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後日談
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それから、数年後。
ラミアはクレイディに毎日、愛を囁かれ、絆されたことによって、潰れかけていた自尊心は回復を超えて、立派に育っていた。少年は美麗な青年になり、女装をすることもなくなった。
そこに、他の吸血鬼から一族の屋敷へ顔を出すように手紙が届く。ラミアが獣人と暮らしていることを知ったらしく、からかおうという魂胆らしい。
「仕方ない。行ってやるか」
こうして、ラミアは久しぶりに一族の屋敷に顔を出した。
「ひさしぶりだな」
「犬と暮らしているんだって?」
「獣と暮らすなんて、どこまで恥さらしなことをするのかしら」
蔑み混りに視線と言葉。
だが、他人の目をまったく気にしなくなったラミアは銀髪を手で払いながら、ふてぶてしく言った。
「別に、出来損ないの僕が何と暮らそうと関係ないでしょう? どれだけ暇なんです?」
最後の言葉に気分を害しながらも、集まった吸血鬼たちが鼻で笑う。
「自分で出来損ないと認めるなんて」
「少しは成長したじゃないか」
「犬と暮らして自覚しただけじゃないか?」
そう言って、最初はラミアをあざ笑っていた。だが、ラミアの隣に立つクレイディを見た瞬間、全員の罵りが止まる。
滑らかな青黒の髪に、涼やかな金の瞳。端正な顔立ちに、鍛えられた逞しい体。騎士として、いくつもの修羅場を潜り抜け、渋みと強さも漂う。
そんなクレイディを吸血鬼たちがだらしなく口を半開きにして、男も女も物欲しそうに眺める。美を尊び、美に誇りをかける吸血鬼にとってあるまじき、だらしない表情。
だが、それも仕方ないこと。
優秀であれば優秀であるほどクレイディの魅力に気づき、惹かれる。それは、吸血鬼の性と言っても違いない。
恨めしそうな視線を受けながらラミアがスルリと逞しい腕に絡みついた。
「僕の犬が、どうかしましたか?」
にやりと細くなる紫の瞳。
その表情と声に、我に返った吸血鬼たちが誤魔化すように咳払いをした。
「ま、まぁ、見た目はいいわね」
「そうね」
美しいモノを認めないことは、己の審美眼を偽ることになる。それは吸血鬼のプライドが許さない。
「どんなに見た目が良くても、所詮は犬だからな」
その言葉にラミアがフッと口角をあげた。
「その犬の姿こそ、心髄ですよ」
その言葉に、クレイディが黒狼へ姿を変える。
ふわりと軽やかに揺れる毛。上等な毛皮よりも滑らかなで、肌を包み込む。夜露の香りに包まれ、極上の空間へと誘う。
その太い首に腕をまわしてラミアが顔を埋めた。
「見た目だけに捕らわれている方々には、この手触りの良さは分からないでしょうね」
フフン、と自慢げに笑いながらモフモフを堪能する。
その様子に吸血鬼たちが奥歯を噛む。
「戯言だな」
「おや。触れるのが怖いんですか? それは失礼しました。まさか、怖くて触れないとは思わなかったので」
「何を!」
挑発と分かっていても、ここまで言われたら触れないわけにはいかない。
吸血鬼たちは興味なさそうに黒い毛へ手を伸ばし…………触れた瞬間、衝撃が走った。
「そんな」
「まさか……」
「これほど、とは……」
感嘆の声とともに価値観が一転する。
それから獣人を番に選ぶ吸血鬼たちが続発。そして、手触りの良さを競うようになったとか。
「ま、僕のクレイディが一番ですけどね」
そこには、当然のように愛を囁かれるラミアの姿があった。
ラミアはクレイディに毎日、愛を囁かれ、絆されたことによって、潰れかけていた自尊心は回復を超えて、立派に育っていた。少年は美麗な青年になり、女装をすることもなくなった。
そこに、他の吸血鬼から一族の屋敷へ顔を出すように手紙が届く。ラミアが獣人と暮らしていることを知ったらしく、からかおうという魂胆らしい。
「仕方ない。行ってやるか」
こうして、ラミアは久しぶりに一族の屋敷に顔を出した。
「ひさしぶりだな」
「犬と暮らしているんだって?」
「獣と暮らすなんて、どこまで恥さらしなことをするのかしら」
蔑み混りに視線と言葉。
だが、他人の目をまったく気にしなくなったラミアは銀髪を手で払いながら、ふてぶてしく言った。
「別に、出来損ないの僕が何と暮らそうと関係ないでしょう? どれだけ暇なんです?」
最後の言葉に気分を害しながらも、集まった吸血鬼たちが鼻で笑う。
「自分で出来損ないと認めるなんて」
「少しは成長したじゃないか」
「犬と暮らして自覚しただけじゃないか?」
そう言って、最初はラミアをあざ笑っていた。だが、ラミアの隣に立つクレイディを見た瞬間、全員の罵りが止まる。
滑らかな青黒の髪に、涼やかな金の瞳。端正な顔立ちに、鍛えられた逞しい体。騎士として、いくつもの修羅場を潜り抜け、渋みと強さも漂う。
そんなクレイディを吸血鬼たちがだらしなく口を半開きにして、男も女も物欲しそうに眺める。美を尊び、美に誇りをかける吸血鬼にとってあるまじき、だらしない表情。
だが、それも仕方ないこと。
優秀であれば優秀であるほどクレイディの魅力に気づき、惹かれる。それは、吸血鬼の性と言っても違いない。
恨めしそうな視線を受けながらラミアがスルリと逞しい腕に絡みついた。
「僕の犬が、どうかしましたか?」
にやりと細くなる紫の瞳。
その表情と声に、我に返った吸血鬼たちが誤魔化すように咳払いをした。
「ま、まぁ、見た目はいいわね」
「そうね」
美しいモノを認めないことは、己の審美眼を偽ることになる。それは吸血鬼のプライドが許さない。
「どんなに見た目が良くても、所詮は犬だからな」
その言葉にラミアがフッと口角をあげた。
「その犬の姿こそ、心髄ですよ」
その言葉に、クレイディが黒狼へ姿を変える。
ふわりと軽やかに揺れる毛。上等な毛皮よりも滑らかなで、肌を包み込む。夜露の香りに包まれ、極上の空間へと誘う。
その太い首に腕をまわしてラミアが顔を埋めた。
「見た目だけに捕らわれている方々には、この手触りの良さは分からないでしょうね」
フフン、と自慢げに笑いながらモフモフを堪能する。
その様子に吸血鬼たちが奥歯を噛む。
「戯言だな」
「おや。触れるのが怖いんですか? それは失礼しました。まさか、怖くて触れないとは思わなかったので」
「何を!」
挑発と分かっていても、ここまで言われたら触れないわけにはいかない。
吸血鬼たちは興味なさそうに黒い毛へ手を伸ばし…………触れた瞬間、衝撃が走った。
「そんな」
「まさか……」
「これほど、とは……」
感嘆の声とともに価値観が一転する。
それから獣人を番に選ぶ吸血鬼たちが続発。そして、手触りの良さを競うようになったとか。
「ま、僕のクレイディが一番ですけどね」
そこには、当然のように愛を囁かれるラミアの姿があった。
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