妄想女子、イケメン男子に揶揄われる

なゆか

文字の大きさ
1 / 15

認知

しおりを挟む
私は地味な女子として、
大学をギリギリ合格し、後は卒業という
ところまで生きてきた。

しかし、卒業間近に迫った学年末試験で
私はやかす事となる。

それは、試験範囲を予習する為、
早めに学校に来ていた際、
普通の生徒は試験勉強の為に
指定された空き教室、図書室、視聴覚室を
使用してるが私は元美術部部員の悪知恵で、
試験前に1人だけで勉強する為、
あらかじめ美術室の小窓の鍵を開けておいていた。

私は1年の時から今まで誰にもバレず、
羽を伸ばし1人の時間を堪能していたが
窓枠に足を掛けているところを
同級生イケメンに目撃された。

伊野「え、何してんの?」

山田「あ」

ガリッ

私はあまりの驚きに足を踏み外し、
美術室の中に落ちた。

ガシャンッ

山田「うわッ…痛ッ」

私はあられもない落ち方で荷物に突っ込み、
窓枠から覗いているイケメン伊野君に見られ
大恥をかいた。

伊野「うっわ、大丈夫…って
だいじょばないか」

ローアングルでもイケメンだなと
私は正座をした。

伊野「なんで正座? あのさ、
怪我しなかった?」

山田「あ…だ…平気ですよ」

まぁ、私は顔を合わせられない。

伊野「全然平気そうじゃないけど?
血出てるよ」

山田「…あ、本当ですね…」

普通にイケメンとこんな会話してるのなんて
高校生活、いや中学、いやいや小学生の記憶を
呼び起こしても無く、初めての経験で死にそうだ。

私はどもり、変な空気になった。

伊野「それで、
なんでこんな不法侵入的な事してんの?」

山田「…あ…不法侵入ってわけじゃ…なくて
私は引退はしてますが、元美術部なので」

伊野「うん、で?」

怖いなこの人、責めてくるな。

山田「この後の試験の復習で…美術室を使おうかと…
思って…ですね…」

伊野「予習でしょ? それで?」

サラッとツッコまれ、更にどもりが増し
全然言葉が出てこなく泣きそうになってきた。

山田「あ…え…と…あ…ええと」

伊野「許可得てんの?」

山田「得て…ないです」

伊野「やっぱ、不法侵入じゃん」

山田「ご…ご……申し訳…すいません」

どもり過ぎて、何言ってるのか分からない。

伊野「謝罪ゴッチャゴチャじゃん。
俺に謝っても意味なくね?」

山田「そう…で…すね」

伊野「あと、さっきからどもり過ぎだし、
目合わせないけど、なんで?
あと、タメなのに敬語だし」

次々に責められ、私は立ち上がり
美術室の奥に逃げた。

山田「こ…わ…」

窓枠を華麗に飛び越える伊野君を見て
逃げないとと、挙動不審になった。

伊野「なんで逃げ場ないのに逃げんの?」

伊野君は机にカバンを置くと、
私に近付いてきた。

山田「…ッ」

私はスカートを握り締め、汗が溢れ出てくる。

山田「す…すいません」

そして、頭を下げる。

伊野「…なんで謝んの?」

その声に顔を上げると、
伊野君は目の前の机に腰をかけた。

山田「こ…わ……」

つい出てしまう言葉に私はしまったと
更にスカートを握り締める。

伊野「怖い? 俺が?」

山田「…すいません」

伊野「いや、なんでそんな謝んの?
別に俺は山田さんの事
責めてるわけじゃないんだけど」

いやいや責めてんだろと、ツッコみたいが
この空気感に何も言えな……ん?

山田「え…なぜ名前を知って…」

伊野君とは一度も同じクラスになった事がなく、
合同授業くらいしか拝めない感じだったのに、
私の名前を呼ばれ驚いた。

伊野「そこなの?
つか、山田さん有名人じゃん」

山田「…へ?いや、そんなわけ…ないですよ…」

地味で通ってる私が有名人だなんて
意味分からん。

伊野「いやいや、普通に有名人だからね」

山田「…有名人なのは、そちらの方で」

私は伊野君に見るが、めっちゃイケメンだなと
その輝きにすぐに目を逸らす。

伊野「自分が目立たないとか思ってんの?」

山田「そ…そりゃ、地味でいつも隅っこで
静かにしているもんで」

伊野「見た目が地味なのは分かるけど、
隅っこで静かにしてるとか嘘じゃん」

山田「…ぇ」

伊野君はため息を吐いた。

伊野「あんな授業始まる前とか
授業中もボケまくって目立ってんのに?」

ボケまくってるとか…

山田「…た…確かにボケて…は…いますけど、
こそこそと友達相手に」

確かに友達とはよく話しているが、そこまで
目立ってるなんて事は…

伊野「よく訳わからないモノマネとか
一発ギャグとかしてドン滑りして引かれてんじゃん。
アレ、教室内に丸聞こえってか
みんな結構見てるからね」

山田「な…なんて事」

嘘だろと、あのおふざけを周知されいるのは…
この先どうやって生きていったら
良いのか既に路頭に迷いそうになる。

伊野「変わってるんだなーって思ってたけど、
実際こうやって対面したら、
もっと変わってる事が分かった」

山田「いや、普通ですよ…変わってるとか
気のせいです」

伊野「山田さんが普通だったら、
変わり者の基準おかしいことになるからね」

山田「一理置いて、私が変わり者だとして…」

伊野「あーあと、結構馬鹿だよね。
一理置くじゃなくて、一理あるじゃん?」

正面切って、変わり者とか馬鹿と言われ、
なんなんだこの人と苛立ちそうになるが
イケメンフェイスに、すぐに許してしまう。

伊野「一年の時、俺二組でさ
三組と英数共同授業で
山田さんの大ボケ三昧見てきたからね」

山田「…お…大ボケ三昧」

なんなんだと、笑い出した伊野君をチラ見する。

伊野「指されても無いのに
他の人の問題堂々と答えたり、
俺が課題忘れて怒られてる時咽せるし、
英語の時とか、噛み倒して散々で…やば…」

笑い出したかと思ったら、足をバタつかせて
更に笑い出す。

伊野「ほんとっ…いちいち目に入る行動してるからね、
それが無意識とかある意味才能ある」

そう言えばそんな苦い思い出あったなと
私の消し去りたい過去を掘り起こされ、頭を抱える。

伊野「あっ因みに、そうやって
この世の終わりみたいに頭抱えてるのも
よく授業中やってたからね」

癖をツッコまれ、手を下ろす。

伊野「あっそんな事より、予習…じゃなくて
復習だっけ?やんなくて良いの? 
今日山田さんが苦手過ぎる英語のテストじゃん」

そうだ、伊野君に言葉責められてる場合じゃない、
大学受かったのに、留年なんて親にしばかれる。

山田「あ…そちらは復習…いや、予習
しなくてもいいんですか」

伊野「ん?俺は英語得意だから、英検準二だし」

英検準二とか、神かよと思う。

山田「あ…ドア…鍵開けるんで」

私は勉強しないんなら出てけと
伊野君の横に通り、
ドアを開けに行こうとするが通せんぼされる。

普通にドキッと…
いやドギャンと心臓を抉られた。

伊野「俺も試験の時間までここに居るから、
別に開けなくていいよ」

山田「え…なぜ」

伊野「空き教室、人多いらしいって
さっき連絡来たしな」

山田「…ま…まじで」

伊野君がここに残るとか、
美術室に2人きりになる。

こんなドキドキシュチュエーション、
乙女ゲームか妄想でしか味わった事ねぇよ。

山田「うわー、嫌だ…地獄かよ」

私は頭を抱えた。

私にとってリアルでこんな事起きるなんてと、
ノーリア充ライフをエンジョイしていた
身からすると刺激が強すぎて嫌だった。

伊野「地獄とかひどいな、
なんでそんな嫌がんの」

山田「いや…普通にモテモテの人が同級生で
同じ空気に吸ってんのもおこがましいのに、
こんな美術室で対面してるとか、意味わからん」

伊野「え、どう言う事?
急に饒舌だし、こっちの方が意味分からない」

伊野君の引いてる顔が目に浮かぶが、
顔を伏せ続ける。

山田「予習に集中出来ないって事です」

伊野「え? 何、俺がここにいると
緊張するって事?」

山田「そりゃ、緊張しますわ」

伊野「さっきから、
異常に挙動不審なの見たから
人見知りで緊張してるのかなって
思ってたけど、俺だから緊張してたの? 
なんで?」

分かってるだろうに、
チラッと伊野君を見ると
小首を傾げてとぼけている。

山田「…ぁー、やば…
なんでって、そちらはモテモテだからですよ」

伊野「惚れちゃう的な?」

山田「そりゃそうですよ!
そちらルックス高いし、
私みたいな彼氏いた事ない、恋愛なんてまだ
早いと中学に恋愛ごとからハブられて来た
こんな惨めな私に話し掛けるなんて、
やめろ、惚れるわ。
伊野君で頭の中いっぱいになって
テストどころじゃなくなるわ」

私は、もうキモがられてもいいと、
本音をさらけ出した。

それに伊野君は腹を抱え爆笑し出した。

伊野「ちょろ!やっ…ば…腹痛い…はははッ
俺で頭いっぱいとか…まじで…ウケる!!!」

山田「そりゃ、イケメンに
話しかけられるなんて大イベントなんでね…
だから、早く美術室出て行ってもらいたい…
赤点取りそうなんで」

伊野「うっわー山田さんの見る目
変わったわ!」

山田「本当いかがわしい目で見る前に、
早く出てって下さい」

伊野「はいはーい、分かったよ!
赤点取っちゃうもんな、そりゃ仕方ない
他の教室行く事にするわ」

山田「すぐドア開けるんで」

私は震える手を必死に動かして、
ドアを開けにかかる。

伊野「山田さん」

山田「な…なんですか」

伊野「壁ドンしてあげよっか?」

山田「まだ死にたくないんで」

伊野「死んじゃうのかー、そりゃあ大変」

ニヤリと笑う伊野君は、
私の事を完全に馬鹿にして来ていて、
本当、まじで早く美術室から出てって欲しい。

ガラッ

山田「さっどうぞお引取りを」

伊野「廊下まで手引いてくれたら出てくよ」

振り返ると、私に手を差し出している伊野君。

山田「嫌がらせかよッ…接触とか本当
無理なんで、ちょろいんで勘弁して下さい」

私は手を掴まない。

伊野「山田さんって、面白いね」

山田「気のせいです」

伊野君は私の横を通り過ぎ、廊下に出た。

伊野「復習頑張ってね~」

山田「予習頑張ります」

ガラッ

私はドアを閉める。

伊野君が美術室から出て行ったものの
既に彼の事で頭がいっぱいになり
予習どころじゃなかった。

試験開始五分前の予鈴が鳴り教室に入ると、
窓際で同レベの一軍達と
楽しそうに話している伊野君が目に入る。

私に気付かない伊野君を見ると、
住む世界違う人種なんだなと一線を引いた。

関田「山田ーどこ行ってたのよ」

友達の関田優里に声を掛けられ、我に返る。

山田「異次元」

関田「は?それより、試験大丈夫なの?」

山田「神のみぞ知る的な…」

まぁ結果は散々だった。

今日で学年末試験が終わり、打ち上げだと
悠里にカラオケに誘われた。

山田「…はぁ、ヤバイな」

関田「カラオケ行くの行かないの?」

山田「行く」

私は席を立つ。

山田「はぁ、今だけ現実逃避だな」

関田「そんな散々だったの?」

山田「うん、もうほとんど勘だよね。
選択肢問題多くて助かった」

関田「当たってなかったら、
元も子もないでしょ」

山田「そりゃあそうですわ、
あっカラオケの前に神社寄ってもいい?」

関田「なんで?」

山田「とりあえず神頼みと言う事で」

関田「はぁ、りょうかい」

悠里と教室を出ようとすると…

伊野「バイバーイ、山田さん」

後ろから大声で挨拶された。

まじかよと振り返ると、 
ニコニコしている伊野君が
手を振っていた。

山田「…逃げよう」

私は軽く会釈をして回れ右をして逃げた。



昇降口にて

関田「何、目つけられたの?」

山田「メンタルクリティカルヒット」

関田「は?」

その後、神頼みの為神社に行き
カラオケで憂さを晴らした。

明日は土曜で、土日休みじゃと
体力回復出来ると思っていたが
頭の中は伊野君でいっぱいになり
休むどころじゃなく、とにかく萌えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...