完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜

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「これで終わりか? 冬の神殿の騎士団もたいしたことないな」

 白い煙に囲まれたまま、物音一つせず、何も見えない。
 まるで雲の中にいるかのような感じだけど、そんなメルヘンチックな状況じゃなくて。

(声を出して居場所を知らせた方がいい? でも、それでまたマクティーラが傷付いたら……)

 さっきの目の前で起きた衝撃に無意識に体が震える。

 訳の分からない状況だし怖いけど……それよりもこれ以上、傷ついてほしくない。

 ナハルニヴの小脇に抱えられたまま、どうすることもできずに俯く。そこに突如、足元の土が盛り上がった。

「きゅ!?」
(なに!?)

 蛇のような形になった土が私を呑み込むように口をあけて襲い掛かる。
 突然のことに体をこわばらせていると、ナハルニヴがフッと笑った。

「そうきたか」

 ガシッと私の体を掴んでそのまま真上に勢いよく放り投げる。

「きゅぁぁぁ!?」
(きゃぁぁぁ!?)

 みるみる上昇していく体。いくら子どものアザラシとはいえ、人の力ではここまで高くは投げられない。

 ついにはズボッと白い煙を抜け、私の目の前に青空が広がった。私が泳いでいた湖やさっきまでいた村まで見える高さ。

「ぷぃ、きゅぁあぁ……っぷきゅ!」
(ふわ、いい眺め……ってそうじゃなくて!)

 上昇が終わり、私の叫び声とともに一気に下降していく。

「きゅぅぅぅう!!!!!」
(きゃぁぁぁあ!!!!!)

 このままだと地面に落ちてペチャンコ……って、それだけは勘弁してほしい!

「きゅぁぁぁぁあ!!!!!」
(いやぁぁぁぁあ!!!!!)

 ガシッ!

 何かに掴まれた感覚。
 恐る恐る目を開けると悠然と空を飛んでいた。

「おとなしくしていてくださいよ」

 聞き覚えのある声に顔をあげると、イラールがしっかりと私を抱えていた。しかも、その背中には大きな翼。

「きゅ!? きゅう!?」
(えっ!? えぇ!?)

 驚いていると下から竜巻のような風が吹きあがり、白い煙を吹き飛ばした。
 そのことに黄色の瞳が鋭くなる。

「おりますよ」

 イラールが翼を消して地面に降り立つ。

「きゅきゅあ!? ぷきゅ!?」
(マクティーラ!? フィア!?)

 少し離れたところに肩で息をするマクティーラとフィアの姿があった。二人とも土と血で汚れ、満身創痍という状態。
 それに対してナハルニヴは余裕そうで、マクティーラの剣を持ったまま残念そうに周りを見た。

「あの煙幕を吹き飛ばすとはな。ま、今日はこれぐらいでいいか」

 そう呟いた黄金の瞳が私を見てニヤリと笑う。

「またな、嬢ちゃん」

 その言葉にフィアが地面を蹴った。

「逃がすか!」
「追うな!」

 マクティーラの声を振り切ってフィアが突進する。

「若者は元気だねぇ。だが、無鉄砲はよくないぞ」

 そう言いながらナハルニヴが手首を返して持っていた剣を投げた。

「しまった!?」

 フィアが慌てて足を止めるが剣は直前まで迫っている。このままだと避ける間もなく顔面を貫く。

 そう思った瞬間……

 グサッ!

 鈍い音とともに剣から赤い血が流れ落ちる。

「だから追うなと言っただろ」

 フィアより一歩先に出たマクティーラが剣の刃を左手で掴んで止めている。

「だん、ちょう……」

 大きな目を丸くしたフィアが唖然と呟く。
 そこに拍手の音が響いた。

「さすが、部下思いの団長様だ。じゃあ、また会おう。生きていたら・・・・・・、な」

 最後に意味深な言葉を残してナハルニヴが蜃気楼のように消える。

 視線を鋭くしていたイラールがふぅと息を吐くと、私を抱いたままマクティーラとフィアのところへ移動した。

「気配は完全に消えました。本当に撤退したようです」

 その言葉にフィアがマクティーラに駆け寄った。

「すみません、団長! 手は大丈夫ですか!?」
「これぐらいならすぐに治る。それより外では名で呼べ」

 剣を右手に持ち直すマクティーラにフィアが頭をさげる。

「すみません!」
「それだけ元気なら、おまえは大丈夫そうだな」
「いえ、もう限界です」

 そう言うとフィアがドサッと崩れるように地面に座り込んだ。

「あー、もう疲れた。何なんですか、あいつ!? こっちは煙幕で何も見えないのに、あいつはボクたちが見えているようでしたし、動きも半端ないし」

 愚痴るような言葉にイラールが人差し指で眼鏡を押し上げながら考察する。

「ナハルニヴは団長レベルの力を持つのに仲間と動くことが苦手と言って単独行動をしている遊撃騎士ですからね。フィアはそれぐらいで済んで良かったぐらいですよ。あとは、視覚に頼らなくても相手の位置を知ることができる種族なのでしょう。厄介ですが……って、マクティーラ、どうかしました?」
「……失敗した」
「え?」

 私たちの前で黒い髪が力なく揺れる。その顔は青白く、微かに手足が震えていて……

「きゅう!?」
(痙攣!?)

 ガシャン!

 マクティーラが剣を落として倒れた。

「どうしたんですか!?」

 フィアがマクティーラの体を揺さぶるが返ってくるのは呻き声のみ。
 全身が脱力していて呼吸が浅い。

(どういうこと!?)

 私は素早くマクティーラの全身を視た。
 唇が青く、明らかに貧血か血流が低下している。
 剣を握った手から出血はしているけど、意識を失うほどではない。ただし、蹴られた時に内臓を損傷して内部で出血しているのなら話は別。

「きゅうぅぅ、きゅぁ……」
(とにかく検査と治療をしないといけないけど、ここだと……)

 病院どころか民家もない草原。

 そこにイラールが私を抱いたまま落ちていた剣に近づいた。

「まさか、あいつ剣に毒を塗って!?」

 よく見れば剣の刃に何かが塗られている。

「ぷきゅあ!? きゅうあ!」
(毒による痙攣!? それなら!)

 私は無理矢理イラールの腕の中から飛び出すとポヨンポヨンと這ってマクティーラの腕に近づいた。

(傷口から心臓に近い方を布か何かで縛って……って、こんな手だと何もできない!)

 悔しさでベシベシと地面を叩いていると、イラールが服の裾を破いてマクティーラの腕に巻き付けた。

「フィア、私は救援を呼んできます! ここは任せましたよ!」
「は、はい!」

 慌ててフィアが返事をする前にイラールが大鷲の姿になる。
 驚いている間に空高く飛び立った。




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