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姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、金の亡者の治癒師と出会う
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勇者エリカが聖女の元へ旅立って一ヶ月が過ぎたころ、白衣を着た美少女が家にやってきた。
「治癒師クラリです。バスクの手紙を読んで参上しました。悪魔姫が何故民を救おうとしているか理解に苦しみますが、食べていくために仕方なく協力させていただきますわ」
なんかトゲのある言い方だが、巨大な男でなく少し安心した。
「プリンセス・サーバンツに登録したら、診療所の外科医師として働けるように手配しておくわ。給金はかなりいい方だと思うわ」
「わかりました。ところでどこに住めば?」
「希望があれば聞くわ。もちろんこの村に家賃という概念は存在するわ」
「うっ、家賃」
「医師だから一人暮らしでいい部屋に住めるとは思うけど、なんかある?」
「出来たらこの村一番の金持ちの方の隣に住みたいですわ。住めれば一人暮らしが出来れば、どんな家でも構いません」
「一応理由を聞いてもいい?」
「金持ちの屋敷の前に罠を仕掛け、怪我をさせ、高額の報酬で治したいからですわ」
「いや、この村、個別の報酬のやりとり禁止してるから」
「なんでですか!」
「個別の報酬を認めると、価格を釣り上げる人が出てきて経済が乱れるからよ。ちなみにどんな仕事も歩合制だからサボったら報酬出ないわよ?」
「そんなひどい。お金持ちになったらさっさと出ていくつもりだったのに!」
クラリは、今にも金貨を掴み取ろうとしていた形の手のまま、彫像のように固まった。
「結構そういう人いるんだけど、結局みんな戻ってくるのよね」
「魔族特有の魅了とか洗脳とかしてるからですよね?」
「いや、真面目に働けば水道、風呂、暖炉完備の家に住めて、食べ物に困らないかららしいよ?」
「全世界が食べ物に困ってるのに、なんでこの村だけ困ってないんですか?」
「食べ物に困らないためにみんな必死で働いているからに決まってるじゃない。人口も増える一方だから開拓するのも大変みたいよ?」
「なんで悪魔姫が世界のどこよりもまともな政治をしてるのかわかりません」
「私から見たら人の足元を見て治療報酬を釣り上げるあなたが神族だってことに疑問だわ」
私は言い切ると、玄関のドアが開くのがわかった。
「姫さんすまねぇな。その辺でクラリを許してやってくれ」
ユリエルとバスクが家に入ってきた。二人が来るとリビングが狭くなって困る。
「ユリエル様、バスク!」
少したじろぐクラリ。
「俺も来た当初は疑っていたが、この姫さんの言ってることは本当だ。働けば家賃を差し引いて正当なる賃金を支払ってくれる。労働者はその報酬で美味いもんを食ったり欲しいものを買ったりしている。もちろんその売り上げは全額村に納められる。全て村によって管理されているんだ。俺も長いこと神をやっているが見たことがないくらい生活が豊かだ。だから犯罪も少ない」
「犯罪が少ないっていうことは、起きることは起きているんですよね?」
「まぁ、言いにくいがほとんどが我らが慈愛の神リィナ様が起こしている」
「何故リィナ様が犯罪を?」
「つまみ食いをしたり、会計をちょろまかそうとしたりしてたな」
「本当に我らが神なのですか?」
「残念ながら。で、俺が熱弁を振るっている横で何を食っているんだ?」
「プリンというらしいです。うまいだよ」
「くっ、また新商品を。まさに悪魔の誘惑! この前クリームパンというものに心奪われた直後だというのに!」
「新商品は比較的値段が高いのが難点だ。姫様、安くならん?」
「まだ試験的だから大量生産してないのよ。人気があると分かったら大量生産に踏み切って安くなるわよ」
「この辺が姫様ずるいんだよな」
「商品開発をしてるのはマナミだし、値段設定をしているのはヴィオラよ。文句があるなら彼女らに言って」
チヒロは最初、先陣を切って畑を耕していたが、労働者の中にパテシエをしていたという転生者のマナミがいた。
なんでも生クリームを作って試食をしたら食あたりと勘違いされて天使に死亡扱いをされたとか。
相変わらずひどい死に方だが、今ではチヒロたちが育てた食糧を使用して商品開発をお願いしている。
一応、売られる前に私の元に試食品がくるわけだが半分の確率で「どうしてこうなる?」いうものが出てくるのが難点だ。
昨日なんて、一口目は美味しいのに二口目からめっちゃ飽きるオムライス改めオメライスは食べ切るのに悪戦苦闘した。飽きて捨てるほど村は豊かではない。
ちなみに自称美食家のリィナにも試食はさせているのだが、なんでも美味いとしか言わないから当てにはならない。
「バスク。魔族の村で開発された料理を食べて大丈夫なのですか?」
「食ってみるだか?」
クラリは疑いながらも一口食べると、
「なにこれ。食べたことのない味なんですけど! 美味しすぎじゃないですか?」
「だろ? 喫茶店で数量限定で売られてたんだ。この村で働いてたらこんな美味いもんが食える。それだけで素晴らしくないか?」
「あなた一応神族ですよね? 悪魔姫が支配する村で恥ずかしくないんですか?」
「誰が支配しようと関係ねぇ。ま、神族や魔族、人間や亜人種を受け入れている時点で、この村は今までの常識も覆してるんだ」
「仕方ありませんわね。しばらくこの村で働くことにしますわ。治療院の近くに住まわせてください」
「あ、それはプリンセス・サーバンツで話しといて。要望はある程度聞いてくれるから」
こうして、村に治癒師がやって来た。
しかしこの場にいた者は気づかなかった。というか忘れていた。
勇者エリカを襲った伝書鳩の存在を。
「治癒師クラリです。バスクの手紙を読んで参上しました。悪魔姫が何故民を救おうとしているか理解に苦しみますが、食べていくために仕方なく協力させていただきますわ」
なんかトゲのある言い方だが、巨大な男でなく少し安心した。
「プリンセス・サーバンツに登録したら、診療所の外科医師として働けるように手配しておくわ。給金はかなりいい方だと思うわ」
「わかりました。ところでどこに住めば?」
「希望があれば聞くわ。もちろんこの村に家賃という概念は存在するわ」
「うっ、家賃」
「医師だから一人暮らしでいい部屋に住めるとは思うけど、なんかある?」
「出来たらこの村一番の金持ちの方の隣に住みたいですわ。住めれば一人暮らしが出来れば、どんな家でも構いません」
「一応理由を聞いてもいい?」
「金持ちの屋敷の前に罠を仕掛け、怪我をさせ、高額の報酬で治したいからですわ」
「いや、この村、個別の報酬のやりとり禁止してるから」
「なんでですか!」
「個別の報酬を認めると、価格を釣り上げる人が出てきて経済が乱れるからよ。ちなみにどんな仕事も歩合制だからサボったら報酬出ないわよ?」
「そんなひどい。お金持ちになったらさっさと出ていくつもりだったのに!」
クラリは、今にも金貨を掴み取ろうとしていた形の手のまま、彫像のように固まった。
「結構そういう人いるんだけど、結局みんな戻ってくるのよね」
「魔族特有の魅了とか洗脳とかしてるからですよね?」
「いや、真面目に働けば水道、風呂、暖炉完備の家に住めて、食べ物に困らないかららしいよ?」
「全世界が食べ物に困ってるのに、なんでこの村だけ困ってないんですか?」
「食べ物に困らないためにみんな必死で働いているからに決まってるじゃない。人口も増える一方だから開拓するのも大変みたいよ?」
「なんで悪魔姫が世界のどこよりもまともな政治をしてるのかわかりません」
「私から見たら人の足元を見て治療報酬を釣り上げるあなたが神族だってことに疑問だわ」
私は言い切ると、玄関のドアが開くのがわかった。
「姫さんすまねぇな。その辺でクラリを許してやってくれ」
ユリエルとバスクが家に入ってきた。二人が来るとリビングが狭くなって困る。
「ユリエル様、バスク!」
少したじろぐクラリ。
「俺も来た当初は疑っていたが、この姫さんの言ってることは本当だ。働けば家賃を差し引いて正当なる賃金を支払ってくれる。労働者はその報酬で美味いもんを食ったり欲しいものを買ったりしている。もちろんその売り上げは全額村に納められる。全て村によって管理されているんだ。俺も長いこと神をやっているが見たことがないくらい生活が豊かだ。だから犯罪も少ない」
「犯罪が少ないっていうことは、起きることは起きているんですよね?」
「まぁ、言いにくいがほとんどが我らが慈愛の神リィナ様が起こしている」
「何故リィナ様が犯罪を?」
「つまみ食いをしたり、会計をちょろまかそうとしたりしてたな」
「本当に我らが神なのですか?」
「残念ながら。で、俺が熱弁を振るっている横で何を食っているんだ?」
「プリンというらしいです。うまいだよ」
「くっ、また新商品を。まさに悪魔の誘惑! この前クリームパンというものに心奪われた直後だというのに!」
「新商品は比較的値段が高いのが難点だ。姫様、安くならん?」
「まだ試験的だから大量生産してないのよ。人気があると分かったら大量生産に踏み切って安くなるわよ」
「この辺が姫様ずるいんだよな」
「商品開発をしてるのはマナミだし、値段設定をしているのはヴィオラよ。文句があるなら彼女らに言って」
チヒロは最初、先陣を切って畑を耕していたが、労働者の中にパテシエをしていたという転生者のマナミがいた。
なんでも生クリームを作って試食をしたら食あたりと勘違いされて天使に死亡扱いをされたとか。
相変わらずひどい死に方だが、今ではチヒロたちが育てた食糧を使用して商品開発をお願いしている。
一応、売られる前に私の元に試食品がくるわけだが半分の確率で「どうしてこうなる?」いうものが出てくるのが難点だ。
昨日なんて、一口目は美味しいのに二口目からめっちゃ飽きるオムライス改めオメライスは食べ切るのに悪戦苦闘した。飽きて捨てるほど村は豊かではない。
ちなみに自称美食家のリィナにも試食はさせているのだが、なんでも美味いとしか言わないから当てにはならない。
「バスク。魔族の村で開発された料理を食べて大丈夫なのですか?」
「食ってみるだか?」
クラリは疑いながらも一口食べると、
「なにこれ。食べたことのない味なんですけど! 美味しすぎじゃないですか?」
「だろ? 喫茶店で数量限定で売られてたんだ。この村で働いてたらこんな美味いもんが食える。それだけで素晴らしくないか?」
「あなた一応神族ですよね? 悪魔姫が支配する村で恥ずかしくないんですか?」
「誰が支配しようと関係ねぇ。ま、神族や魔族、人間や亜人種を受け入れている時点で、この村は今までの常識も覆してるんだ」
「仕方ありませんわね。しばらくこの村で働くことにしますわ。治療院の近くに住まわせてください」
「あ、それはプリンセス・サーバンツで話しといて。要望はある程度聞いてくれるから」
こうして、村に治癒師がやって来た。
しかしこの場にいた者は気づかなかった。というか忘れていた。
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