囚われた隊長と部下の執愛と復讐の物語

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監禁

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 すべての準備を終えたオレはベッドで眠る美麗な寝顔を眺めていた。
 白い両手を頭の上で縛り、簡単には逃げられないようにベッドに固定された体。

 この状況に、隊長は目が覚めたらどんな反応をするのか。驚くのか、怒るのか、戸惑うのか……なんにせよ、好意的な感情は向けられないだろう。

 そんなことを考えていると、長い睫毛がピクリと動いた。
 いきなり起き上がることもなく、体を倒したまま軽く頭を動かして視線を巡らせる。

 四方を白い壁に囲まれた部屋。広さは騎士の宿舎の部屋と同じほど。外の景色は見えず、天井近くにある横に細長い窓から空が見えるのみ。

「……ここは、どこだ?」

 両手を縛られた状況でも特に慌てた様子のない隊長。
 想像していたものとは違う反応に肩透かしを食らいながらもオレは説明をした。

「オレの個人的な隠れ家です。他に知る者はおりません」
「そうか。で、何をするつもりだ?」

 どこまでも淡々としている隊長にオレは少しだけ苛立ちと喜びを感じた。
 これから何をされるのか。勘が良い人なら……いや、勘が良くなくても、この状況だと想像はつくはずだ。
 それなのに、この美しい人はまったくオレを疑っていない。

「敵国にされようとしていたことですよ」

 ギシリとベッドを鳴らして近づけば、大きな目が丸くなり美しい顔が初めて崩れた。

「……本気か? ランツェ」

 花弁のように可憐な唇がオレの名を紡ぐ。
 それだけで、オレの心は震え、歓喜で全身が満たされた。
 翡翠の瞳が情欲に染まった漆黒の瞳を映す。ずっと、オレだけを見てほしかった。オレだけを、その瞳に映したかった。

「はい」

 満面の笑みを浮かべたオレは、逃げられないように小さな白い顎を掴んで顔を寄せた。

 視界を埋める美麗な顔。存在していることが奇跡のような容姿。
 滑らかな金髪が白いシーツに散らばり、甘い香りが誘うようにオレの鼻をくすぐる。

 そのまま匂いの元を確かめるように耳元へ顔を埋めると、白いうなじがピクッと動いた。

「くすぐったかったですか?」

 軽い口調で訊ねたが、返事はない。
 ゆっくりと顔をあげて緩めている襟元へ手を添える。

「まだ、何とかなると思ってます? 気づいたと思いますが、この部屋は強力は魔力封じがされていて、隊長でも魔法は使えませんから」
「……」

 隊長が無言のまま顔を背けようとしたが、オレは顎を掴んでいる手に力を入れて、それを許さなかった。
 それでも翡翠の瞳だけはオレから逃げるように視線を逸らす。

 その様子にオレは己の支配欲が満たされていくのを感じた。

 高潔で気高い隊長がオレの手の中にいる。そして、その身を自由にできる。

(心は手に入らなくとも……)

 オレは隊長に覆いかぶさると、かぶりつくように唇を塞いだ。

「……ん! クッ!」

 白い手が動き、ガチャガチャと頭上で鎖の擦れる音が響く。
 オレの体の下で両足がバタバタと暴れるが、これだけの体格差と筋力差があれば抑えることは容易い。

 ガリッ!

 鋭い痛みとともに血の味が広がる。

 オレはゆっくりと体を起こすと口の端から流れる血を親指の腹で拭った。

 視線を落とせば、白い頬を紅潮させて息を乱した隊長。その艶やかな様相にオレの下半身が刺激される。

 猛るオレとは反対に、何も言わず睨むように見上げる翡翠の瞳。

 この高潔な瞳が欲情に溺れ、乱れることはあるのか。

 想像しただけでゾクリの体の芯が痺れる。

(どうすれば、快楽に染めることができるのか……)

 熱くなったオレは素早く上着を脱ぎ捨て、白く穢れを知らない首元へ手を伸ばした。

「やめろ」

 聞いたことがない低い声に思わず手が止まる。

「いまなら引き返せる」

 少しだけ視線をあげれば、気高く輝く翡翠の瞳。
 だが、オレはその言葉に応えることなくフッと口角をあげた。

 大きな目に映るのは、欲情に溺れた男の顔。無造作に伸びた黒髪に、端正と言われる顔立ち。正直、女に困ったことはないし、わざわざ男を抱く趣味もなかった。

「おまえなら、相手も選び放題だろ」

 オレの思考を読み取ったように隊長が話す。

「だから、私など……」
「隊長だから、ですよ」

 誰かに執着したこともなかった。
 表面だけの付き合いで、一晩限りの関係。

 でも、それを変えたのは……

「隊長だけですよ。オレをこんな気持ちにさせるのは」

 白いシャツを掴み、力任せに引っ張る。

 プチプチとボタンがはじけ飛び、艶やかな白肌が露わになった。
 その肌触りを、感触を確かめるように、しっとりと撫でていく。

「……っ」

 何かを堪えるように口の端を噛み、金髪が揺れる。
 その姿に、オレは再び耳元へ顔を寄せた。

「声、我慢しなくていいですよ?」

 耳に触れるオレの唇から逃げるように美麗な顔が動く。
 だが、オレは逃がさないとばかりに追いかけて囁いた。

「知ってますよ? オレの声、好きでしょう?」

 その言葉に白い耳が真っ赤になる。

「もっと聞かせてあげますよ……シルト」

 舐めるように名前を囁けば、オレの下で白い体がピクリと震えた。



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