【淀屋橋心中】公儀御用瓦師・おとき事件帖  豪商 VS おとき VS 幕府隠密!三つ巴の闘いを制するのは誰?

海善紙葉

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27 おとき、しばし立ち止まる

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 分部宗一郎には会えないまま、は、近松門左衛門が西瓦屋町の寺島寮にやってくるのを待っていた。
 淀辰が言っていた妾のお駒という女の所在もわからずじまいだった。
 に行ってみようと思ったが、立ち入り禁止のお触れが出ていることは大志郎から聴いていた。では西海屋徳右衛門はどこにいるのだろう。住まいの場所をただしておかなかったことをは悔いていた。
 それに、墨屋の清兵衛という男は、自首したのか、していないのか……それすらには分からないのだ。

 それにしても。
 と、は首をかしげる。西海屋に対する不信の念がいまさらながら首をもたげてきていた。
 市中探索目附の分部宗一郎に口添えを頼む一方で、なぜだか西海屋はおのれを事件から遠ざけようとする意志もみてとれる。もとより、今ようやく気づいたことなのだったが、自分に近づいてきた接触の仕方も、どことなく不自然だった。
 さらに、お民の隣で横たわっていた男の死体のことが頭裡に蘇ってきた。一体、あの男は誰だったのか。大志郎さえ一顧だにしていないようであった。
 まして、心中として落着させるのなら、男の身元ぐらいは巷間に流布していてもいいはずなのに、寺島の職人に確認させても一向に浮かび上がってこなかったのだ。

 やはり。
 と、は、確信めいたものを感じた。何からなにまでおかしすぎた。ここはもう一度、原点に戻って、が淀辰と出会ってからのちのことが謎を解く鍵になりそうだとおもった。
 淀屋辰五郎との面談の約束は明日だ。
 そこですべてが明らかになるだろう。そう思うと勝手なもので、いまのいままで気鬱気味だったのに急に晴れやかな気分になってきた。
 すると、外に出たくなった。
 このまま戎橋まで近松に会いに行こうと着替えをすませたとき、ちょうど近松の使いがやってきて、
〈天神ノ森で待つ〉
とのことであった。
 喜々としては一人で外に出た。
 まだ、陽は落ちていない……。
 
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