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少女を村の中まで送り届け、すぐに警備兵を手配するので、それまで村民は外に出ないようにイラールが長に指示した。
あと道の真ん中にできた土山に閉じ込めた賞金稼ぎの男たちは顔だけを出して放置。自力では脱出できないため、警備兵が回収に来るまでそのままだそうだ。
村から出て早足で歩きながらイラールが神妙な声で話した。
「とりあえず、あの村の周囲には防護魔法もかけましたのでしばらくは大丈夫でしょう。ただ厄介なのは、ここが国境に近いことですね。我が国の領土ですが、愛おし子を手に入れるために他国の者が密かに侵入している可能性もあります」
その言葉に私は上を見た。
逞しい両腕はかわらず私を優しく抱いており、服越しに厚い胸板を感じるほど。というか、徐々に密着度が増している気がする。
この状況に私は美丈夫に抱っこされている喜びより悔しさが勝っていた。
(私だってアザラシをギューってしたいのに! 羨ましいぃぃぃ! どうすれば、私を私が抱っこできるのぉぉぉ!?)
頭を抱えて苦悩する私の隣でフィアがマクティーラに問いかける。
「だから、マクティーラ様が来られたのでしょう? 戦闘になっても大丈夫なように」
「あぁ。早急に事態を収束させるために来たが、思ったより民に情報が伝わるのが早い。急がなければ」
平然とした表情のままギュッと私を抱きしめる。
(いや、だから、私がしたいのよ、それ! 抱きしめたいのにぃぃぃ! 立ち位置を代わってほしいぃぃぃ! どうやったら、代われるのぉぉぉお!?)
私の心の叫びに気づくはずもないイラールが淡々と解決策を話す。
「愛おし子が見つかり神殿で保護した、と情報を流せば、ここは以前と同じ長閑な村に戻るでしょうからね」
「問題はどこにいるのか、だ」
私の頭を撫でながらも、ピリッとした空気が漂う。
(だから、状況と仕草が合ってないのよ。アザラシを愛でながら言うセリフでも、そういう雰囲気でもないと思うのよ)
もちろん私の心の声は誰にも届かず。
村から離れ、閑散とした草原が続く道を早足で進みながらイラールが言った。
「北側は探しましたので、南へ行きましょう。あと、問題は……」
眼鏡の下にある黄色の瞳が私を見つめる。
「どこまで連れて行くつもりです?」
イラールの質問にマクティーラが当然とばかりに答える。
「安全なところまでだ」
「安全なところ……ですか。ですが、そこでその赤ん坊を預けることができますか?」
その内容に私も思わず顔をあげて確認する。
すると、藍色の瞳がジッと私を見つめていて。
「きゅう?」
(なにか?)
声とともに首を傾げる。
それだけで、マクティーラの端正な顔が苦悩に歪み、離したくないとばかりに私を抱いている腕に力が入った。
「……っ」
苦悶に満ちた呻き声にフィアが即座に反応する。
「マクティーラ様、今から離れることに慣れる練習をしましょう! ボクにその子を渡してください!」
名案とばかりに大きな目を輝かせて両手を差し出す。
一方のマクティーラは両手を藍色の瞳が睨みながらも、私を渡そうと手に力を入れるが……
「……」
動かない。
「ほら、さっさとフィアにその赤ん坊を渡してください!」
イラールに促されるがマクティーラの手は彫像になったように微動だにしない。
その様子にフィアが肩をすくめる。
「やっぱりマクティーラ様は可愛いものが好きなんですね」
「そうではな……」
言葉が不自然に切れる。
それと同時に三人が素早く地面を蹴った。
バンッ!
先程までいた場所に大きな穴があいている。
「きゅっ!?」
(なに!?)
明らかに自然にできたものではない。
むしろ、爆発したというか、攻撃されたというか……
初めて感じる恐怖に思わずマクティーラの腕を掴む。
それを感じ取ったのか安心させるような声が振ってきた。
「大丈夫だ、すぐに終わらせる」
その言葉と同時に私は空高く放り投げられた。
「きゅぁぁ!?」
(えぇぇぇ!?)
ポーンと弧を描いた先にイラールがいる。
「最初っからこうしていればいいんですよ」
軽く私をキャッチして左腕で抱える。
それは手慣れていて落ちる不安はないのだけど、まるで荷物のような扱い。そのことに不満が募る。
マクティーラは大事に抱えてくれていたから余計に。
「きゅぁきゅきゅきゅう!? ぷきゅあきゅあ!」
(このむちむちボディに傷がついたらどうするの!? もっと丁寧に扱いなさい!)
ペシペシと両手をばたつかせて抗議する。
でも、イラールの腕は意外としっかりしていて響いている様子もない。
「はい、はい。文句はあとで聞きますから。今は少しだけ静かにしていてください」
眼鏡の下にある黄色の瞳が鋭く睨む。
つられてその先に視線をむけると、そこには一人の男がいた。
ボサボサの赤髪に無精ひげを生やしているが顔立ちは整っており、ちょい悪オヤジという雰囲気。三十代半ばぐらいで、リュックを背負った旅人のような風貌。
背が高く、無駄な筋肉がないうえに、黄金のように輝く瞳が異様に鋭い。
「へぇ、騎士団長自らこんな辺境にお出ましとは。宣託はデマじゃなかったというわけか」
男の軽い口調に対して、マクティーラたちはピリッとした空気をまとった。
あと道の真ん中にできた土山に閉じ込めた賞金稼ぎの男たちは顔だけを出して放置。自力では脱出できないため、警備兵が回収に来るまでそのままだそうだ。
村から出て早足で歩きながらイラールが神妙な声で話した。
「とりあえず、あの村の周囲には防護魔法もかけましたのでしばらくは大丈夫でしょう。ただ厄介なのは、ここが国境に近いことですね。我が国の領土ですが、愛おし子を手に入れるために他国の者が密かに侵入している可能性もあります」
その言葉に私は上を見た。
逞しい両腕はかわらず私を優しく抱いており、服越しに厚い胸板を感じるほど。というか、徐々に密着度が増している気がする。
この状況に私は美丈夫に抱っこされている喜びより悔しさが勝っていた。
(私だってアザラシをギューってしたいのに! 羨ましいぃぃぃ! どうすれば、私を私が抱っこできるのぉぉぉ!?)
頭を抱えて苦悩する私の隣でフィアがマクティーラに問いかける。
「だから、マクティーラ様が来られたのでしょう? 戦闘になっても大丈夫なように」
「あぁ。早急に事態を収束させるために来たが、思ったより民に情報が伝わるのが早い。急がなければ」
平然とした表情のままギュッと私を抱きしめる。
(いや、だから、私がしたいのよ、それ! 抱きしめたいのにぃぃぃ! 立ち位置を代わってほしいぃぃぃ! どうやったら、代われるのぉぉぉお!?)
私の心の叫びに気づくはずもないイラールが淡々と解決策を話す。
「愛おし子が見つかり神殿で保護した、と情報を流せば、ここは以前と同じ長閑な村に戻るでしょうからね」
「問題はどこにいるのか、だ」
私の頭を撫でながらも、ピリッとした空気が漂う。
(だから、状況と仕草が合ってないのよ。アザラシを愛でながら言うセリフでも、そういう雰囲気でもないと思うのよ)
もちろん私の心の声は誰にも届かず。
村から離れ、閑散とした草原が続く道を早足で進みながらイラールが言った。
「北側は探しましたので、南へ行きましょう。あと、問題は……」
眼鏡の下にある黄色の瞳が私を見つめる。
「どこまで連れて行くつもりです?」
イラールの質問にマクティーラが当然とばかりに答える。
「安全なところまでだ」
「安全なところ……ですか。ですが、そこでその赤ん坊を預けることができますか?」
その内容に私も思わず顔をあげて確認する。
すると、藍色の瞳がジッと私を見つめていて。
「きゅう?」
(なにか?)
声とともに首を傾げる。
それだけで、マクティーラの端正な顔が苦悩に歪み、離したくないとばかりに私を抱いている腕に力が入った。
「……っ」
苦悶に満ちた呻き声にフィアが即座に反応する。
「マクティーラ様、今から離れることに慣れる練習をしましょう! ボクにその子を渡してください!」
名案とばかりに大きな目を輝かせて両手を差し出す。
一方のマクティーラは両手を藍色の瞳が睨みながらも、私を渡そうと手に力を入れるが……
「……」
動かない。
「ほら、さっさとフィアにその赤ん坊を渡してください!」
イラールに促されるがマクティーラの手は彫像になったように微動だにしない。
その様子にフィアが肩をすくめる。
「やっぱりマクティーラ様は可愛いものが好きなんですね」
「そうではな……」
言葉が不自然に切れる。
それと同時に三人が素早く地面を蹴った。
バンッ!
先程までいた場所に大きな穴があいている。
「きゅっ!?」
(なに!?)
明らかに自然にできたものではない。
むしろ、爆発したというか、攻撃されたというか……
初めて感じる恐怖に思わずマクティーラの腕を掴む。
それを感じ取ったのか安心させるような声が振ってきた。
「大丈夫だ、すぐに終わらせる」
その言葉と同時に私は空高く放り投げられた。
「きゅぁぁ!?」
(えぇぇぇ!?)
ポーンと弧を描いた先にイラールがいる。
「最初っからこうしていればいいんですよ」
軽く私をキャッチして左腕で抱える。
それは手慣れていて落ちる不安はないのだけど、まるで荷物のような扱い。そのことに不満が募る。
マクティーラは大事に抱えてくれていたから余計に。
「きゅぁきゅきゅきゅう!? ぷきゅあきゅあ!」
(このむちむちボディに傷がついたらどうするの!? もっと丁寧に扱いなさい!)
ペシペシと両手をばたつかせて抗議する。
でも、イラールの腕は意外としっかりしていて響いている様子もない。
「はい、はい。文句はあとで聞きますから。今は少しだけ静かにしていてください」
眼鏡の下にある黄色の瞳が鋭く睨む。
つられてその先に視線をむけると、そこには一人の男がいた。
ボサボサの赤髪に無精ひげを生やしているが顔立ちは整っており、ちょい悪オヤジという雰囲気。三十代半ばぐらいで、リュックを背負った旅人のような風貌。
背が高く、無駄な筋肉がないうえに、黄金のように輝く瞳が異様に鋭い。
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