フレンド0人が戦国転移した結果

デンデンムシ

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浜の歓声、寒川の血

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 「織田木瓜紋……尾張のうつけの軍が何故四国に居るのだ!!」

 「がっはっはっ!!三郎様に散々ケツをせっつき回され、粗方四国に逃げたかと思えば、こんなところにおったか!」

 「抜かせッ!!貴様等の戦い方は既に分かっている!散開して、矢盾を前に出し距離を詰めよ!新式の盾を使え!」

 「ほ~う?三好も考えているようじゃな。だが、所詮は織田の真似よ。一度退け!」

 「逃がすな!追え!!」

 これ以上ないタイミングでの退き方だった。
 挑発し、その誘いに簡単に乗る三好軍。
 待ち構える川之江鉄砲隊。

 織田軍が退いてきた直後に、三好軍が来る。

 「今だ!斉射ッ!!」

 パパパパパパンッ

 「待ち伏せだと!?おい!河野!貴様等は本気で三好に抗うというのだな!?」

 「薦田何某と言ったな?お前がこの軍の大将か?今更眠たい事を聞くな。川之江は退かん。オレが三好を駆逐する」

 「ふん。初戦は負けを認める。明日は貴様等を殺す。本来なら降伏すれば認めるつもりだったが、改める。降伏は許さん。皆の者!浜まで退け!」

 流石に損害が大きすぎたのか、三好軍は退き始めた。
 それでも残存兵力は、まだまだ三好軍の方が多い。
 というか、海にまだ上がりきっていない兵も多い。

 「山岡殿!勝ち鬨を!」

 「あ、あぁ。簗田殿。すまん。おい!初戦はオレ達の勝ちぞ!声を上げよ!エイエイオーッ!」

 「「エイエイオーッ!!」」

 「「「「エイエイオーッ!!」」」」

 川之江兵は、浜こそ取られたが一度追い返した事で士気が最高潮となった。
 だが、時間差でボロボロの静樹と、寒川の抑えとして配置していた石川兵が戻って来たのを見て、現実に戻される。

 もう一つの激戦。

 ~静樹 川之江寒川~

 「なんたる事だ!殿に寒川の抑えとして抜擢されたというのに、保てないではないか!おい!そこ右翼!押されている!」

 「左側から救援要請が入っております!左馬介様!この人数では数刻も保ちません!」

 「ならぬ!ならぬぞ!ここで俺達が敗走しても、浜には三好本隊が居る!なんとしても海、陸からの挟撃だけは防がなくてはならん!」

 「貴方は勝重様の従兄弟の石川左馬介様だったかしら?ここの指揮権を貸してくださる?……いいえ、私が貰うわよ!貴方は私の合図を見て槍兵を前に出し、進軍を遅らせるの!」

 「や、山岡の奥方殿……貴方様でも流石にこの人数差では……」

 「勝てる勝てないじゃない!やれるところまではやるの!向こうでは皆が奮戦しているの!この隊の鉄砲隊は二十人。十、十で右翼と左翼に分けなさい!準備できた者から撃て!」

 「すまねぇ。俺の能力不足だった」

 「そんな事はないわよ?経験の差よ」

 「経験……皆の者!これより山岡静樹様が指揮を取る!俺の合図を組頭は見逃すな!」

 啖呵を切ったはいいけど、流石にこれは防げないわね。
 とりあえず一度でもお仕返し、起点を作らなければ。

 《総帥の才》
 劣勢状態の時程、力が増す。
 その力は統率力、武勇が末端の兵まで伝播する。
 部隊の耐久力も上昇し、生還率も上がる。

 「皆の者!私の声を聞け!寒川如き裏切り者に負けるな!恥晒し国賊を討ち果たせ!皆、前を向け!後ろには石川左馬介、山岡静樹が控えている!ここで三好を食い止めよ!さすれば石川の兵の名は天下に轟く!下を向くな!顔を上げよ!手を止めるな!戦えッ!!」

 「「「「オォーーーー!!」」」」

 特性のおかげかしら。兵の顔付きが変わったわね。

 「奥方様……なんだか力が湧いてくる気がします!」

 「そう?ありがとう。けど、人数差は変わらないから、この最初で押し返すわよ。後方四十!右翼に!左翼はそのまま奮戦しなさい!」

 「誰ぞ女が後方から指揮を取り出したぞ!寒川の国人衆!働け!こんな所で遅延しているようでは、領内安堵は約束できんぞ!」

 「「「「オォーーーー!!」」」」

 最初の一押しは、確かに効いた。

 左右に振り分けた鉄砲隊の斉射が、寒川衆の先頭を薙ぎ払い、前に出ていた三好兵の足が止まる。撃たれた者だけでなく、倒れる音と悲鳴が後続を縫い止めた。

 「今よ!槍兵、前へ!」

 石川左馬介の合図で、槍が林立する。押し返す力は確かにあった。寒川衆の中から数名が引き返し、三好兵も一瞬だが陣形を崩す。

 だが——

 「来るぞ!後詰だ!」

 寒川の背後から、新手が押し寄せた。数で押し潰すような波。先ほど削ったはずの人数差が、また元に戻ったかのように見える。

 「……そう、やっぱり甘くないわね」

 槍が折れ、盾が割れ、鉄砲隊の装填が追いつかなくなる。撃てば倒れる。だが、倒しても倒しても前に出てくる。

 「奥方様!左翼が持ちません!」

 「分かってる!後方、さらに二十!左に回しなさい!」

 指示を飛ばすたび、後ろに控えていた兵の数が目に見えて減っていく。
 気付けば、最初にいたはずの顔が、次々と消えていた。

 《総帥の才》が効いている。
 確かに、兵は踏み留まっている。逃げていない。だが——

 「……削られ過ぎている」

 寒川衆も、三好兵も、確実に倒している。
 地面には敵味方の区別もつかないほど死体が重なり、血で足元が滑る。

 「ちっ……しぶとい!」

 石川左馬介の槍が、一人、二人と突き伏せるが、そのたびに肩で息をしているのが分かる。兵も同じだ。腕が震え、声が枯れ、足が重くなっている。

 「奥方様!このままでは——」

 「……分かってる」

 勝てない。
 いや、保てない。

 ここで全滅すれば、川之江に戻る兵がいなくなる。それだけは、許されない。

 「……全隊に伝えなさい」

 声を張る。

 「石川左馬介様の合図で、段階的に後退!無理に押すな!負傷者を優先しなさい!」

 「なっ……退くのか!」

 「そうよ。生きて戻るの!ここで死んでも意味はないわ!」

 後退は、敗走とは違う。
 一歩、また一歩。槍を引き、盾を合わせ、鉄砲隊が最後まで撃って時間を稼ぐ。

 その間にも、兵は減っていく。

 「奥方様!後方、もう……!」

 振り返ると、残っている兵は半分以下だった。
 それでも、寒川衆と三好兵もまた、最初の勢いを失っている。追撃は鈍く、無理に前に出た者が、逆に討ち取られる場面も増えた。

 「……十分よ。とっておきのやつを!」

 シュボーーーー

 「な、なんだこの煙は!?」

 「安心しなさい!私が使った物よ。煙幕花火っていうの。そんなことより今の内に川之江まで退くわよ!」

 寒川の地を捨て、川之江へ。
 悔しさで歯を食いしばりながら、兵達は後ろを振り返らずに退く。

 浜風が、血の匂いを運んでくる。

 「……皆、よくやったわ」

 敗北だ。
 だが、ただ逃げたわけじゃない。

 寒川衆も、三好兵も、確かに削った。
 そして——生き残った兵は、まだ戦える。

 川之江の城影が見えた時、誰かが、ほっと息を吐いた。
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