フレンド0人が戦国転移した結果

デンデンムシ

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本当の戦い

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 この日の夜、戦の顛末を城で伝える。まずは浜は取られてしまったが、被害は想像以上に少ない。死者も0ではないが、二十人未満だ。

 「やはり、三好の勢いは凄いか?城の後備えは出さなくても大丈夫なのか?」

 「はっ。妻鳥様は城で指揮を保っててください。も、町屋の隘路を使い、三好の兵を分散させながら城に到達させないようにします」

 「おい!山岡!俺も使え!」

 「勝重。お前を使いたいのは山々だが、後備えだというのを忘れるな。恐らく明日には陸と浜とで総攻めとなるだろう。薦田大和守という奴は短気な男だ」

 「がっはっはっ!誠にですな!あの薦田はワシと織田木瓜紋を見ただけで激情しておった!あの調子なら必殺の間にて銃撃し、数を減らすことくらい容易でしょうな!」

 「頼もしい限りだ。織田軍にも深く謝する。で、静樹の方は激戦だったようだな」

 「申し訳ございません。妻鳥様に叛旗を翻した寒川衆を駆逐する事、叶いませんでした」

 「いや、良い。周布の兵もよくぞ戻って来てくれた」

 「殿。申し訳ありませぬ。寒川の馬鹿等の抑えとしていた筈が、三好の調略に掛かっていたとは……」

 「仕方あるまい。私の至らなかっただけだ。求心力があればここに寒川衆も参陣していただろう。明日には来島殿や平岡様も参られる筈だ。それに合わせて浜から挟み撃ちとなるだろう」

 「はい。兵を突出させず、温存しながら、時がくればこちらからも総攻めの激を」

 「あぁ。城から見ている。いつでも進発できるように。今日は城で休んでくれ」

 ◆

 次の日、早朝から鬨が聞こえた。その声でオレは目が覚めた。その声は味方ではなく三好軍からだった。

 「尊様!海の方を……」

 静樹がオレを起こしてくれたが、そのまま天守はないが、二階に上がり浜の方を見る。そこには妻鳥様、勝重、簗田と揃っていた。

 「うむ・・・。これはちと、笑えぬ事になるやもしれんのう」

 いつもの簗田節ではなく、声のトーンが低かった。

 オレも目を擦りながら浜を見ると、現実が分かった。

 「いや、三好はこの川之江にどれだけ兵力投入するつもりだよ!?後備えも何もかも投入してくるのか!?」

 三好軍は更に増援を送ってきやがった。浜の方は既に三好軍で覆い尽くされている。

 「山岡。それに簗田殿。ここは城で籠城した方が良いのではないだろうか?」

 「いや、妻鳥様。援軍無き籠城は沈みゆく船と同じで勝ち目はありません。河野様が自ら川之江に兵を差し向けてくれているならば話は変わりますが……それはないでしょう。来島様、平岡様が浜から来援してくれるとしても、あの数を突破して浜を再掌握は無理でしょう。ならば、ここはやはり、隘路を使い各個撃破する他ありません」

 「私もそう思います。事ここに至って、後備えとか予備隊とか言ってられません」

 「そうか。ならば腹を括らなければなるまい。私も出よう。作戦はどうする?」

 妻鳥様がそう言うと、勝重も顔が変わった。

 「浜側は昨日と同じく、簗田様とオレの隊でなんとか致します。陸の方は周布の兵を静樹預かりにしていただきたく。妻鳥様は平岡様が見えれば浜に総攻めをしていただきたく。オレも状況を見て、待ちの状態から攻めの状態に致します」

 「相分かった。誰一人として欠ける事なく再びここで集まれるよう奮戦してほしい」

 「「「オォーーー」」」

 この言葉は妻鳥様の性格を表した優しい言葉だった。

 ◆

 明るくなる前にオレ達は所定の位置に着いた。今日が正念場だ。そろそろ信長も堺辺りで何かしら動きを見せてくれる筈……そうなれば三好はこちらに全力は出せないだろう。

 太陽が昇り始める前に三好軍から口上の使者が来る。

 「川之江のッ!!貴様等は良くやった!田舎者だと侮っていた!これが最後通告ぞ!今直ぐ川之江を明け渡せば所領は安堵致す!」

 城下に降りていた妻鳥様本人が前に出る。

 「ふんっ。下郎め!何を今更。初戦にやられた腹いせに町屋を破壊しているだろうが!そんな三好に屈する川之江ではないッ!私一人になろうとも抗ってみせようぞ!」

 「カッカッカッ!そうでなくてはな!ワシも礼儀上言っただけじゃ!これより総攻撃を掛ける。川之江は三好の地となる!者共ッ!!整列ッッ!!」

 「ふん。負けてなるものか!山岡。時を見誤るなよ」

 「はっ」

 「懸かれッ!!」

 その号令と同時に、三好軍が一斉に動いた。

 鬨の声が重なり、太鼓が鳴り、浜と陸の両方から黒い波のように兵が押し寄せてくる。昨日とは比べものにならない数だ。隘路へ誘い込む間もなく、前列の足軽が雪崩れ込んでくる。

 「撃てッ!!」

 最初の鉄砲が火を噴いた。

 乾いた破裂音と共に、前に出ていた周布の兵が一人、胸を押さえて崩れ落ちる。倒れた拍子に槍を落とし、その槍に後ろの兵が躓いた。

 そこへ、追い討ちの二発目。

 名も知らぬ兵が、喉を撃ち抜かれ、声も出せずに倒れた。血が石畳を黒く染めていく。

 「怯むなッ!前へ!」

 叫びながらも、オレの足は自然と一歩下がっていた。

 三好の兵は、もはや足軽だけじゃない。後方から鉄砲組が間合いを詰め、撃っては下がり、撃っては下がる。統制が取れている。数だけじゃない、明確に“城を落としに来ている”動きだ。

 「くそっ……!」

 町屋の隘路に引き込めた隊は何とか各個撃破できている。だが、全体の流れは押されている。倒しても、倒しても、次が来る。

 横で戦っていた兵が、突然、背中を撃たれた。

 「……っ」

 声もなく、前のめりに倒れる。振り返った時には、もう目は虚ろだった。

 名も知らぬ兵だ。昨日まで飯を食い、冗談を言っていたかもしれない。だが、今はもう、ただの“死体”として道を塞いでいる。

 「踏み越えろ!止まるな!」

 叫ばなければ、全員が立ち止まってしまう。

 三好の鉄砲が、さらに増えた。

 城に向かって、撃ち上げるように弾が飛ぶ。石垣に当たって弾け、破片が飛ぶ。オレの隊の左翼を指揮していた土居がその破片で顔を切った。

 「山岡殿ッ!!このままじゃ――」

 土居が叫んだが、その声は次の銃声に掻き消された。

 浜の方を見る余裕はなかった。それでも、嫌でも耳に入ってくる。鉄砲の音、叫び声、波打ち際での鬨。静樹側の方も明らかに押されている。イヤ……完全に押し込まれている。

 城へ、城へと、じりじり詰められている。

 「……まだだ」

 自分に言い聞かせるように呟く。

 ここで崩れたら、終わりだ。だが、兵の顔からは明らかに色が消えていた。城への退路を意識し始めている。

 その時だった。

 ――浜の方から、今までとは違う音が聞こえた。

 鬨とも違う。銃声でもない。低く、重い、波を切る音。

 「……?」

 誰かが空を仰ぎ、次に浜を見た。

 「船……?」

 朝靄の向こう、浜に影が見える。

 一隻、二隻……いや、それ以上だ。

 「来島様……?」

 誰かが呟いた。

 次の瞬間、はっきりと分かった。船首に掲げられた旗。丸に三つ星。来島水軍の軍旗だ。

 「来島殿だッ!!」

 その叫びが、戦場を駆け抜けた。

 さらに後方から、別の船団が続く。丸に違い鷹の羽。平岡の家紋旗だ。

 「平岡様も……!」

 浜が、ざわついた。

 三好の兵の動きが、一瞬、鈍る。その一瞬で、空気が変わった。

 「……まだ、終わってない」

 オレは、槍を握り直す。

 絶望しかなかった戦場に、確かに“光”が差し込んだ。

 だが、それはまだ、勝ちじゃない。

 ここからが、本当の地獄だ。
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