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イラールが軽く礼を言って私たちは長の家を離れた。
道を歩きながらイラールが人差し指で眼鏡を押し上げながら話す。
「さて、困ったことになりましたね。私たちは任務がありますので、この赤ん坊をこのまま連れて行くことはできませんので、この村の誰かに預け……」
「反対だ」
「ですよね」
はぁ、とイラールがため息を吐く。
こうして村の中の道を歩いているが、私たちを見る目……というか、私を見る目が微妙で。
珍獣扱いっぽい視線なのだが、どうも好意的ではない。怪訝なうえに、まるで腫れ物を見ているような目。しかも、ヒソヒソと小声で話し合う姿は嫌な感じしかしない。
(私だって、こんなところに預けられたくないわ)
マクティーラの腕の中でプイッと顔を背けるとイラールが呟いた。
「こういう閉鎖的な村では見慣れない者には排他的になりますからね。ただでさえ、宣託のせいでいろんな人が訪れて警戒心が増しているみたいですし」
その言葉に私は顔をあげた。
「ぷきゅ?」
(宣託?)
宣託とは神のお告げ、という意味の言葉だった気がする。
そこにマクティーラの大きな手が私の頭に触れた。
「他の者の手に渡る前に保護しなければな」
キリッとした表情に真剣な声でカッコいいんだけど、アザラシの頭を撫でながら言うセリフではないような気がする。
(というか、私も撫でたい! 私もアザラシを撫でて愛でたいのに! どうして、私自身がアザラシなのよぉぉぉ!)
バタバタを手を動かして自分の頭を撫でようとしているとイラールが呆れたように言った。
「たしかにその通りですが、赤ん坊を撫でながら言われても説得力がないですね」
「だから、ボクが運びますって」
ここぞとばかりに主張するフィアだがマクティーラが手放す様子はなく、藍色の瞳に鋭く睨まれて終わった。
このことにフィアが栗色の髪をかきかながら周囲に視線を巡らせる。
「けど、もう少し情報はないんですかね? せめて、どんな外見で、どの種族なのか、とか」
「外見なら知られているじゃないですか」
「白髪に水色の目ってだけでしょう? それなら、そこらへんの猫でも……」
と話していたところでフィアの言葉が止まる。
村から出たところで道の先で真っ白な猫が走ってきたのだ。
「え、マジ?」
唖然としていると、その猫を追いかけるように網や武器を持った複数の男たちが駆けてきた。
(な、なんなの!?)
驚く私の前で猫がポンッと少女の姿になり、エプロンタイプのスカートを翻して私たちへ手を伸ばす。
「助けて、騎士さまぁぁぁ!」
その言葉に私はキョロキョロと顔を動かした。
(えっ、騎士さま!? 騎士がいるの!?)
驚く私とは反対に、マクティーラの淡々とした声が落ちる。
「フィア、いけ」
「えー、ボクですか?」
不満気に言いながら栗色の髪が消える。
次に姿が見えた時は走る男たちの前だった。
「はーい、おとなしくしてくださいね」
軽い声とともにフィアが右手を掲げる。
『土の精霊よ。狼藉者を囲う堅牢な壁となり、封じよ』
ボコボコという音とともに男たちを囲うように土がせり上がった。
「なんだ!?」
「やめ、来るな!」
「うわっ!?」
そのまま土が覆いかぶさりドームが出来上がる。
わーわーと男たちの怒鳴り声がするから生きてはいるのだろう。
その前では少女が息を切らしながらドームを見つめている。
そこにイラールが声をかけた。
「お怪我はありませんか?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
そう言ってこちらを向いた顔は小さくて可愛らしかった。その上、肩の上で揺れる真っ白な髪に、満月のように大きな目は見事な水色。
(さっき話していた特徴と同じ……じゃあ、この人が探していた人?)
確認するようにマクティーラの顔を見ると無表情のまま。
一方で、イラールが穏やかな笑みを浮かべて話を続けた。
「失礼ですが、どうして男たちに追われていたのでしょう?」
「あの、その前に……失礼します」
そう言って少女が我慢できないとばかりに大きく頭を振る。
すると、真っ白だった髪から白い粉が落ちて淡い金色の髪が現れた。
「あー、すっきりしただ」
その変わりようにフィアが目を丸くして訊ねる。
「どういうこと!? 髪の色が変わった!?」
「畑に行こうとしたらさっきのヤツらが突然、私を掴まえて白い粉をかけてきたんだべ……じゃなくて、かけてきたんです。それで、すぐに逃げて……」
少女の言葉を引き継ぐようにイラールが話す。
「そこでたまたまいた私たちに助けを求めた、ということですね」
「はい! ありがとうございました、騎士さま!」
「当然のことをしたまでっす!」
礼を言われたフィアが恥ずかしさを誤魔化すように大きな声で応える。
そう言えば、よく見れば三人とも腰から剣をさげているし、服も漫画とかで読んだ騎士の服っぽい。
(……そういえば、私はいつ漫画を読んだんだろ? それに魔法とかファンタジーの世界って、なんだろう……言葉では知っているけど実感がないというか……)
どう表現したらいいのか分からず、もやもやと考えているとマクティーラが話を進めた。
「あいつらは賞金稼ぎだろう。出身地がここならば、あとは白髪と水色の目という条件さえ合えば売れると考えたか」
その考察にイラールが同意する。
「そうですね。薬品や魔法で髪や瞳の色を変えても、神殿で調べればすぐに分かることですが」
「そうだが、これ以上の混乱を防ぐためにも早急に見つけなければ」
騎士とか神殿とか大事な予感。でも、それだけの騒ぎになる人って……
私は首を傾げながら呟いた。
「きゅぅ?」
(何者なの?)
言葉は伝わっていないはずだが、マクティーラの大きな手が私の頭を撫でながら答える。
「冬の女神の愛おし子を」
聞きなれない言葉に私は首を傾げた。
(なんか、ますますファンタジーな世界になっちゃったっぽい?)
道を歩きながらイラールが人差し指で眼鏡を押し上げながら話す。
「さて、困ったことになりましたね。私たちは任務がありますので、この赤ん坊をこのまま連れて行くことはできませんので、この村の誰かに預け……」
「反対だ」
「ですよね」
はぁ、とイラールがため息を吐く。
こうして村の中の道を歩いているが、私たちを見る目……というか、私を見る目が微妙で。
珍獣扱いっぽい視線なのだが、どうも好意的ではない。怪訝なうえに、まるで腫れ物を見ているような目。しかも、ヒソヒソと小声で話し合う姿は嫌な感じしかしない。
(私だって、こんなところに預けられたくないわ)
マクティーラの腕の中でプイッと顔を背けるとイラールが呟いた。
「こういう閉鎖的な村では見慣れない者には排他的になりますからね。ただでさえ、宣託のせいでいろんな人が訪れて警戒心が増しているみたいですし」
その言葉に私は顔をあげた。
「ぷきゅ?」
(宣託?)
宣託とは神のお告げ、という意味の言葉だった気がする。
そこにマクティーラの大きな手が私の頭に触れた。
「他の者の手に渡る前に保護しなければな」
キリッとした表情に真剣な声でカッコいいんだけど、アザラシの頭を撫でながら言うセリフではないような気がする。
(というか、私も撫でたい! 私もアザラシを撫でて愛でたいのに! どうして、私自身がアザラシなのよぉぉぉ!)
バタバタを手を動かして自分の頭を撫でようとしているとイラールが呆れたように言った。
「たしかにその通りですが、赤ん坊を撫でながら言われても説得力がないですね」
「だから、ボクが運びますって」
ここぞとばかりに主張するフィアだがマクティーラが手放す様子はなく、藍色の瞳に鋭く睨まれて終わった。
このことにフィアが栗色の髪をかきかながら周囲に視線を巡らせる。
「けど、もう少し情報はないんですかね? せめて、どんな外見で、どの種族なのか、とか」
「外見なら知られているじゃないですか」
「白髪に水色の目ってだけでしょう? それなら、そこらへんの猫でも……」
と話していたところでフィアの言葉が止まる。
村から出たところで道の先で真っ白な猫が走ってきたのだ。
「え、マジ?」
唖然としていると、その猫を追いかけるように網や武器を持った複数の男たちが駆けてきた。
(な、なんなの!?)
驚く私の前で猫がポンッと少女の姿になり、エプロンタイプのスカートを翻して私たちへ手を伸ばす。
「助けて、騎士さまぁぁぁ!」
その言葉に私はキョロキョロと顔を動かした。
(えっ、騎士さま!? 騎士がいるの!?)
驚く私とは反対に、マクティーラの淡々とした声が落ちる。
「フィア、いけ」
「えー、ボクですか?」
不満気に言いながら栗色の髪が消える。
次に姿が見えた時は走る男たちの前だった。
「はーい、おとなしくしてくださいね」
軽い声とともにフィアが右手を掲げる。
『土の精霊よ。狼藉者を囲う堅牢な壁となり、封じよ』
ボコボコという音とともに男たちを囲うように土がせり上がった。
「なんだ!?」
「やめ、来るな!」
「うわっ!?」
そのまま土が覆いかぶさりドームが出来上がる。
わーわーと男たちの怒鳴り声がするから生きてはいるのだろう。
その前では少女が息を切らしながらドームを見つめている。
そこにイラールが声をかけた。
「お怪我はありませんか?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
そう言ってこちらを向いた顔は小さくて可愛らしかった。その上、肩の上で揺れる真っ白な髪に、満月のように大きな目は見事な水色。
(さっき話していた特徴と同じ……じゃあ、この人が探していた人?)
確認するようにマクティーラの顔を見ると無表情のまま。
一方で、イラールが穏やかな笑みを浮かべて話を続けた。
「失礼ですが、どうして男たちに追われていたのでしょう?」
「あの、その前に……失礼します」
そう言って少女が我慢できないとばかりに大きく頭を振る。
すると、真っ白だった髪から白い粉が落ちて淡い金色の髪が現れた。
「あー、すっきりしただ」
その変わりようにフィアが目を丸くして訊ねる。
「どういうこと!? 髪の色が変わった!?」
「畑に行こうとしたらさっきのヤツらが突然、私を掴まえて白い粉をかけてきたんだべ……じゃなくて、かけてきたんです。それで、すぐに逃げて……」
少女の言葉を引き継ぐようにイラールが話す。
「そこでたまたまいた私たちに助けを求めた、ということですね」
「はい! ありがとうございました、騎士さま!」
「当然のことをしたまでっす!」
礼を言われたフィアが恥ずかしさを誤魔化すように大きな声で応える。
そう言えば、よく見れば三人とも腰から剣をさげているし、服も漫画とかで読んだ騎士の服っぽい。
(……そういえば、私はいつ漫画を読んだんだろ? それに魔法とかファンタジーの世界って、なんだろう……言葉では知っているけど実感がないというか……)
どう表現したらいいのか分からず、もやもやと考えているとマクティーラが話を進めた。
「あいつらは賞金稼ぎだろう。出身地がここならば、あとは白髪と水色の目という条件さえ合えば売れると考えたか」
その考察にイラールが同意する。
「そうですね。薬品や魔法で髪や瞳の色を変えても、神殿で調べればすぐに分かることですが」
「そうだが、これ以上の混乱を防ぐためにも早急に見つけなければ」
騎士とか神殿とか大事な予感。でも、それだけの騒ぎになる人って……
私は首を傾げながら呟いた。
「きゅぅ?」
(何者なの?)
言葉は伝わっていないはずだが、マクティーラの大きな手が私の頭を撫でながら答える。
「冬の女神の愛おし子を」
聞きなれない言葉に私は首を傾げた。
(なんか、ますますファンタジーな世界になっちゃったっぽい?)
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