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ゆっくりと浮上していく意識。
その中で気絶する前のことを思い出す。
(マクティーラ、大丈夫かな……仮死状態のままなら、私が指示してゆっくり体温をあげて……って、アザラシだから言葉が通じないんだった。あれ? でも、気を失う前に……)
私はガバッと目をあけた。
「きゅ、きゅあぁ!?」
(私、しゃべれてた!?)
勢いに任せて体を起こす……けど、やっぱり起きられなくて。
ペタンとふわふわなマットの上に転がる。
コロンと姿勢を変えれば真っ白なふわふわモチモチのわがままボディの下半身が目に入る。口から出るのはアザラシの声で、人の声とは程遠い。
「ぷきゅぅぅ……」
(話せたのは夢かぁ……)
落胆とともにポスっとうつ伏せる。
(え? でも、どこまでが夢でどこまでが現実? マクティーラは!?)
バタバタと手を動かして周囲を見る。
すると、そこは見たことがない部屋だった。
真っ白な壁と、大きな窓があるだけの部屋。白いレースのカーテンが優雅に揺れ、穏やかな風が私の頬を撫でる。
そして、私がいるのは白いベッドの上。
「ぷきゅ?」
(ここは?)
移動しようと体を動かすけどシーツをかくだけで全然進まない。
「きゅあ!」
(こうなったら!)
ベッドの上でコロコロと体を転がす。
それだけで行きたいところへ簡単に行ける。
(這うより転がるほうが簡単かも……って、うわっ!?)
突然、体のバランスが崩れる。
調子にのってベッドの端まで移動しており、そのまま木の床へ落下……
「危ない!」
床にぶつかる前に逞しい腕が私を受け止めた。
「大丈夫か?」
心配そうに藍色の瞳が覗き込む。
風に揺れる黒髪に、整った顔立ち。青白かった肌は血色が良くなり、私を掴む手にもしっかりと力が入っている。
「きゅきゅあ!?」
(マクティーラ!?)
驚く私にマクティーラが平然と話す。
「おまえは魔力の使い過ぎで数日ほど寝込んでいたんだが……体調はどうだ?」
「きゅぷきゅきゅあ! きゅ!? きゅぅきゅあ!?」
(私よりマクティーラの方が! 毒は!? 体は大丈夫なの!?)
私の必死の声に眉尻が困ったようにさがる。
「何を言っているのか分からないが、それだけ声が出せるながら大丈夫そうだな」
「きゅぅぅ……」
(そうだけど……)
不満混じりのままジドッと見ていると、マクティーラが私を抱いたまま立ち上がった。
「少しいいか? 話したいことがある」
「ぷきゅう?」
(話したいこと?)
私の疑問に返事はなく、マクティーラが歩き出した。
私が寝ていた部屋を出ると、そこは大きな窓から穏やかな陽射しが差し込む廊下だった。
熱くも寒くもない、丁度いい気候。その中で、逞しい両腕で優しく大事に運ばれるのは意外と気持ち良くて。
(こういう移動もアリだなぁ。こののんびりとした揺れも気持ちいい……って、それより私もアザラシを抱っこしたい! どうして私がアザラシなのよ! これだと、愛でることもできな……ハッ! 鏡で自分を見れば愛で放題では!? そうよ! しかも、鏡の前であんなポーズやこんなポーズをすれば、絶対に可愛い! よし、話が終わったら鏡を探して実践しないと!)
一人意気込んでいると、いつの間にか建物から外に出ていた。
真っ白な石畳に円柱が並ぶ。両側には整えられた庭があり、緑と色とりどりの花が咲き乱れている。
「きゅぁ……」
(綺麗……)
思わず見惚れていると石畳の先に白亜の神殿が現れた。
「ぷぃきゅぅ……」
(ファンタジーだぁ……)
見たことあるような、ないようなデザインの建物で、どちらかというとゲームか漫画の世界。
ほわぁと見上げているとマクティーラが説明をしてくれた。
「ここは冬の女神を奉った神殿だ」
「きゅぅう?」
(冬の女神?)
そういえば何度か聞いた単語。ただ、それがどういう意味を持つのか分からない。
首を傾げる私にマクティーラが説明を続ける。
「魔法を使う時は精霊の力を借りるのが基本だ。そして、その精霊を束ねているのが四季、春夏秋冬の女神たちで、ここは冬の女神を奉っている」
「きゅぁあ」
(そうなんだぁ)
ゲームの設定を聞いているような感覚になっている私を藍色の瞳が見下ろす。
「十日ほど前、この神殿に冬の女神の愛おし子が誕生したと宣託があり、俺たちはその子を探していた」
「きゅあきゅあ」
(それは何となく分かった)
うんうんと頷く私にマクティーラの口元が緩む。
それから、ハッとしたように顔に力を入れて前方を向いた。
白い階段をのぼり、入り口へと移動する。
「入るぞ」
マクティーラが私を左手で抱き、右手で重厚な扉を押し開けた。
「きゅぁぁ……」
(ふぁぁ……)
真っ白な壁とどこまでも伸びる白い柱。
その先にある高い天井から淡い光が降り注ぐ。
マクティーラがピカピカに磨き上げられた床へ足を踏み込み、カツンと足音が響かせながら悠然と歩いていく。
「ちなみに、あれが冬の女神の像だ」
そう言われて前を向くと、そこには白い石で造られた石像があった。
足まで伸びた長い髪に美人な顔。女神様なんだから美人なのは当たり前かもしれないけれど、それにしても神々しさというか、不思議な雰囲気がある。
「きゅぁ……」
(ふぁ……)
呆然と見上げていると、ふと記憶に引っかかるものを感じた。
(なんか見たことあるような? あれ、どこで見たんだっけ?)
思い出そうとしている私にマクティーラが話を続ける。
「この像からは分からないだろうが、白髪と水色瞳が特徴で、愛おし子も同じ色をしていると言われている」
「きゅあきゅあ」
(それで白い髪と水色の人を探していたのね)
納得していると視線を感じた。
顔をあげればジッと見つめる藍色の瞳。
「きゅ、きゅう?」
(な、なに?)
その真剣な眼差しに思わず胸が跳ねる。
眉目秀麗で目の保養にもなるほどの顔立ち。だからこそ、見つめられるだけで心臓がバクバクしてしまう。
(私はこういうドキドキより癒しがほしいのよ! のんびりゆったりとアザラシを眺めて癒されながら暮らしたいの! ……って、どうして私はこんなにアザラシが好きなんだっけ?)
自分で自分のことが分からず頭の上にクエッションマークを並べる。
すると、マクティーラが女神の石像の前にある台の上に私を置いて一歩下がった。
「きゅ、きゅあ?」
(え、なに?)
天上から光がカーテンのように降り注いできた。
全身を包まれ、ふわりと抱えられているような感覚。その光が心地よくて自然と目をとじる。穏やかな温もり全身を巡り、足りなかったものが補われていく。
スゥーと体が伸びるような感じがして私は目をあけた。
すると、明らかに目線が高くなっていて……
「なにこれ!?」
幼子のような高い声が神殿内に響く。
「あれ? わたち、しゃべれてる!?」
少し舌足らずな言葉だけど、ちょっと上手く口が動かせないけど。
でも、ちゃんと人の言葉を話せている!
喜びと同時に戸惑いが襲う。
「ど、どういうこちょ?」
自分の体を見れば真っ白なドレスに身をつつんだ小さな体。手も紅葉のようにぷくぷくで小さい。
アザラシのむちむちボディは見る影もない。
「え? え?」
「これを見ろ」
マクティーラが注目させるように軽く手を振る。
すると、正面に水が現れ、鏡のように私を映した。ただ、その姿は……
その中で気絶する前のことを思い出す。
(マクティーラ、大丈夫かな……仮死状態のままなら、私が指示してゆっくり体温をあげて……って、アザラシだから言葉が通じないんだった。あれ? でも、気を失う前に……)
私はガバッと目をあけた。
「きゅ、きゅあぁ!?」
(私、しゃべれてた!?)
勢いに任せて体を起こす……けど、やっぱり起きられなくて。
ペタンとふわふわなマットの上に転がる。
コロンと姿勢を変えれば真っ白なふわふわモチモチのわがままボディの下半身が目に入る。口から出るのはアザラシの声で、人の声とは程遠い。
「ぷきゅぅぅ……」
(話せたのは夢かぁ……)
落胆とともにポスっとうつ伏せる。
(え? でも、どこまでが夢でどこまでが現実? マクティーラは!?)
バタバタと手を動かして周囲を見る。
すると、そこは見たことがない部屋だった。
真っ白な壁と、大きな窓があるだけの部屋。白いレースのカーテンが優雅に揺れ、穏やかな風が私の頬を撫でる。
そして、私がいるのは白いベッドの上。
「ぷきゅ?」
(ここは?)
移動しようと体を動かすけどシーツをかくだけで全然進まない。
「きゅあ!」
(こうなったら!)
ベッドの上でコロコロと体を転がす。
それだけで行きたいところへ簡単に行ける。
(這うより転がるほうが簡単かも……って、うわっ!?)
突然、体のバランスが崩れる。
調子にのってベッドの端まで移動しており、そのまま木の床へ落下……
「危ない!」
床にぶつかる前に逞しい腕が私を受け止めた。
「大丈夫か?」
心配そうに藍色の瞳が覗き込む。
風に揺れる黒髪に、整った顔立ち。青白かった肌は血色が良くなり、私を掴む手にもしっかりと力が入っている。
「きゅきゅあ!?」
(マクティーラ!?)
驚く私にマクティーラが平然と話す。
「おまえは魔力の使い過ぎで数日ほど寝込んでいたんだが……体調はどうだ?」
「きゅぷきゅきゅあ! きゅ!? きゅぅきゅあ!?」
(私よりマクティーラの方が! 毒は!? 体は大丈夫なの!?)
私の必死の声に眉尻が困ったようにさがる。
「何を言っているのか分からないが、それだけ声が出せるながら大丈夫そうだな」
「きゅぅぅ……」
(そうだけど……)
不満混じりのままジドッと見ていると、マクティーラが私を抱いたまま立ち上がった。
「少しいいか? 話したいことがある」
「ぷきゅう?」
(話したいこと?)
私の疑問に返事はなく、マクティーラが歩き出した。
私が寝ていた部屋を出ると、そこは大きな窓から穏やかな陽射しが差し込む廊下だった。
熱くも寒くもない、丁度いい気候。その中で、逞しい両腕で優しく大事に運ばれるのは意外と気持ち良くて。
(こういう移動もアリだなぁ。こののんびりとした揺れも気持ちいい……って、それより私もアザラシを抱っこしたい! どうして私がアザラシなのよ! これだと、愛でることもできな……ハッ! 鏡で自分を見れば愛で放題では!? そうよ! しかも、鏡の前であんなポーズやこんなポーズをすれば、絶対に可愛い! よし、話が終わったら鏡を探して実践しないと!)
一人意気込んでいると、いつの間にか建物から外に出ていた。
真っ白な石畳に円柱が並ぶ。両側には整えられた庭があり、緑と色とりどりの花が咲き乱れている。
「きゅぁ……」
(綺麗……)
思わず見惚れていると石畳の先に白亜の神殿が現れた。
「ぷぃきゅぅ……」
(ファンタジーだぁ……)
見たことあるような、ないようなデザインの建物で、どちらかというとゲームか漫画の世界。
ほわぁと見上げているとマクティーラが説明をしてくれた。
「ここは冬の女神を奉った神殿だ」
「きゅぅう?」
(冬の女神?)
そういえば何度か聞いた単語。ただ、それがどういう意味を持つのか分からない。
首を傾げる私にマクティーラが説明を続ける。
「魔法を使う時は精霊の力を借りるのが基本だ。そして、その精霊を束ねているのが四季、春夏秋冬の女神たちで、ここは冬の女神を奉っている」
「きゅぁあ」
(そうなんだぁ)
ゲームの設定を聞いているような感覚になっている私を藍色の瞳が見下ろす。
「十日ほど前、この神殿に冬の女神の愛おし子が誕生したと宣託があり、俺たちはその子を探していた」
「きゅあきゅあ」
(それは何となく分かった)
うんうんと頷く私にマクティーラの口元が緩む。
それから、ハッとしたように顔に力を入れて前方を向いた。
白い階段をのぼり、入り口へと移動する。
「入るぞ」
マクティーラが私を左手で抱き、右手で重厚な扉を押し開けた。
「きゅぁぁ……」
(ふぁぁ……)
真っ白な壁とどこまでも伸びる白い柱。
その先にある高い天井から淡い光が降り注ぐ。
マクティーラがピカピカに磨き上げられた床へ足を踏み込み、カツンと足音が響かせながら悠然と歩いていく。
「ちなみに、あれが冬の女神の像だ」
そう言われて前を向くと、そこには白い石で造られた石像があった。
足まで伸びた長い髪に美人な顔。女神様なんだから美人なのは当たり前かもしれないけれど、それにしても神々しさというか、不思議な雰囲気がある。
「きゅぁ……」
(ふぁ……)
呆然と見上げていると、ふと記憶に引っかかるものを感じた。
(なんか見たことあるような? あれ、どこで見たんだっけ?)
思い出そうとしている私にマクティーラが話を続ける。
「この像からは分からないだろうが、白髪と水色瞳が特徴で、愛おし子も同じ色をしていると言われている」
「きゅあきゅあ」
(それで白い髪と水色の人を探していたのね)
納得していると視線を感じた。
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「きゅ、きゅう?」
(な、なに?)
その真剣な眼差しに思わず胸が跳ねる。
眉目秀麗で目の保養にもなるほどの顔立ち。だからこそ、見つめられるだけで心臓がバクバクしてしまう。
(私はこういうドキドキより癒しがほしいのよ! のんびりゆったりとアザラシを眺めて癒されながら暮らしたいの! ……って、どうして私はこんなにアザラシが好きなんだっけ?)
自分で自分のことが分からず頭の上にクエッションマークを並べる。
すると、マクティーラが女神の石像の前にある台の上に私を置いて一歩下がった。
「きゅ、きゅあ?」
(え、なに?)
天上から光がカーテンのように降り注いできた。
全身を包まれ、ふわりと抱えられているような感覚。その光が心地よくて自然と目をとじる。穏やかな温もり全身を巡り、足りなかったものが補われていく。
スゥーと体が伸びるような感じがして私は目をあけた。
すると、明らかに目線が高くなっていて……
「なにこれ!?」
幼子のような高い声が神殿内に響く。
「あれ? わたち、しゃべれてる!?」
少し舌足らずな言葉だけど、ちょっと上手く口が動かせないけど。
でも、ちゃんと人の言葉を話せている!
喜びと同時に戸惑いが襲う。
「ど、どういうこちょ?」
自分の体を見れば真っ白なドレスに身をつつんだ小さな体。手も紅葉のようにぷくぷくで小さい。
アザラシのむちむちボディは見る影もない。
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