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(39)課長捜索中
しおりを挟むドクドクと心臓が早鐘を打つ。
もしかしてこれは恋──?
(んなわけあるかっ!!)
「おいリア、吸いすぎだ。離れろって!」
俺は、俺の手首に吸い付いているチビリアにデコピンをお見舞した。
「ぐあっ! な、何をするのだ?! まだ途中だろうが!」
不意打ちをまともに食らって見事にのけぞったリアは、ムッとした顔で俺に抗議する。
「チビの大食らいめ。俺の身体が限界なんだよ!」
このまま放っておいたら、確実に前回の二の舞になる。
「ふん。図体だけデカいだけの軟弱者めが。仕方がない」
リアは口元を手の甲でふきふきとしながら、俺の手首から離れた。
手首は、吸われたところが赤くなっていて、いかにも虫刺されの跡だ。痛くも痒くもないけど。
「とりあえず、課長と合流するか。リア、課長の場所は?」
「……」
「え……リア? まさか……」
「……すまん。どうやら課長殿につけていた方の分体が力を使い果たしてしまったらしい。コンタクトが取れん」
「か、課長の血を吸えばいいんじゃないか?」
「わらわにも好みがあるのでな……あっちは分体といえど恐らく吸わぬだろうよ」
いやいや。苦々しげに呟いてるけど、好き嫌いしてる場合じゃないでしょ。
「ま、危険な感じはないから無事ではあるようだし。とにかく、合流にしろ脱出するにしろ、ここから動こうじゃないか! さぁ、行くぞ」
リアはしれっとした顔でそう言うと、俺の肩の上に座った。
「はいはい」
俺はリアに促されるまま、足を踏み出したのだった。
落ちてきたはずなのに、上を見上げても空はどこにも見えなかった。
道すがら聞いたリアの説明からすると、古代遺跡と呼ばれるものは、ダンジョンのようなものじゃないかと思う。
上部に空はなく、通路が空間を仕切っている。
考えうるのは、ここが俺たちがいた地上とは違う空間なのかもしれないということだ。異空間? 亜空間? とにかくそんな類のものだろう。
しめったような、かび臭いような臭いが鼻をつく。
そんな中、俺は恐る恐る歩みを進めていく。
そんな俺が、今、一番心配なことといえば──。
「お前みたいなモンスターとかは出ないのか?」
「わらわのような高尚な存在は、そんじょそこらにおるものではないからな」
「あ、いや……そうじゃなくて。聞き方が悪かったな。例えば遺跡の番人とか番犬をしてて、侵入者を排除するような奴はいないのかって話なんだけど」
「遺跡の番人……ふむ……まぁ、いないことはないが……まぁ、大丈夫じゃろ」
「えっ……いんのかよ?! じゃあ、もしそいつらと出くわしたら──……」
「ぎぃゃああああぁぁぁぁ──────っ!!!!」
暗闇に叫び声が響き渡った。
「……っ?!!!」
「こっちの方じゃ」
リアが指し示す方向へ向かう俺。
叫び声がするということは、人がいるってことだよな?
耳を塞ぎたくなる感じの叫び声が、断続的に通路の空間と俺の鼓膜を震わせている。
平静を装っているものの、実の所は心臓が口から飛び出るかと思った。
本当は行きたくないから、背中を冷や汗が流れてる。
でも、聞いちまった以上、行かないという選択肢はない。
「こっちか?」
近づいているはずなのに、段々と聞こえている耳障りな叫び声が細く小さくなってくる。
近づくにつれて、俺の心臓の音は大きくなっていく。
ぷぅん、と異臭が鼻をかすめた。
「な、なんだこれ────っ?!」
「ああ、もう遅かったようじゃな」
リアの指先の光がボワッと大きく広がって、周囲を一気に明るくする。
その明かりに照らし出されたのは、さっきまで地上で俺たちを取り囲んでいたと思われる騎士(兵士?)たちだった。
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