ムーゲ島

なゆか

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タスク「お姉さん…僕、運命の出逢いがあるって
予告してたよね?
いくら驚いたからって、吐いたら駄目だよ」

田形「…はぁ」

タスク君に注意されたが船酔いでグロッキーの所に
脇腹を踏まれたら、そりゃ吐きますわと
今は島の中にある病院のベットの上である。

タスク「あのね、波希君と愛矢君にとって
お姉さんは希望の星なんだよ」

田形「希望の星?」

どゆこと?と私はバケツを持ちながら、首を傾げる。

タスク「来た時も言ったけどね、
あの2人がこの島を出る為には、
お姉さんと恋をしないといけないんだよ。
愛矢君は高3で、コレがラストチャンスで」

田形「そんなの事聞いてないよ」

いきなり、何をぶっ込んで来たんだと
吐き気も戻って来たなとバケツを抱える。

タスク「説明したよね?」

田形「いや、話し聞く体調じゃなかったのよ」

船で何度吐いたと思ってんだと、
今、私の胃の中は空っぽになっている。

タスク「どうしてよ!
お姉さんにとっては、胸ドキ夏の想い出だけど、
2人にとっては、死活問題なんだからね」

田形「んな事言われても、
なんかよく分からないし」

タスク君は必死な顔をして、
ベットを叩き出した。

田形「癇癪?」

タスク「違うよ!
この島の神は恋愛ゲームが好きなの!
だから、2人は学生間で恋をしないと死ぬんだよ」

田形「死ぬの⁈」

タスク「死ぬよ」

本気で訳分からない、
死ぬって何言ってんだ?と思う。

タスク「真面目に聞いて、
この島の神は恋愛ゲームが好きなんだ。
神が満足するような恋愛を魅せる為に
この島の人達は必死なんだ。
その中でも、学生っていう貴重な時期に恋をして
村から出ないと、2人は一生この島に居続ける事になる…
つまり、お姉さんと何も無いと
2人は誰とも添い遂げられずに
孤独死する祟りがあるんだよ」

田形「え?何だって?」

流暢に何言ってんだ?

タスク「2人の未来はお姉さんにかかってるんだ!」

ババーンとまたドヤ顔で言われるも、
アニメかなんかの話し?と、
ちょっとゲロを吐いた。

タスク「吐かないでよ…
コレは冗談でも、アニメの話でも無いよ?」

田形「タスク君は、人の心読めんの?
というかさ、ゲロ吐いてる人に
そんな重要っぽい事言わないでよ」

タスク「だって、言わないと…」

タスク君は再び私のベットを叩く。

田形「あのさ、あのイケメン2人は
島から出たいから、これから私に
言い寄って来るよって、タスク君の説明で
今私が分かっちゃったってことよ?」

タスク「そうだけど?」

田形「いやいや、はてなマーク出さないでよ。
そもそも、運命の出逢いとか
先に言うもんじゃないでしょーが」

そんな事聞いて、どんなスタンスで
夏休み期間過ごせばいいんだよと思う。

田形「今は、起承転結の所の『起』だよ?
こういうのは『転』のタイミングで
明らかになる感じのヤツでしょ!
はえーよ!島来てまだ間もないよ!」

コレが本当なのか、ドッキリなのかは
分からないけど、タスク君は
仕掛け人の才能無いと思う。

タスク「僕だって、必死で…」

田形「見境なさ過ぎだよ。
私ゲロ吐いてるし、相手が可哀想でしょ。
他に女子居ないの?」

タスク「この島とは関係ない子じゃないと
いけないんだ」

田形「関係無くはないんじゃないかな。
遠縁いる訳だし」

タスク「顔知らなかったら他人だよ」

何で知ってんだろと思いつつも、ため息を漏らした。

タスク「お姉さんが、あの2人のどちらかと
恋をしないと、孤独死の運命を辿っちゃうから
何とかしてあげてよ」

田形「情けを掛けろって?
何がドキドキの夏休みだ!」



数分後…

田形「恋愛しないと、2人は絶対に
島から出れないの?」

ようやく気持ち悪さが治まってきたし、
疑問をぶつけてみようとバケツを置く。

タスク「過去に島から出てこうとした子は居たけど、
引き潮で失敗してて」

田形「良いエンジンの船とか」

タスク「無茶し過ぎて、実際亡くなった子も居るから」

本当の話なのか?

田形「ドキドキな夏休みじゃなくて、
単に人助けになりそうなんだけど」

タスク「お姉さん!」

田形「何⁈」

タスク「お姉さんが希望の星なんだよ!」

んな、目を輝かされても
私は2人の前でもゲロ吐いてるしな…

田形「あのさ、
愛矢君がラストチャンス的な事言ってたよね?
そうだったら、波希君はどうする?」

どっちかを選ぶと言うことは、
どちらかは孤独死だ。

タスク「被害者が1人で収まってくれたら大丈夫。
お姉さんが気に入った方を助けてあげて」

田形「なんだかなー」

被害者って言ってるし、2人を助けてあげる方法とか
無いもんかなと私はベットから降りる。
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