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ヴィオラに急かされ、私たちは森の奥に向かって走った。

「ほら、あの鳩はやはり勇者や魔王と肩を並べるくらいの力の持ち主なんじゃ!」

興奮するリィナに対してオカリナが、

「そんな伝書鳩がいるか! 冒険者ギルド産の自称勇者に決まってる!」

「光の波動を感じます。確かに勇者固有のスキルです」

ヴィオラが叫ぶと、先が眩しくなっているのがわかる。絶望の波動とは正反対だ。

「この光の波動に飛び込んでも大丈夫?」

私はオカリナに聞くと、

「大丈夫ではありますが、嫌な気分にはなります」

「どれくらい?」

「明日早いから寝ないといけないのに、そういう時に限って寝付けないくらいです」

「例えが微妙すぎる!」

そんな時、木から垂れて来た蜘蛛を見つけてしまった。しかも至近距離。

「おおっ!」

びっくりして大声を出すのと同時に私の体内から絶望の波動が噴き出て、蜘蛛はどこかに飛んでいった。

「あっ、光の波動を打ち消したみたいです」

「さすが姫様。もはや自由自在に波動を繰り出せるとは!」

「びっくりしても波動って出るの?」

そんなやりとりをしていると、さらに奥から女性の悲鳴が聞こえた。

「女の人? 急ごう!」

走るペースを上げると、リィナがヒーヒー言いながらも、

「待て。あの鳩は危険じゃ。そなたらに残された女神の力を与えてやろう」

「貴様は残された女神の力とか言うが、いつ力尽きるんだ?」

「まぁ良いではないか。えいっ!」

「何も変わらないんだけど?」

「妾の加護を与えられた気分にはなったじゃろう?」

「気持ちの問題、今意味ある?」

さらに走ると、バスクの伝書鳩と対峙する少女がいた。

「なんか立派な剣ね。白く光ってるよ」

私の素朴な感想に対して全身を震わせているオカリナ。

「あの剣、聖剣ホーリーソードです。勇者しか装備できないと言われています」

「じゃあ、あの子が勇者なの?」

「正確に言うと勇者の末裔でしょう」

「なんでそんな立派な子がこんな森で鳩と戦っているのよ」

「とりあえず姫様。鳩を全力でサポートしましょう!」

「女の子じゃなくて?」

「勇者を助けてどうするんですか。今なら全部鳩のせいにできます!」 

「待てオカリナ。勇者を救ったら謝礼をたくさんもらえる線はないのか?」

「女神よ。貴様はどんだけ金に汚いのだ」

「妾は世界より今夜の飯の方が重要なのじゃ。ミナエはどう思う?」

「お金があるんだったら従者くらいつけてそうじゃない?」

「ならば鳩を助け、見ぐるみを剥がし取るのが一番じゃな」

「貴様は本当に女神か?」

女勇者は聖剣を振り回しはするが、素人の私から見ても扱えている様に見えない。何回か振っては息を切らしている。

「それにしてもただの伝書鳩がずいぶんと落ち着いてます。見て下さい。剣先に乗って欠伸してますよ? どんな鳩なんですか」

オカリナが不思議そうな顔をしていると、

「毎日、薬師であるバスクの調合した餌を食べてるからじゃない?」

「さすが姫様。それなら合点がいきます」

バスクは人の家の草を食べるヤバい奴だが腕は超一流。ここはリィナから話を聞いた時から大体予想がついていた。

気になるのは伝書鳩が何故リィナといい、この女勇者を狙ったのかだ。

「多分、森に生えている毒キノコを食べて錯乱してるからだと」

「あ、なるほどね」

「ということは、あの女勇者の次は妾たちか村の者が襲われるのではないかの?」

「じゃあ鳩応援してもダメじゃん! オカリナ!」

「ハッ!」

巨大な鎌を手に取り、猛スピードでオカリナが鳩の背後へと回り込む。

「渾身の一撃をくらうがいい!」

すると鳩は危険を察したのか、さらなるスピードで一目散に逃げ出した。

「攻撃する前に無駄口をたたくからじゃ。死亡フラグがたっている中途半端なボスと一緒じゃな」

「チッ、せっかく姫様に認められる機会チャンスだったのに。しかしあんな鳩ももはやどうでもいい。勇者こそ我が魔族の宿敵。積年の恨みを晴らす時が来た!」

オカリナが鎌を振り上げると、

「待てオカリナよ」

リィナが制して勇者に尋ねた。

「勇者の末裔とやら。何故ここにいるのじゃ? 聖女を守るためにそばから離れられないはずじゃが」

「勇者の末裔? なんのこと? 勝手に死んだことにされて、お詫びに転生させるからって要望を聞かれたから、みんなから注目されたい、不動のセンターでありたい、将来玉の輿に乗りたいって願ったらこの森に、この白く光る剣を持って立っていたのよ」

彼女の話を聞いて私は考える。

確かに勇者はみんな(特に魔族)から注目される。

勇者はパーティ内では不動のセンター。

魔王を倒したらどこかの王様になれるかも。

多分、この子は転生する際、アイドルを夢見ていたと思うが、勇者もあながち間違ってはいない気がする。

今確かなのは、この子は勇者なんだろうが自覚どころか、ここがどこかすらわかっていない転生初期段階ということだ。

うまく説得したらチヒロみたいに仲間になるんじゃないのか?

勇者が味方になったら敵という概念がなくなるのではないか?

そうしたら戦う相手もいなくなり、私は平和で静かなスローライフを満喫できる。

私は何故か天気が良い浜辺で椅子に寝ながらトロピカルジュースを飲んでいる姿を妄想する。

「その白く輝く剣こそ勇者にしか装備できないと言われる聖剣なのじゃ。お主の経緯はよくわからぬが聖剣を持つ以上、聖女を守らねばならぬ」

「むしろ私が守られたいんだけど」

「何を言っておる。情けないそなたの姿を見て聖剣が泣いておるぞ」

「いきなり知らない人を守れって言われたから泣いているのよ!」

「女神よ。話はそろそろいいか? 早くこいつを抹殺したいんだが?」

「待てオカリナよ。勇者が成長するまで温かい目で見守ろうではないか!」

「何故、宿敵が成長するのを見守らなければならんのだ!」

「世界を魔族から守るためじゃ。お主も魔族の大元帥を名乗るなら協力せい」

「できるわけないだろうが!」

「てか、女神とか魔族って何? ここどんな世界設定なの?」

勇者が聞くと、

「なら立ち話もなんじゃから、村で茶でも飲みながら説明してやろう」

「茶代は貴様が出せよ」

「立ち話もたまにはいいかもしれんな」

「この人、味方みたいだけど本当に女神なの?」
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