プリンセス・サーバンツ

みずほたる

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姫様、神々を従え世界を敵に回す

姫様、快適なスローライフは聖女の敵でした

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スターフィールド国。

世界の中央に位置し、かつては飢饉と腐敗政治によって滅びかけていた土地に、いつの間にか誕生していた新興国家である。

「姫様。世界地図を手に入れました。ご覧下さい」

玉座に座る私の前にテーブルが置かれ、地図が広げられる。

「今はまだ新興国家ですが、いずれ全てを支配すると考えると胸が高まりますな!」

鼻息荒く、妄想に耽っているゴスロリドレスを着た彼女の名はオカリナ・ベルゼ=シンフォニア。自称悪魔大元帥である。いや、討伐された魔王が過去に任命したんだっけか。

絶対の忠誠を誓ってくれるのはありがたいが、絶滅危惧種扱いをされている魔族による世界征服が夢なせいか、いつも暴走しているポンコツだ。

「世界征服っていうか、国多すぎない?」

今まで見てきた地図は森を含めた周辺のものしか書かれていなかったため、正直覚えきれない数の国名が書かれていて頭を悩ませた。

アンダンテ国をそのまま引き継ぎ、村に戻り、改めて統治を始めてからというもの、まず国の名前を決める話になり、ヴィオラとオカリナの終わらない論争に嫌気がさし、安直に星野美苗という本来の名字から、スターフィールド国という名前に決めて一件落着した。

もちろん私の案に二人は反論しなかったわけだが、その瞬間着ていたドレス礼装が白く染まった。

しかし、ある日ちょっとしたことでドレスが黒く染まった。

どうやら、私のストレスに左右してドレスが白くなったり黒くなったりするわけなのだが、黒くなった時、自分では気づかないが目も赤くなっているらしい。まさに古の悪魔姫デビルプリンセスそのものだ。

しかし私が一番厄介なのは、黒く染まった時、口調が自動変換されるということ。一人称も「私」だったのが「妾」とか、語尾が「~じゃ」とか、「~のう」とかいつの時代の人間よ!と言いたくなるが、どうしようもできない。

要するに国名を決めるまでストレスが溜まりっぱなしだということだ。

転生したらスローライフを願ったはずなのに、これでは真逆な生活を送っているわけだが、スローライフを送るために日々精進することを腹に決めた。

「はぁ。世の中は三国時代でしたってのを期待していたのに、これじゃあ戦国時代も裸足で逃げ出す戦国時代じゃない」

「しかし情勢は簡単です。このメロディ法国に憎たらしい聖女が祀られており、聖女を崇拝する国々、普通な国々、そして私たちの三者三様です」

「一応聞くけど、普通の国々っていくつあるのよ?」

「二つですね。なんかよくわからない神を崇拝しております」

「それじゃあ、聖女を崇拝してる国はいくつ?」

「百くらいですね。つまり周りには敵しかいないってことです」

「国立ち上げたスタートから四面楚歌じゃない」

「我々魔族ですから仕方ありません」

このヤバさに気づいていないのか、開き直っているオカリナにため息をつくと、

「そこまで悲観することはないかと。スターフィールド国には聖女様に加護を与えたリィナ様がおられます。他にユリエル様、エレナ様といった神たちも働き、住まわれております。まずは状況把握、様子見といった形を他国はとられるかと思います」

助言をしてきたエルフの少女。彼女の名はヴィオラ。スターフィールド国の首都、トランペット村の村長と相談役を兼ねてもらっている。

彼女を見て思ったことを聞いた。

「そういえば首都なのに村なのよね?」

「はい。国全体を領地としたため、ほとんどの方が地元に帰って汗水流して働いております。この村、今人口二百人くらいです」

「あとは?」

「人口千人くらいの街とかがほとんどですが、旧アンダンテの首都は湖での漁業も盛んになったことで十万人くらいいますよ? まさに大都市ですね」

「なんで首都が一番過疎っているのよ」

しかし、静かなスローライフを望んだのは私だし、考えようによっては、これはこれでアリな気もした。

全てが終わった時、この静かな森で自給自足をしながら暮らすのもいいかもしれない。

「で、姫様。これから他国に国家樹立宣言をしなければなりません。今のままだと魔族がアンダンテ国を乗っ取った悪として見られるだけですので、姫様の正当性を訴える必要がございます」

確かにそうだが、そんなことを今までしたことがない。

新築を建てたら近所に引っ越しそばを渡しに行くようなものでいいのだろうか?

「姫様。ご心配には至りません」

地図に手を当てて言い出す女性。名はナナミという。

「国境を接している住民には税金を減らしております。ですので何も起きなければ幸福度が高いです。魔族とはいえ姫様のことを敬っておりますゆえ、以前より生活が豊かになったという情報は嫌でも自然に流れることでしょう」

「ようするに魔族が以前より住民を豊かにしているから悪いようには映らないと?」

「はい。しかし問題がございます。というか大問題です」

ナナミは言っていいのかどうか微妙な顔をしたが、オカリナが

「かまわん。素直にはいたら楽になるぞ」

「なんで取り調べなのよ」

私はそう言って困った顔をした。

「幸福度が高すぎるんです。つい最近まで考えられなかった水洗トイレ、暖房器具、お風呂、上下水道などなど。姫様のアイディアで生まれた産物は常軌を逸脱しております。もはや姫様は崇拝レベルの方なんですよ」

「だって便利じゃん」

「私が言いたいことは、いずれ聖女を崇拝する人と姫様を崇拝する人のある意味宗教戦争に発展する可能性があるということです」

「素晴らしい! その戦争に勝利し、世界を姫様のものに致しましょう。その戦争の先陣には是非このオカリナに命じてください!」

「オカリナさん。簡単には言わないでください。宗教戦争は根深いんです。勝ったとしても各地でテロが発生して常に警戒レベルを引き上げて仕事どころじゃなくなりますよ」

「それは困る。昼寝すらできなくなるじゃない」

私は言うと、

「そうです。ですので早急に聖女本人と接触し、敵対意識はないことを世界にアピールすることが何よりも最優先すべきと進言いたします」

ナナミはキッパリ言うが、私は

「でも、聖女と接点なんかないしなあ。いきなりお茶しようと言っても拒否されそうじゃない?」

「女神リィナ様を仲介人とすれば会えるかと思います。聖女に加護を与えた本人ですから」

「なんかいきなりラスボスと会えって言われてるみたいだけど、それが最善の選択ならそうしようか。リィナは今どこにいるの?」

私はヴィオラに聞くと、

「河川敷でホームレスをしているはずですが」

これから先が不安でしかない私なのであった。
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