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第十三章 奪 還
奪 還 (三)
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安祥の城は、すでに廃城になっていて、石垣をそのまま活かした木造の陣屋があった。広くはないが、緊急時の人馬の集合地にもなる。
この安祥の城もまた、わたしには縁の深い城である。
……といっても、わたしのご先祖さま、というべきだろうか。
松平氏が岡崎に本拠を移す前は、この安祥を居城にしていたらしい。初めて足を踏み入れたけれど、里の人々は、松平の姫がはるばるやってきたことを伝え聴き、強飯や山菜、魚煮などを平笊に盛って運んできてくれた。
この者たちの耳には、まだ〈岡崎異変〉の報せは届いていないのだろう。
岡崎は、もう目と鼻の先にある。
あるいはすでに〈岡崎異変〉のことを聴き及び、慰めにきてくれたのかもしれなかった。
意外な饗応に驚きつつも、再び現実の世界、母と兄に降りかかった災難を切り抜けなければならないという直面した緊急の問題と向き合わなければならなかった。
彦左がもたらした新たな報せでは、すでに、兄信康も母も、岡崎にはいないようであった。七月末には、兄は浜松へ召還された、ということであった。
そうして、つい二日前。
母は籠で浜松へと向かったそうである。この日は彦左の郎党が馬で岡崎を往復し、さらに先遣隊を浜松へ送るなど、翌朝の出立に備えた準備に慌しく、酉の刻まで人の出入りが激しかった。
「おいっ!こんなこころで、呑気に構えているときではないぞっ!」
突然響き渡った掠れを含んだ独特の声。
四方に響きわたるほどの鋭い語調。
まぎれもなく芦名兵太郎、いや、南光坊天海さまのものにちがいなかった。
唖然としてかれを見上げたまま、夢の続きなのかとぼかんとしていた。
声だけでなく、激しく肩を揺さぶられてわれに返った。、
「佐助は?弥右衛門は?優華様は?」
息を吸うのももどかしく一気に発すると、兵太郎のため息がはっきりと聴こえた。
「これ、一度に聴くでないわっ!佐助らは伊勢湾から大船でこちらへ向かっているはずだ!遠州舞阪の湊で落ち合う手筈になっておる……そんなことより、家康は、ついに信長の指示どおり岡崎三郎信康に切腹を命じたというぞ!なにも聴いていないのか!」
「せ、切腹!そ、そんな……」
彦左を呼ぶと、兵太郎の坊主頭と法衣姿に唖然となっていた。切腹のことを彦左に糺すと、
「馬鹿な!」
と、蒼ざめた顔になった。
兵太郎が彦左に声をかけた。
「おおっ彦左衛門よ!しばらく見ないうちに、よき面構えになったのぅ」
兵太郎は彦左から情況を再度聴いた上で、大声を張り上げた。
「こんなところで足を止めている場合ではないぞ!信康の母者も斬られようぞ!」
「いや築山殿は、浜松へ向かわれたばかりだ」
そう彦左が告げると、次の兵太郎の一言に、一同は凍りついた。
「…がおそらく、その途上で、斬ろうという腹だな」
「ば、馬鹿な!そんなことが……」
「この世に、たしかなことなどあろうはずもない。彦左衛門よ、おまえは徳川家中の動向を知っておろうが……」
兵太郎の叱声にびくっと体を震わせた彦左は、徳川家中は強い地揺れに襲われたように互いに相手を罵り、収拾がつかないありさまだということであった。
夫の切腹を止めさせるために徳姫が安土に向かったとか、酒井忠次さまが信長様の申し渡しをそのまま受けたのは、兄信康への私怨のためだといった噂が渦巻いているらしい。私怨とは、酒井忠次さまが見初めた女人が、徳姫の侍女であり、徳姫に願い出て貰い受けたけれど、あとでそのことを知った兄信康は、女人を道具のごときに扱うなかれ、と大勢の面前で忠次を罵った、ということである。
それもこれも事実かどうかはわからない。
けれど虚虚実実の駆け引きが内部で繰り広げられていることだけは確かなようだった。茶屋四郎次郎どのに告げたわたしの考えも、兵太郎と彦左に伝えた。
けれども、それを兵太郎は一蹴した。
「……どうやら時期を逸したようだな。たとえ家康と重臣どもが、こぞって信長の前で臣下の礼をとったとしても、いまとなっては、それほどの意味はあるまい。まして直臣なればなおさらのこと、信長の命には逆らえまい。それがものの道理というものだ……かりに徳川が一団となって信長と一戦交える覚悟があらば、話は別だが、どうやらいまの徳川家中は、てんでばらばらのようだから、一つにまとまることはあるまいよ」
では、どうすればいいのか。
……いくら考えてもいい方策は浮かばなかった。
それは彦左も兵太郎も同様であったらしく、腕を抱えたまま唸るしかなかったようだ。半刻のちに、茶屋四郎次郎どのの使者がやってきた。
兄信康は、早々に二股城へ移されたという。
しかも介錯人は、あろうことに服部半蔵さまであるらしい。
あの半蔵さまが、兄信康の介錯をする場面は、とうていわたしには浮かぶはずもなく、急にからだの奥底から熱いものがこみあげてきて、瞼にたまった。
気づくとわたしは泣いていた。
声は出ず、ただとめどなく涙が溢れて止まらなかった。
「解せぬ!」と、そのとき叫んだのは、彦左であった。
「どうしたというのだ?よき思案をおもいついたか!」
兵太郎が問うと、彦左は腕組を崩さずつぶやいた。
「……遠州二股城は、浜松とは数里しか離れていないずらよ。なぜ、わざわざ信康の若殿さんを、そんな近くに移されたのだろう……詮議が必要ならば、家康の殿さんがおいでの浜松城のほうがいいだにぃ」
涙をぬぐいながら、わたしも彦左のことばを反芻していた。そうなのだ、なにゆえ、わざわざ近くの城に移さねばならないというのだろう。
「おのが城で、おのが嫡男に、腹を切らせるにはしのびなかったのだろうよ」
そう兵太郎がつづけると、はたと彦左が首を傾げた。
「そうかなあ……あるいは、殿さんは、家来の誰かに、若殿さんのいのちを助けよ、という謎をかけているのでは……」
「謎をかけずとも、直接、密かに命じればいいだけではないか」
「それはそうだが……信長様の目もあることだろうし、なかなか直截にはいかんかったのではないか……こうなったら、われらが若殿さんを奪うしかない。亀さま、それがしは決めたぞ。いまから二股城に乗り込み、若殿さんを奪ってくるぞ!」
彦左が叫んだ。けれど兵太郎は動じない。
「逸り立つでない!そうせずにならぬときには、おれも手伝ってやろう!だが、あとで家康は、信長に対して、どんな申し開きをするのだ……そのこと、たったいま、おまえが申したことではないか!……余波はことのほか大きいと知るがいい」
ううんと唸って、彦左は咄嗟の思い付きを省みていたようだ。
けれども、すぐに顔色が戻った。
「いっそのこと、若殿さんが、死人になればいい……」
「死人に?三郎兄さまが?」
わたしがたずねると、彦左は兵太郎を指差して叫んだ。
「おんしを見たとき、幽霊かとおもうて、びっくりしたぞ。芦名兵太郎は大坂湊で死んだ、と聴いていたのに、こうして目の前にたたずんでいる……表向きは死人になっても、生きることはできるはずではないか!」
「なるほど、信康の身代わりを探し出し、切腹したことにすればいい、ということだな!となれば、背格好のよく似た屍体が要るな……」
すんなりと兵太郎が応じた。
意外な展開であった。兵太郎は、兄信康のからだの特徴を詳しくたずねてきた。それに応じながらも、現実にかなうものなのか信じられなかった。
「成るも成らぬも、やってみるしかあるまいよ。いまは、その手しか残っていないのだからな。彦左衛門!まずはおまえが二股まで案内せい」
「それがしは、亀さまとともに……」
「よっく聴くがいい、おれが二股城に赴いても、誰も相手にはするまい。大久保衆のおまえなら、若輩とは申せ、その面もその名も少しばかりは役に立つだろうよ。二股をめざしながら、屍体を探そうぞ。お亀!おまえは母者を捜してから二股の城をめざせ!」
兵太郎の行動はすばやかった。
大久保衆の半分と、こちらの兵を分けて慌しく馬に鞭を入れた。見送るまもなく、わたしたちは出立することにした。
彦左には、二股に着いたら、熊蔵を探し助力を請うべし、と伝えておいた。
なんと彦左は、今のいままで、熊蔵が兄の配下らしいとは露知らなかったようである。いつの間にか熊蔵の姿が消え失せたもので、もうとっくに死んでいるのだとおもっていたらしかった。
わたしたちも動きを速めた。
五郎兵衛に伝え、それぞれが馬に乗った。この城に置いていくつもりであった巣鴨がわたしに抱きつくように跳び乗ってきた。大和の山脈で鍛えたことがあるらしく、さすがに巣鴨の身のこなしは軽やかだったが、すこぶる緊張していたようだ。
そのとき、わたしはよほど怖い顔をしていたのかもしれない。
この安祥の城もまた、わたしには縁の深い城である。
……といっても、わたしのご先祖さま、というべきだろうか。
松平氏が岡崎に本拠を移す前は、この安祥を居城にしていたらしい。初めて足を踏み入れたけれど、里の人々は、松平の姫がはるばるやってきたことを伝え聴き、強飯や山菜、魚煮などを平笊に盛って運んできてくれた。
この者たちの耳には、まだ〈岡崎異変〉の報せは届いていないのだろう。
岡崎は、もう目と鼻の先にある。
あるいはすでに〈岡崎異変〉のことを聴き及び、慰めにきてくれたのかもしれなかった。
意外な饗応に驚きつつも、再び現実の世界、母と兄に降りかかった災難を切り抜けなければならないという直面した緊急の問題と向き合わなければならなかった。
彦左がもたらした新たな報せでは、すでに、兄信康も母も、岡崎にはいないようであった。七月末には、兄は浜松へ召還された、ということであった。
そうして、つい二日前。
母は籠で浜松へと向かったそうである。この日は彦左の郎党が馬で岡崎を往復し、さらに先遣隊を浜松へ送るなど、翌朝の出立に備えた準備に慌しく、酉の刻まで人の出入りが激しかった。
「おいっ!こんなこころで、呑気に構えているときではないぞっ!」
突然響き渡った掠れを含んだ独特の声。
四方に響きわたるほどの鋭い語調。
まぎれもなく芦名兵太郎、いや、南光坊天海さまのものにちがいなかった。
唖然としてかれを見上げたまま、夢の続きなのかとぼかんとしていた。
声だけでなく、激しく肩を揺さぶられてわれに返った。、
「佐助は?弥右衛門は?優華様は?」
息を吸うのももどかしく一気に発すると、兵太郎のため息がはっきりと聴こえた。
「これ、一度に聴くでないわっ!佐助らは伊勢湾から大船でこちらへ向かっているはずだ!遠州舞阪の湊で落ち合う手筈になっておる……そんなことより、家康は、ついに信長の指示どおり岡崎三郎信康に切腹を命じたというぞ!なにも聴いていないのか!」
「せ、切腹!そ、そんな……」
彦左を呼ぶと、兵太郎の坊主頭と法衣姿に唖然となっていた。切腹のことを彦左に糺すと、
「馬鹿な!」
と、蒼ざめた顔になった。
兵太郎が彦左に声をかけた。
「おおっ彦左衛門よ!しばらく見ないうちに、よき面構えになったのぅ」
兵太郎は彦左から情況を再度聴いた上で、大声を張り上げた。
「こんなところで足を止めている場合ではないぞ!信康の母者も斬られようぞ!」
「いや築山殿は、浜松へ向かわれたばかりだ」
そう彦左が告げると、次の兵太郎の一言に、一同は凍りついた。
「…がおそらく、その途上で、斬ろうという腹だな」
「ば、馬鹿な!そんなことが……」
「この世に、たしかなことなどあろうはずもない。彦左衛門よ、おまえは徳川家中の動向を知っておろうが……」
兵太郎の叱声にびくっと体を震わせた彦左は、徳川家中は強い地揺れに襲われたように互いに相手を罵り、収拾がつかないありさまだということであった。
夫の切腹を止めさせるために徳姫が安土に向かったとか、酒井忠次さまが信長様の申し渡しをそのまま受けたのは、兄信康への私怨のためだといった噂が渦巻いているらしい。私怨とは、酒井忠次さまが見初めた女人が、徳姫の侍女であり、徳姫に願い出て貰い受けたけれど、あとでそのことを知った兄信康は、女人を道具のごときに扱うなかれ、と大勢の面前で忠次を罵った、ということである。
それもこれも事実かどうかはわからない。
けれど虚虚実実の駆け引きが内部で繰り広げられていることだけは確かなようだった。茶屋四郎次郎どのに告げたわたしの考えも、兵太郎と彦左に伝えた。
けれども、それを兵太郎は一蹴した。
「……どうやら時期を逸したようだな。たとえ家康と重臣どもが、こぞって信長の前で臣下の礼をとったとしても、いまとなっては、それほどの意味はあるまい。まして直臣なればなおさらのこと、信長の命には逆らえまい。それがものの道理というものだ……かりに徳川が一団となって信長と一戦交える覚悟があらば、話は別だが、どうやらいまの徳川家中は、てんでばらばらのようだから、一つにまとまることはあるまいよ」
では、どうすればいいのか。
……いくら考えてもいい方策は浮かばなかった。
それは彦左も兵太郎も同様であったらしく、腕を抱えたまま唸るしかなかったようだ。半刻のちに、茶屋四郎次郎どのの使者がやってきた。
兄信康は、早々に二股城へ移されたという。
しかも介錯人は、あろうことに服部半蔵さまであるらしい。
あの半蔵さまが、兄信康の介錯をする場面は、とうていわたしには浮かぶはずもなく、急にからだの奥底から熱いものがこみあげてきて、瞼にたまった。
気づくとわたしは泣いていた。
声は出ず、ただとめどなく涙が溢れて止まらなかった。
「解せぬ!」と、そのとき叫んだのは、彦左であった。
「どうしたというのだ?よき思案をおもいついたか!」
兵太郎が問うと、彦左は腕組を崩さずつぶやいた。
「……遠州二股城は、浜松とは数里しか離れていないずらよ。なぜ、わざわざ信康の若殿さんを、そんな近くに移されたのだろう……詮議が必要ならば、家康の殿さんがおいでの浜松城のほうがいいだにぃ」
涙をぬぐいながら、わたしも彦左のことばを反芻していた。そうなのだ、なにゆえ、わざわざ近くの城に移さねばならないというのだろう。
「おのが城で、おのが嫡男に、腹を切らせるにはしのびなかったのだろうよ」
そう兵太郎がつづけると、はたと彦左が首を傾げた。
「そうかなあ……あるいは、殿さんは、家来の誰かに、若殿さんのいのちを助けよ、という謎をかけているのでは……」
「謎をかけずとも、直接、密かに命じればいいだけではないか」
「それはそうだが……信長様の目もあることだろうし、なかなか直截にはいかんかったのではないか……こうなったら、われらが若殿さんを奪うしかない。亀さま、それがしは決めたぞ。いまから二股城に乗り込み、若殿さんを奪ってくるぞ!」
彦左が叫んだ。けれど兵太郎は動じない。
「逸り立つでない!そうせずにならぬときには、おれも手伝ってやろう!だが、あとで家康は、信長に対して、どんな申し開きをするのだ……そのこと、たったいま、おまえが申したことではないか!……余波はことのほか大きいと知るがいい」
ううんと唸って、彦左は咄嗟の思い付きを省みていたようだ。
けれども、すぐに顔色が戻った。
「いっそのこと、若殿さんが、死人になればいい……」
「死人に?三郎兄さまが?」
わたしがたずねると、彦左は兵太郎を指差して叫んだ。
「おんしを見たとき、幽霊かとおもうて、びっくりしたぞ。芦名兵太郎は大坂湊で死んだ、と聴いていたのに、こうして目の前にたたずんでいる……表向きは死人になっても、生きることはできるはずではないか!」
「なるほど、信康の身代わりを探し出し、切腹したことにすればいい、ということだな!となれば、背格好のよく似た屍体が要るな……」
すんなりと兵太郎が応じた。
意外な展開であった。兵太郎は、兄信康のからだの特徴を詳しくたずねてきた。それに応じながらも、現実にかなうものなのか信じられなかった。
「成るも成らぬも、やってみるしかあるまいよ。いまは、その手しか残っていないのだからな。彦左衛門!まずはおまえが二股まで案内せい」
「それがしは、亀さまとともに……」
「よっく聴くがいい、おれが二股城に赴いても、誰も相手にはするまい。大久保衆のおまえなら、若輩とは申せ、その面もその名も少しばかりは役に立つだろうよ。二股をめざしながら、屍体を探そうぞ。お亀!おまえは母者を捜してから二股の城をめざせ!」
兵太郎の行動はすばやかった。
大久保衆の半分と、こちらの兵を分けて慌しく馬に鞭を入れた。見送るまもなく、わたしたちは出立することにした。
彦左には、二股に着いたら、熊蔵を探し助力を請うべし、と伝えておいた。
なんと彦左は、今のいままで、熊蔵が兄の配下らしいとは露知らなかったようである。いつの間にか熊蔵の姿が消え失せたもので、もうとっくに死んでいるのだとおもっていたらしかった。
わたしたちも動きを速めた。
五郎兵衛に伝え、それぞれが馬に乗った。この城に置いていくつもりであった巣鴨がわたしに抱きつくように跳び乗ってきた。大和の山脈で鍛えたことがあるらしく、さすがに巣鴨の身のこなしは軽やかだったが、すこぶる緊張していたようだ。
そのとき、わたしはよほど怖い顔をしていたのかもしれない。
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