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5'〜『能力』〜
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俺は現状の理解、これまでの自分の経緯、思考、そして、新たに俺の仲間となった奴隷少女とベルゼブブの正体等を全て把握し終えた。
それと同時に食事を全て平らげた。
その後は宿へ向かった。
宿で俺はこれまで通り、毎日の訓練として行っている式展開の練習をしていると、そこに奴隷少女が興味ありげな顔をしてやってきた。
「なんだ?興味があるのか?」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、少女は小さく首を縦に振った。
俺は少女に「リン」という名前を付け、リンに式の仕組み、式の使い方、式展開の仕方等一通り教え、俺もよく使う風式の術式展開を教えてみた。
リンは物覚えが早く、あっさりと風式の術式展開をしてみせた。
さらに風式の道式展開を教えるとそれもまたすぐに理解した。
リンには才能がある。
俺がそう思っていると、いつの間にかいたベルゼブブが口を開いた。
「そこの少女よ。どこでその『能力』を手に入れた?」
ベルゼブブが何を言っているのか俺には理解できない。
リンもまた理解できないようで頭上にクエスチョンマークを浮かべているような表情をしながら首を傾げる。
「ふむ、理解できないか。ならば貴様は知らないままの方がいい。でなければ……いや、何でもない。」
俺はかなり気になったがベルゼブブが良いと言うなら良いのだろう。
なぜかはよく分からないがベルゼブブは俺の事をかなり慕ってくれている為、俺も信頼を置いている。
しかし、一つ気になったことがある。
「ベルゼブブ。」
「なんでしょうか?」
「『能力』とはなんの事だ?」
「なるほど、そう来ましたか。『能力』とは、あなた方人類が使っている式の大元になります。」
「大元?」
「ええ、例えば元素式と呼んでいる4つの式。火、水、風、土を操る力は元々悪魔や天使が有するはずの力だったのです。」
「一体どういうことだ?」
「元素式と呼んでいる力の他に、空間式、時間式、虛式があるのはご存知ですか?」
「空間式、時間式は俺も多少使えるが、虚式とは何だ?」
「虚式とは元素式や時空式を偽りの形として作り出す力でございます。そうですね。簡単に説明するのならば、何も無い空間に別の空間を収納したり、時間式では行えない過去に戻るというような力です。」
「そんなものがあるのか?」
「ええ。ただ人類で虚式を操ることが出来る者など見たことがありません。虚式は全てが偽りであり、式として完成してるものがありません。それ故に人類において虚式を操れる者はおりません。しかし、もし虚式が操れる人間がいるとしたら、大元である『能力』保持者のみです。」
「その『能力』ってのはどういう意味なんだよ。どうすれば手に入るんだ?」
「先天的に生まれ持つ力と言うのが正しいでしょう。魂自体にエネルギーを与え魂に刻みつけられた力、それが『能力』です。一般的には後天的に『能力』を得たと言うのは聞いたことがありません。」
「それで、リンにはなんという能力があるんだ?」
ベルゼブブがリンに聞こえないように顔を近づける。
「『虚飾』というものです。」
「『虚飾』?」
「はい。この世界の元素式や時空式の大元は枢要罪や大罪、美徳等が大元になっております。彼女は人間でありながら『虚飾』の力を有している。つまり、人類でありながら虚式を操ることが出来る有り得ない存在なのです。しかしながら、彼女は自分の力を理解されておられない。」
「それは良い事なのか?悪い事なのか?」
「良い事と言えばそうでしょう。彼女は人間、ましてやまだ年端もいかない少女では『能力』に飲まれてしまうだけでしょう。」
「『能力』に飲まれるとはどういうことだ?」
「『能力』に飲まれてしまうと自身の意思で自身を操れなくなり、最終的には誰も抑えることが出来なくなります。そもそも『能力』保持自体は何も危険性はありません。しかし、『能力』には自我があります。つまり、人間の体を乗っ取ることができるようになるわけです。」
「何がきっかけで乗っ取るようになる?」
「それは『能力』ごとに違います。自覚した瞬間であったり、『能力』の使用であったり、様々でございます。」
「そうなのか……。」
リンは『能力』保持者だから式展開が一般人よりも早くに理解ができたわけか。
しかも人類が操れない虚式を操ることが出来る『能力』。
それはあまりにも俺にとって、衝撃の事実だった。
俺はこれまで、導式が限界値であると勝手に決めつけそこに到達すれば魔王を倒せると思っていた。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
もし、魔王の中に『能力』保持者がいれば『能力』を持ち得ていない俺に勝算は無いだろう。
俺は絶望した。
この世界にも絶望した。
俺のこれまでの努力は何にも役に立たないのかもしれない。
俺には『能力』がない。
それだけが頭の中を埋める。
もう何も考えたくなかった。
リンが絶望した俺の顔を見ておどおどとしていた……。
それと同時に食事を全て平らげた。
その後は宿へ向かった。
宿で俺はこれまで通り、毎日の訓練として行っている式展開の練習をしていると、そこに奴隷少女が興味ありげな顔をしてやってきた。
「なんだ?興味があるのか?」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、少女は小さく首を縦に振った。
俺は少女に「リン」という名前を付け、リンに式の仕組み、式の使い方、式展開の仕方等一通り教え、俺もよく使う風式の術式展開を教えてみた。
リンは物覚えが早く、あっさりと風式の術式展開をしてみせた。
さらに風式の道式展開を教えるとそれもまたすぐに理解した。
リンには才能がある。
俺がそう思っていると、いつの間にかいたベルゼブブが口を開いた。
「そこの少女よ。どこでその『能力』を手に入れた?」
ベルゼブブが何を言っているのか俺には理解できない。
リンもまた理解できないようで頭上にクエスチョンマークを浮かべているような表情をしながら首を傾げる。
「ふむ、理解できないか。ならば貴様は知らないままの方がいい。でなければ……いや、何でもない。」
俺はかなり気になったがベルゼブブが良いと言うなら良いのだろう。
なぜかはよく分からないがベルゼブブは俺の事をかなり慕ってくれている為、俺も信頼を置いている。
しかし、一つ気になったことがある。
「ベルゼブブ。」
「なんでしょうか?」
「『能力』とはなんの事だ?」
「なるほど、そう来ましたか。『能力』とは、あなた方人類が使っている式の大元になります。」
「大元?」
「ええ、例えば元素式と呼んでいる4つの式。火、水、風、土を操る力は元々悪魔や天使が有するはずの力だったのです。」
「一体どういうことだ?」
「元素式と呼んでいる力の他に、空間式、時間式、虛式があるのはご存知ですか?」
「空間式、時間式は俺も多少使えるが、虚式とは何だ?」
「虚式とは元素式や時空式を偽りの形として作り出す力でございます。そうですね。簡単に説明するのならば、何も無い空間に別の空間を収納したり、時間式では行えない過去に戻るというような力です。」
「そんなものがあるのか?」
「ええ。ただ人類で虚式を操ることが出来る者など見たことがありません。虚式は全てが偽りであり、式として完成してるものがありません。それ故に人類において虚式を操れる者はおりません。しかし、もし虚式が操れる人間がいるとしたら、大元である『能力』保持者のみです。」
「その『能力』ってのはどういう意味なんだよ。どうすれば手に入るんだ?」
「先天的に生まれ持つ力と言うのが正しいでしょう。魂自体にエネルギーを与え魂に刻みつけられた力、それが『能力』です。一般的には後天的に『能力』を得たと言うのは聞いたことがありません。」
「それで、リンにはなんという能力があるんだ?」
ベルゼブブがリンに聞こえないように顔を近づける。
「『虚飾』というものです。」
「『虚飾』?」
「はい。この世界の元素式や時空式の大元は枢要罪や大罪、美徳等が大元になっております。彼女は人間でありながら『虚飾』の力を有している。つまり、人類でありながら虚式を操ることが出来る有り得ない存在なのです。しかしながら、彼女は自分の力を理解されておられない。」
「それは良い事なのか?悪い事なのか?」
「良い事と言えばそうでしょう。彼女は人間、ましてやまだ年端もいかない少女では『能力』に飲まれてしまうだけでしょう。」
「『能力』に飲まれるとはどういうことだ?」
「『能力』に飲まれてしまうと自身の意思で自身を操れなくなり、最終的には誰も抑えることが出来なくなります。そもそも『能力』保持自体は何も危険性はありません。しかし、『能力』には自我があります。つまり、人間の体を乗っ取ることができるようになるわけです。」
「何がきっかけで乗っ取るようになる?」
「それは『能力』ごとに違います。自覚した瞬間であったり、『能力』の使用であったり、様々でございます。」
「そうなのか……。」
リンは『能力』保持者だから式展開が一般人よりも早くに理解ができたわけか。
しかも人類が操れない虚式を操ることが出来る『能力』。
それはあまりにも俺にとって、衝撃の事実だった。
俺はこれまで、導式が限界値であると勝手に決めつけそこに到達すれば魔王を倒せると思っていた。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
もし、魔王の中に『能力』保持者がいれば『能力』を持ち得ていない俺に勝算は無いだろう。
俺は絶望した。
この世界にも絶望した。
俺のこれまでの努力は何にも役に立たないのかもしれない。
俺には『能力』がない。
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もう何も考えたくなかった。
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