felice〜彼氏なしアラサーですがバーテンダーと同居してます〜

hina

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第七夜 恋と夢の着地点

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あれから三ヶ月が経った。
午後7時、茜の家にて。
陽菜と七海が茜の家を訪れ、女子会をしていた。
七海が妊娠してから七海は茜とすっかり仲良しで、陽菜抜きでも遊ぶようになった。

七海はもう妊娠中期、顔もふっくらしすっかり妊婦らしくなった。
産休まで残りわずかとなり、惜しむお客様相手に毎日熱心に仕事をしている。

ちなみに母親も健在で、絢斗とは今で週末婚をしている。
しかし絢斗は会社に掛け合いなんと育休を取ることになり、産後は四人で暮らす予定になったのだ。
ちなみに赤ちゃんの性別はやはり女の子のよう。

茜の子供、椿もすっかり大きくなった。
はいはいからつかまり立ちし、ますます目が離せなくて大変だ。
茜は育児に挫けながらも、匠や陽菜に支えてもらいながら残り少ない育休を満喫している。

そして肝心の陽菜は、圭と思いが通じ合っても特に進展はなく、変わらず同棲生活を送っている。

「圭くんの引っ越しまで、あと一ヶ月かぁ。」
「それより何も進展がないっておかしくない?圭って実は同性愛者だったとか?ありえそう。圭って男にモテるから。」

素直に寂しがってくれる七海とあらぬ想像をして一人楽しむ茜を前に、陽菜はデリバリーしたパスタをひたすら食べていた。
圭がもうすぐいなくなることも何も進展がないこと、それは陽菜の核心につく悩みの種であった。

しかし圭は仕事を辞めることを決めてから新しく入った若い女性のバーテンダーに必死に教育をしていて、夜遅くまで仕事に没頭していて疲れているようだった。
圭は朝も起きて陽菜を見送ってくれることも減り、元々のすれ違い生活に拍車をかけるようだった。
陽菜はその若い女性バーテンダーとの関係も気になるところだが、陽菜はさすがに恥ずかしくて聞けなかった。

「なんか人生うまく行かないなぁ。」

陽菜は大きなため息をつき、テーブルに項垂れた。
そんか陽菜の前に、テーブルに伝い歩きしている椿が近づいてきてくれる姿を見るのがなによりも癒しである。
そんな陽菜の様子を見て、茜は爆弾発言を言い出した。

「もはや既成事実を作るのはどう?」
「「は?」」

陽菜と七海はつい言葉をハモったが、七海は顔を赤くし照れて俯いていた。
なるほどここには大人しいふりしてそんな強者もいたと陽菜は思いながら、陽菜は自分から圭に責める勇気はないと思い知った。

友人に助言を受けても傾聴してもらっても、憂鬱な気持ちはなかなか晴れなかった。
そして今日も特に収穫はないまま、椿に癒され現実逃避したことで女子会が終わった。


しかしそんな陽菜も、ここ三ヶ月何にもなかったわけではない。
休日予定があれば訪れる場所があった。
それは母方の祖母の家だった。

姉は先月ようやく退院し、日中はデイケアに通っていた。
もちろんまだ姉に会う覚悟は無かったが、時々祖母に会っては近況を聞き懐かしい子供の頃の思い出と向き合っていたのであった。

この日も祖母とケーキを食べながら雑談をしていたが、祖母は突如改まって大切な話を陽菜にした。

「陽菜、私そろそろ仕事引退しようと思うんだ。」

祖母は昔は自宅出産のお産介助をしていたが、現在は産後の乳房や骨盤ケアを中心とした小さな助産院で働いていた。
核家族が増えてなかなか周りからのサポートを得られない現代育児に苦しむ母親を助けられるやりがいのある仕事だと、陽菜にいつも楽しそうに話をしていた。

「もしかして腰、またやっちゃったの?」
「そうなのよ。ヘルニア。もうこれ以上は無理しちゃダメだって先生に言われてねぇ。」

そう、そんな祖母が仕事を辞めるなんてよっぽどの理由があった。
祖母は五年前から腰椎ヘルニアを患ってたようで、薬やリハビリを受けながらなんとか仕事をしていたのである。
祖母が仕事を辞めるのは残念であったが、体のことが一番大切である。

陽菜は前向きに祖母に会える機会が増えることを喜んでいると、祖母から想定外の言葉をかけられた。

「陽菜、助産師になったら?」
「え?私が?」
「いつも私の話を楽しんで聞いてくれたじゃない。それに仕事も楽しそうだし、助産師になれば今の職場でできることも増えるわよ。」
「でももう私28才よ、今更学校に入って勉強なんて…。」

確かに陽菜は産婦人科で五年間働き、産褥婦や新生児を看護する仕事にやりがいを感じ楽しいと思っていた。
しかし看護師ではできる範囲が制限されていて、助産師が直接関わることのできる分娩や授乳指導など産後教育をすることに興味を持っていた。

「私の仲良しの助産師さんが先生をしてる学校があってね。普通の学校より社会人入学枠も多いしどう?」
「考えておくね。」

陽菜は祖母が事前に準備していた学校資料を受け取ると、自分が助産師になるそんな未来も悪くないと思えてきた。
まだまだ自分は未熟であり、新たな夢を叶えて人間として成長するのも大切だと感じたのであった。
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