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姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、漆黒のドレスを纏う
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「姫様。宮殿の完成が遅れております。責任者を見せしめに処刑いたしましょう」
朝から鎌をリビング狭しとブンブン振り回すオカリナだが、
「宮殿が戦闘ゴーレムに変形するシステムだけが未完成らしいわよ」
「まったく。役に立ちませんね」
「とりあえず作らなくていいって言っといたから。明日にでも引っ越しできるわよ」
「えっ! 作らなくていいとは!」
「この村に住んでからもうすぐ一年になるけど、森を含めて暴れたのは伝書鳩一羽だけじゃない。戦闘ゴーレムに何をさせるつもりなのよ」
「伝書鳩対策です」
「費用対効果って言葉知ってる?」
そんな話をしていると、
「姫様。村の外にある街の商人がこちらに向かっております。いかがなされますか?」
村の警備員を兼ねるエルフが訪ねて来ると、オカリナが嬉しそうに、
「そんなもん捕らえて殺すに決まっているだろう。神聖な姫様の領地に足一歩踏み入れることは許さん」
「ほっといていいんじゃない?」
「姫様ぁ! 姫様は村の外からなんでも受け入れすぎです!」
「来るもの拒まず去るもの追わずって言葉知ってる? それにその商人って、会ったことのある人だと思うよ」
しばらくすると、その商人が家にやって来た。やはり最初食べるのに困っていた時に換金してくれた道具屋だか質屋の店長だった。
「まさか嬢ちゃんがここの姫様だったとは驚いたぜ」
「気づいたら村が巨大化しただけよ。で、どうしたの?」
「逃げて来たんです。領主から」
「どういうこと?」
店長の話では、善政を敷いていた領主が家宝とされた魔石を魚と交換したのだが、毒に当たって死んだらしい。
その後を継いだ子が領民から重税を敷き、ただでさえ食糧難の民は毎日飢えに苦しんでいるという。金に変えられるものは没収され、店長の店も潰されたとか。
これから妻や子を食べさせることに悩んでいた時、この村に行けば食べ物に困らないという噂を聞いたが、魔族が支配しているとも聞いた。
私やオカリナのことを思い出し、もしかしたら住まわせてくれるかもと思い頼って来た。
「まあ、住むのは構わないけど、働くなら商売したいんでしょ? でもここの村って店の利益は村のものよ。売値も買取価格も村のルールに従ってもらうわ」
「ってことは、村の直営店ってことだろ? 村が店を守ってくれるなら大歓迎だ。それに拒否権は俺にはねぇ」
「わかったわ。家族を連れて来てプリンセス・サーバンツ|に登録して」
「おお。ありがとう。ありがとう! 礼と言ってはなんだがこれを受け取ってくれ!」
「これは......」
私がこの世界に来た時、最初に来ていた服。
まるでどこかの魔術学院の制服か、はたまたファンタジーRPGの初期装備か。
深淵を映したようなロイヤルブルーのジャケットは、胸元で黒いコルセットが引き締め、純白のフリルブラウスの上に重ねられている。
首元には小さな黒い蝶ネクタイ。短く仕立てられたプリーツスカートからは、透けるような黒のストッキングに包まれた足が伸びている。
「結局、高値すぎて誰も買い取ってくれなかったんだ。持ってても没収されるだけだし、受け取ってくれ」
「わかったわ。私も受け取った代金を返金するわ」
半分泣きそうになりながら店長は家を出て行った。
彼を見届けてからオカリナが、
「姫様。真面目な話をしますが戦争になりそうな気がします」
「えっ、あんた冗談で見せしめとか抹殺とか言ってたの?」
「当然です」
「真顔で言うからわかんないのよ。次からわかるようにして」
「努力します」
「それはそうと、新たな領主が攻めてくるってこと? まぁ食べ物が尽きそうになったらそうなりそうね」
「はい。やはり宮殿を戦闘ゴーレムに変形できるよう手は打っておいた方が」
「いや、村がゴーレムに破壊されるわ。えーと、こちらの戦力は、オカリナ、四天王、エルフたちくらい?」
「あと、伝書鳩がおります」
「え? 味方なのあれ? まあ、戦力はなくてもいいんだけど」
「どういうことですか?」
「だって飢えた兵が襲ってくるんでしょ。どうにでもなるわ。それにしても兵站って大事ってゲームで見たことあるけど、本当にそうなのね」
私は立ち上がると窓の外を眺めたのち、
「オカリナ。ヨシオを呼んでちょうだい。この服を悪魔姫が着るドレスに仕立ててもらうわ」
「あのコスプレ服を作るのが得意で、ミシン台を踏んだら死んだとか言っていた人間ですか。大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。たぶん」
翌日、宮殿が完成し引っ越しをした。
基本的に私は玉座に座って会見をするのが仕事になるらしい。
「一定間隔で腰痛を回復させる座布団なんてよく思いつきましたわね」
クラリが座布団を持って来ては呆れていた。
「座りっぱなしって大変なのよ。それにこのボタンを押したら玉座の背がウネウネ動くように作ってもらったわ。まさにマッサージ機能付き玉座! これでリクライニングができたら最高なんだけどなぁ」
「ふんぞり返って会見する姫様がどこにいるんですか」
「まぁそうなんだけどさ」
私が答えた時、
「姫様。ドレスを用意致しました」
ヨシオが震える手で差し出したのは、かつての安っぽい既製品の面影を完全に払拭した、至高の一着だった。
悪魔姫の礼装:ロイヤルブルー・エクリプス
それは、深淵のような輝きを湛えるロイヤルブルーを基調とした、気高き統治者のためのドレス。
胸元には漆黒のレースとフリルが幾重にも重なり、首元に添えられた黒い蝶ネクタイが、かつての制服の面影をかすかに残しながらも、全体を理知的かつタイトに引き締めている。
特筆すべきは、肩から指先にかけてのラインだ。
繊細なシースルーのレース生地に切り替えられた袖からは、柔らかな肌が透けて見え、そこに浮き上がる高貴な装飾紋様が、見る者に抗いがたい威厳を感じさせる。
ウエストは、鈍い光を放つ黒いレザーベルトによって鋭く絞り込まれ、細密なゴールドのバックルが、その細さをより一層際立たせていた。
腰から広がる多重構造のプリーツスカートは、動くたびにアンティークゴールドの刺繍を施された裏地が覗き、重厚な宮殿の空気の中でも、消えることのない華やかさを主張している。
そして、その裾から伸びる脚を包むのは、レースがあしらわれた黒のガーターベルトとストッキング。絶対領域を守護するその装飾は、気高さの中に確かな官能を潜ませている。足元を固めるのは、武骨ながらも洗練された編み上げの黒いロングブーツだ。
それは単なる飾りではない。有事には自ら戦場を駆け、民を導く「悪魔姫」の行動力を象徴する、実戦的な美学が込められた正装であった。
「よくもまぁ一晩で仕立てたわね」
あまりの変わりっぷりに驚きを隠せなかったが、ヨシオは首を横に振り、
「それが、このドレスだけは勝手に出来たんです。まるで自分の意思を持ってるかのように変わりました。まさに神の礼服としか思えません」
「何をそんな大袈裟な......」
私はそう言って玉座に座ると、
「姫様。まさに古の悪魔姫にふさわしいお姿。このオカリナ。これからも忠義を尽くしたく存じます」
「まさに馬子に衣装ではあるが、美しいのう。さすが妾の一番弟子じゃ」
「いや、なった覚えはないし」
あまりにも褒められるとくすぐったい気持ちに駆られる。
すると、突然黒きドレスがこの大広間にいた者たちから黒い光を奪い取るように吸収する。
「な、なんじゃと! 誰もが持つ闇を奪おうとしておるのか!」
リィナが咄嗟に叫ぶが、私には聞こえない。
まるで別人格が私を奪い取るように頭が痛くなる。
が、
「やっと人生イージーモードになりそうだって言うのに邪魔しないでよ!」
意思を持ってそれをかき消すと、私に包まれていた闇も消えたように見えた。
「姫様。大丈夫......ですか?」
オカリナが恐る恐る近寄って来たので私は答えた。
「大丈夫じゃ。妾に問題はない」
何この口調。
朝から鎌をリビング狭しとブンブン振り回すオカリナだが、
「宮殿が戦闘ゴーレムに変形するシステムだけが未完成らしいわよ」
「まったく。役に立ちませんね」
「とりあえず作らなくていいって言っといたから。明日にでも引っ越しできるわよ」
「えっ! 作らなくていいとは!」
「この村に住んでからもうすぐ一年になるけど、森を含めて暴れたのは伝書鳩一羽だけじゃない。戦闘ゴーレムに何をさせるつもりなのよ」
「伝書鳩対策です」
「費用対効果って言葉知ってる?」
そんな話をしていると、
「姫様。村の外にある街の商人がこちらに向かっております。いかがなされますか?」
村の警備員を兼ねるエルフが訪ねて来ると、オカリナが嬉しそうに、
「そんなもん捕らえて殺すに決まっているだろう。神聖な姫様の領地に足一歩踏み入れることは許さん」
「ほっといていいんじゃない?」
「姫様ぁ! 姫様は村の外からなんでも受け入れすぎです!」
「来るもの拒まず去るもの追わずって言葉知ってる? それにその商人って、会ったことのある人だと思うよ」
しばらくすると、その商人が家にやって来た。やはり最初食べるのに困っていた時に換金してくれた道具屋だか質屋の店長だった。
「まさか嬢ちゃんがここの姫様だったとは驚いたぜ」
「気づいたら村が巨大化しただけよ。で、どうしたの?」
「逃げて来たんです。領主から」
「どういうこと?」
店長の話では、善政を敷いていた領主が家宝とされた魔石を魚と交換したのだが、毒に当たって死んだらしい。
その後を継いだ子が領民から重税を敷き、ただでさえ食糧難の民は毎日飢えに苦しんでいるという。金に変えられるものは没収され、店長の店も潰されたとか。
これから妻や子を食べさせることに悩んでいた時、この村に行けば食べ物に困らないという噂を聞いたが、魔族が支配しているとも聞いた。
私やオカリナのことを思い出し、もしかしたら住まわせてくれるかもと思い頼って来た。
「まあ、住むのは構わないけど、働くなら商売したいんでしょ? でもここの村って店の利益は村のものよ。売値も買取価格も村のルールに従ってもらうわ」
「ってことは、村の直営店ってことだろ? 村が店を守ってくれるなら大歓迎だ。それに拒否権は俺にはねぇ」
「わかったわ。家族を連れて来てプリンセス・サーバンツ|に登録して」
「おお。ありがとう。ありがとう! 礼と言ってはなんだがこれを受け取ってくれ!」
「これは......」
私がこの世界に来た時、最初に来ていた服。
まるでどこかの魔術学院の制服か、はたまたファンタジーRPGの初期装備か。
深淵を映したようなロイヤルブルーのジャケットは、胸元で黒いコルセットが引き締め、純白のフリルブラウスの上に重ねられている。
首元には小さな黒い蝶ネクタイ。短く仕立てられたプリーツスカートからは、透けるような黒のストッキングに包まれた足が伸びている。
「結局、高値すぎて誰も買い取ってくれなかったんだ。持ってても没収されるだけだし、受け取ってくれ」
「わかったわ。私も受け取った代金を返金するわ」
半分泣きそうになりながら店長は家を出て行った。
彼を見届けてからオカリナが、
「姫様。真面目な話をしますが戦争になりそうな気がします」
「えっ、あんた冗談で見せしめとか抹殺とか言ってたの?」
「当然です」
「真顔で言うからわかんないのよ。次からわかるようにして」
「努力します」
「それはそうと、新たな領主が攻めてくるってこと? まぁ食べ物が尽きそうになったらそうなりそうね」
「はい。やはり宮殿を戦闘ゴーレムに変形できるよう手は打っておいた方が」
「いや、村がゴーレムに破壊されるわ。えーと、こちらの戦力は、オカリナ、四天王、エルフたちくらい?」
「あと、伝書鳩がおります」
「え? 味方なのあれ? まあ、戦力はなくてもいいんだけど」
「どういうことですか?」
「だって飢えた兵が襲ってくるんでしょ。どうにでもなるわ。それにしても兵站って大事ってゲームで見たことあるけど、本当にそうなのね」
私は立ち上がると窓の外を眺めたのち、
「オカリナ。ヨシオを呼んでちょうだい。この服を悪魔姫が着るドレスに仕立ててもらうわ」
「あのコスプレ服を作るのが得意で、ミシン台を踏んだら死んだとか言っていた人間ですか。大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。たぶん」
翌日、宮殿が完成し引っ越しをした。
基本的に私は玉座に座って会見をするのが仕事になるらしい。
「一定間隔で腰痛を回復させる座布団なんてよく思いつきましたわね」
クラリが座布団を持って来ては呆れていた。
「座りっぱなしって大変なのよ。それにこのボタンを押したら玉座の背がウネウネ動くように作ってもらったわ。まさにマッサージ機能付き玉座! これでリクライニングができたら最高なんだけどなぁ」
「ふんぞり返って会見する姫様がどこにいるんですか」
「まぁそうなんだけどさ」
私が答えた時、
「姫様。ドレスを用意致しました」
ヨシオが震える手で差し出したのは、かつての安っぽい既製品の面影を完全に払拭した、至高の一着だった。
悪魔姫の礼装:ロイヤルブルー・エクリプス
それは、深淵のような輝きを湛えるロイヤルブルーを基調とした、気高き統治者のためのドレス。
胸元には漆黒のレースとフリルが幾重にも重なり、首元に添えられた黒い蝶ネクタイが、かつての制服の面影をかすかに残しながらも、全体を理知的かつタイトに引き締めている。
特筆すべきは、肩から指先にかけてのラインだ。
繊細なシースルーのレース生地に切り替えられた袖からは、柔らかな肌が透けて見え、そこに浮き上がる高貴な装飾紋様が、見る者に抗いがたい威厳を感じさせる。
ウエストは、鈍い光を放つ黒いレザーベルトによって鋭く絞り込まれ、細密なゴールドのバックルが、その細さをより一層際立たせていた。
腰から広がる多重構造のプリーツスカートは、動くたびにアンティークゴールドの刺繍を施された裏地が覗き、重厚な宮殿の空気の中でも、消えることのない華やかさを主張している。
そして、その裾から伸びる脚を包むのは、レースがあしらわれた黒のガーターベルトとストッキング。絶対領域を守護するその装飾は、気高さの中に確かな官能を潜ませている。足元を固めるのは、武骨ながらも洗練された編み上げの黒いロングブーツだ。
それは単なる飾りではない。有事には自ら戦場を駆け、民を導く「悪魔姫」の行動力を象徴する、実戦的な美学が込められた正装であった。
「よくもまぁ一晩で仕立てたわね」
あまりの変わりっぷりに驚きを隠せなかったが、ヨシオは首を横に振り、
「それが、このドレスだけは勝手に出来たんです。まるで自分の意思を持ってるかのように変わりました。まさに神の礼服としか思えません」
「何をそんな大袈裟な......」
私はそう言って玉座に座ると、
「姫様。まさに古の悪魔姫にふさわしいお姿。このオカリナ。これからも忠義を尽くしたく存じます」
「まさに馬子に衣装ではあるが、美しいのう。さすが妾の一番弟子じゃ」
「いや、なった覚えはないし」
あまりにも褒められるとくすぐったい気持ちに駆られる。
すると、突然黒きドレスがこの大広間にいた者たちから黒い光を奪い取るように吸収する。
「な、なんじゃと! 誰もが持つ闇を奪おうとしておるのか!」
リィナが咄嗟に叫ぶが、私には聞こえない。
まるで別人格が私を奪い取るように頭が痛くなる。
が、
「やっと人生イージーモードになりそうだって言うのに邪魔しないでよ!」
意思を持ってそれをかき消すと、私に包まれていた闇も消えたように見えた。
「姫様。大丈夫......ですか?」
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