恋愛書こうとして全然恋愛物かけないことに気がついた件

SchweinDikiy

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俺の世界

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今日も昨日と何ら変わらない道を歩いていた。
そう、俺の真後ろにくっついてくる美桜を含めて。
俺達は家が隣同士だからとか、あとは親同士で仲がいいとかで小さい頃からずっと一緒に遊んだりしてきた。
そのせいか高校生になってもう2年も経つ今でも俺と美桜はいつも2人で学校へ登校している。
そのせいで全く違うというのに学校では俺達は付き合っていると勘違いされている。

俺にとってはとても迷惑なことなのだ。

そもそも美桜は容姿端麗、才色兼備、文武両道であり、学校一の美少女と謳われている。
そんな奴がどれをとってもふつうより少し下を行く俺にくっついてくるのだ。
学校中の男子共からまるで獲物を奪われた野獣のような視線を毎日のように浴びせられるのだ。
運動能力も低い俺としてはビクビクと怯えることしか出来ない。

ただ今まで実際に危害が加えられたことは無い。
なぜなら、それをしてしまった時の美桜が超危険なのである。

実際去年の春、今日のように陽射しが暖かく、そよ風が気持ちの良い頃、俺に喧嘩を売ってきた先輩がいた。
何やら俺と美桜が一緒にいるのが気に食わないとかで体育館倉庫の中で何度も殴る蹴るを繰り返されて意識が遠のいていこうとしたその時。
それはまさにヒーローの登場シーンのようにバーンと勢いよく扉を開け美桜がズカズカと俺のところまで歩いてくる。

先程まで俺の事をボロカスに言っていた先輩も突然美桜が入ってきた事に驚き呆然と立ち尽くしている。

「たっくん、こんなところで何してるの?っていうか、何されてたの?」

優しい声とその可愛らしい笑顔の裏側に殺意のようなものを感じる。
美桜は小学校の頃から護身術として空手を習ってきている。
その腕はかなりのもので大会に出れば毎回と言っていいほど、メダルやカップを持って帰ってきていた。

そんなこと知らない先輩達は美桜にしたてに出ながら話をし始める。

「み、美桜さん。こいつが美桜さんの悪口を言ってたんで少し調教しようとし、ぶぁっ!!」

言葉の途中で先輩は吹っ飛んでった。体育館倉庫ということもあり直ぐに壁に打ち付けられる。
他の先輩達は何が起こったのか分からない様子だ。
俺を囲んでた先輩達が数秒後にはボコボコに倒されていた。

そんなことがあって以来美桜は「怒らせるとガチでやばい人」認定されたのである。

この噂が広がると同時に俺のヘタレっぷりも同じく広まってしまったため余計に俺達2人は学校内の有名人である。

「ヘタレ彼氏と最強彼女」……まるでアニメや漫画のような設定だ。

しかし今日、そレが崩れることが起きた。

それは、俺が告白されたのだ。
俺も理解出来ていないが俺は告白されたのだ。
その子とは話したこともないしそもそもクラスが違う為見かけることがある程度の子だと言うのに。

理由を聞くと過去に俺に救われて今の今まで美桜が近くにいるせいもあって話しかけられなかったとか。
その子は美桜ほどでは無いがかなりの美少女だ。
黒く艷めく長い髪、透き通るような肌、うっすらピンクがかってる唇。
美桜と日々一緒に生活していなければ美少女だ、と見とれてしまったでもおかしくないほどの子が俺なんかに救われてこうして今告白してきた。

俺はこんなに可愛い子を救った記憶すらないのでまずはそれを思い出すためにと言い、告白については保留した。

それから一週間、俺はこの一週間ずっとあの子を救ったということを記憶から出そうとしていたがついには無理だった。
本人に聞いてみようと思い、あの子のクラスに行く。
美桜はさっき友達と話していたため俺には着いてこなかった。

あまり自分のクラス以外に行くことがない俺は少し怯えながらあの子のクラスへと足を運んだ。
教室に着いた。
中を覗いてあの子を探してみたが見当たらない。
ふとこちらに気づいた生徒が「誰かに用事?」と聞いてくれたので名前を聞いてないあの子の容姿を説明してそんな子がいないか聞いてみた。

「ああ、椿の事か。あいつは今日休みだぜ。なんか体調不良だとか。」

「分かった。ありがとう。」

わかったことが2つ、1つは今日彼女は体調不良で休み。2つ目は彼女の名前。

頭の中で彼女の名前で記憶に検索をかける。
該当するような記憶はない。

やはり俺は彼女を救ったことがあるのかと悶々としながら廊下を歩いているとそこに美桜が近づいてきた。

「何悩んでるの?またなんか面倒事にでも首を突っ込んだの?」

と少し怒り気味の口調で聞いてきた。

「またとは失礼な。俺だって別に面倒事起こされたいわけでも起こしたい訳でもないぞ。」

俺だって面倒事は嫌いなのだ。
まるで俺自信で面倒事に首を突っ込んでるかのような言われ方は気に入らない。
ただ、今回のことは俺の問題であるからして美桜に話すべきではないと思った。

その日の夜、俺が寝る直前に電話がかかってきた。
誰からの着信か確認もせず通話ボタンを押す。

「君は主人公だから必ず最後選ぶ時が来るよ。」 

「は?」

訳の分からない電話はその一言で終わった。
俺が主人公?一体なんのことかさっぱり分からない。

それは俺という人間の人生における主人公という意味なのだろうか?やはり訳が分からない。
その日はそれ以上考えても分からないのでさっさと布団にくるまって寝ることにした。

次の日、いつも通り俺と美桜とで登校していると、校門前で椿を見かけた。
美桜が居ると話しかけにくいのかこちらに気づいても、見なかったフリをしている。
俺はそんな彼女の素振りを何となく理解して、あえて話しかけなかった。


昼休み、美桜が友達に捕まった隙を見て椿のところに行くと椿は1人でお弁当を広げて食べていた。
席に近づき声をかける。

「ちょっと時間いいか?」

彼女は小さく頷いた。

ひとまず、誰もいないところで話そうと思って屋上に来た。
本来生徒は立ち入り禁止なので生徒も教師もいない。

「ここ数日ずっと考えてたんだ。いつ俺が君を救ったのか。けどもう限界だ。申し訳ないんだが教えてくれないか?」

素直に俺が頭を下げそう言うと、椿がおもむろに口を開いた。

「タスク君がこの物語の主人公になってくれたから私が存在することが出来たんです。そして私はあなたの事が好きになってしまったのです。」

普段はおどおどしていそうなその外見からはっきりとした言葉が溢れ出てきた。
それ以前にこの椿って子は今何といった?
また主人公とか…。昨日の電話でも言われたが全くなんのことか分からない。

「あ、あの、だから、、」

「ちょっと待ってくれ。さっき言った俺がこの物語の主人公?とか意味がわからないんだけど。。説明してくれるかな?」

「あ、はい。えと、タスク君がこの物語の主人公なんですよ。」

「そこからわからない。これは現実だろう?物語とか言ってるけどここは現実じゃないのか?」

「ええ。ここは物語の中で神様が居るんです。そして神様がタスク君を作った。そしてそのおかげで私が生まれた。」

「いやいや、意味が全く分からない。だって俺は両親がいる。母親の腹から出てきて、今まで美桜と同じ学校に通ってきた。」

「他には?」

「ほ、ほか!?俺は先輩に暴力を食らってそれを美桜が助けてくれて……」

「タスク君は物語の主人公で私はその物語に出てくる登場人物で要になる人物です。その証拠にあなたの幼なじみ設定の美桜さんはどのような容姿をしていますか?そう。そこの設定は詳しく作られてません。だからタスク君は答えることが出来ないんです。タスク君は自分が物語の主人公になってることに気がついていないのです。なぜならそれはタスク君を作った神様がそれを設定しなかったからです。」

「あ、あぁ、いや、おかしいだろ!何を言ってるんだか全く訳が分からない!」

「タスク君が苦しいと思う時必ずヒーローが現れます。そう。今この瞬間も。」

バタンッ!

屋上の扉が強く開け放たれた。
美桜だ。

「あ、な、なんで、美桜がここに……?」

美桜は優しい表情を浮かべて聞いてくる。

「たっくん、こんなところで何してるの?っていうか、何されてたの?」

この言葉……。デジャヴ……。いや違う。
美桜はこの場合こう言うように設定されていたということか……。

「タスク君は理解が早くて助かります。」

「お前、俺の思考が読めるのか!?もう訳が分からない!何が何だか全く分からない!なんなんだよ!これは!ここはどこで、俺は一体何者で……訳が分からねぇ。」

美桜はいつものようにファイティングポーズを取り椿に殴り掛かる。

「《コード・ストップ》」

椿の一言で美桜は動きを止める。
しかも勢いをつけるために跳んだその状態で。
俺は訳が分からない世界に取り残されているようなそんな気がした。
それに美桜だけじゃない。
椿の一言で世界全体が止まったかのように静まり返った。

「お、お前は一体何者なんだよ。俺をどうしたいんだよ!答えろよ!」

「あなたはこの物語の主人公。あなたはあなたの好きにしたいようにすればいい。それがこの物語です。私はこの世界の異分子と言いますか。本来ならば美桜さんとあなたがイチャイチャとする世界を壊しに来た不完全なキャラクターです。しかし、これを知ってしまった以上あなたはこの物語の主人公では無くなり、この日常は壊れる。私はこの世界を壊すだけの存在です。知ってますか?椿の花って首から落ちるんですよ?」

「は?何を言って……」

美桜の首が落ちる。

落ちた生首がこちらを見ている。
叫びたい。恐ろしい。こんなところに居たくない。
何がなんでも俺は逃げようとした。

「う、動かない…なんでだよ!俺が主人公なんじゃなかったのかよ!動けよ!」

必死に足を動かそうとする。手を動かそうとする。
金縛りとはこのことなのだろうか。
全く動く気配がしない。
俺は椿からの恐怖により、過呼吸になって冷や汗で体中がびちゃびちゃになって気持ちが悪い。

「無理ですよ。私は異分子。残念なことにこの物語は確かに君が主人公。けど主人公だからってなんでも出来るわけじゃないんだよ」

「お前は異分子だからなんでも出来るってのか!?意味がわからねぇ!この世界は!この物語は俺の為にあるんだろう?なんで俺が思い通りに動けねぇんだよ!そんなんじゃこの物語は終わりじゃねぇか!」

「そう。もうこの物語は終わる。周りをよく見てご覧。世界が崩壊し始めてる。これは私のせいでもあなたのせいでもない。運命だったの。この世界は崩壊する運命だったの。」

空間に亀裂が入る。
まるで色を塗った壁を壊すように深淵が俺を見つめてくる。
夕焼けでオレンジ色に明るかった屋上が深淵の闇に飲まれていく。
目の前で宙に浮いている美桜もただの絵のように黒く塗りつぶされている。

それはあっという間に終わった。
俺と椿と名乗るこの女2人だけになり、辺りは真っ暗闇だ。
宇宙のように星の煌めきのひとつもない。
ただ俺が椿を認識できるだけの蛍光灯がついているようなそんな感じの明かりが俺と椿を照らす。
実際には明かりのようなものは見当たらない。

「……っ。ここは……?」

「ここはあなたの物語、あなたの世界だったけれどあなたは私と関わった。私に触れた。その結果あなたの住んでいた世界は壊れたの。終わりを告げたのよ。」

「それじゃ俺は一体どうすればいいんだ!どうしてこんなことになったんだ!元に戻せよ!そ、そもそもお前から俺に声をかけてきたじゃねぇか!いくらなんでも酷すぎるだろ!」

「酷い。と言われても。あなた自身で壊してしまったんだから。まあ半分は私のせいだけど。けどもう確かにあなたはこれ以上生きていけないだろうね。そして私も。」

「な、なんだと、、。お前も含めてこのまま死ぬってんのか。」

「いえ、飢えて死ぬわけでも老いて死ぬ訳でもないのよ?さっきの世界のように壊れていくの。そしてそれはもう始まってる。」

「な、何!?」

先程から足に違和感を感じていた。まるで足の感覚が無くなったようなそんな違和感だ。ふと右脚を見てみると既に膝から下は無くなっていた。

「う、うわあああああ!!!」

足から血が出る訳ではなく、ただ壊れていく。この光景がどれほど恐ろしく、おぞましい光景かはきっとなってみないと分からないだろう。
最初に神経が壊されているのか痛みなど感じない為、ただ本当に脚が壊れていくのを見るしかできない。
触れてしまえば崩壊を早めてしまいそうでただ見ていることしか出来ない。

「俺はもう主人公でもなんでもないな」

ふと思いついた言葉を口に出す。

「タスク君は主人公ですよ。だって最後まで残されるんだから。私はもう残り胴と首だけ。あなたは孤独になって死んでいく。それではお別れです。あなたの事本当に好きでしたよ。」

そう言い残して椿は崩壊していった。

「お、俺は誰も殺してない、よな?もう、もう訳がわかんねえ。ちくしょう。もう俺は死ぬしかないのか。こんなところで何も出来ずに!あぁ、最悪だ。こんな展開になるなんて神様とやらだけしか分からねぇよ。もう、、無理か。」

ゆっくりと確実に崩壊していった。
最後に見たのは白い光。ただそれだけだった。

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