ヒロインポジション

なゆか

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朝から駅

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私はいつも午前6時10分に起き、
朝シャンをして、
6時30分からの占いを観ながら
髪を乾かし、制服に着替えて朝ごはんを食べる。

6時54分に家を出て、
7時13分の電車に乗り、
7時35分に高校の最寄駅に到着し、
7時48分に教室に到着する。

これは、平日の朝
一度も欠かした事のないルーティンである。

電車遅延や体調不良、体育祭や文化祭など
イベント日は例外ではあるが
とにかく、これを高校2年の秋まで続けている為
何が何でも卒業まで続けていこうと心に誓っている。



朝の電車

私は悩んでいた。

多田「…行くか…いや、行かないか…うぅ」

周りからチラチラと視線を感じるのは
私がブツブツ言っているせいである。

私が行こうか行かないか悩んでいる訳は、
電車内でクラスメイトの真嶋時狼(ヤンキー)が
痴漢に遭っているからで、
普通に目を疑っていた。

男も痴漢に遭うのか…いや、そもそも
身長180超えの金髪ヤンキーを
ターゲットに選ぶって、
痴漢センサーどうなってんだよ…

真嶋君は涙目で抵抗出来ていない為、
痴漢センサーは当たってたのかと思いながら
私は痴漢の首元で飛沫MAXくしゃみをした。

多田「ぶぇッ…ぶぇッく…ぶぇッくしょん‼︎」

「…うわッ」

痴漢や周りの人に凄い嫌な顔をされたが
痴漢行為を止める事が出来て
私は満足である。

真嶋「…」

真嶋君が痴漢被害に遭わないように
痴漢の近くでくしゃみをしそうでしない人を
しつこく演じ続け、目的駅に到着した。

多田「次は鼻水か痰を襟元から入れるから」

コソッと痴漢にそう宣言して、
私は清々しい気分で電車から降りた。

真嶋「おい」

同じ学校だしなと、
一緒に降りて来た真嶋君に呼び止められた。

真嶋「お前…同じクラスの」

多田「名乗るもんではないよ、
では、私はこれで」

私はカッコつけて、
颯爽とその場を後にしようとしたが
真嶋に腕を掴まれた。

真嶋「目的地同じだろ」

多田「そうだけど」

真嶋「クラスメイトなら、
今名乗らなくても登校したら分かるだろ。
変な手間掛けさせんな」

多田「多田です」

真嶋「さっきの…誰にも言うんじゃねー」

口止めの為に、呼び止められたのか
まぁそりゃ金髪ヤンキーが痴漢に遭って
ビビってされたい放題なんて、
情けねーもんなと笑う。

真嶋「何笑ってんだよ」

多田「金髪ヤンキーの威圧ゼロで
情けねーなって思ってさ、
真嶋君完璧BLの受けじゃん」

真嶋「人の不幸を気持ち悪ぃ理由で
笑ってんじゃねーよ」

そう言って、肩パンされた。

まぁ、この肩パンは私の失言のせいだから
さっき痴漢から助けたけど許してやろう。

真嶋「聞いてんのかよ」

多田「聞いてるよ、総受けヤンキー」

真嶋「お前な…」

多田「あっ時間ヤバいから、
先行くね、総受けヤンキー」

真嶋「その呼び方やめろよッ
お前、色々ぶち壊してんぞ」

多田「ぶち壊し?」

真嶋「黙ってりゃ良いのに、
変なこと考えてぶち壊しやがって」

総受けヤンキーに、物凄くため息を吐かれるも
今まで金髪ヤンキー怖いって思っていたが
涙目だったし、総受けだし全然怖くねーなと笑う。

真嶋「笑うな」

多田「金髪ヤンキーにしてたのは、
虚勢張ってたのかなって」

真嶋「お前、口悪いな」

多田「ほら、このままホームに居たら、
7時48分までに登校出来なくなるから」

真嶋「7時48分?
随分早い登校だな、8時30分までに行きゃ
遅刻にならないだろ」

朝のHRは8時30分からで、
駅から、学校までは10分ちょいの為
遅刻はしないだろう。

多田「駄目なんだよ。
私のルーティンが」

真嶋「ルーティン?」

多田「私はいつも午前6時10分に起き、
朝シャンをして、6時30分からの占いを観ながら
髪を乾かし、制服に着替えて朝ごはんを食べる。
6時54分に家を出て、7時13分の電車に乗り、
7時35分に高校の最寄駅に到着し、
7時48分に教室に到着する。
そして…」

真嶋「なげーよ、
冒頭そのままコピペすんな」

多田「何言ってるのか分からないけど、
とにかく、7時48分に学校に到着する
ルーティンをねじ曲げることはしたくない」

私は総受けヤンキーが手を離さない為、
引き摺りながら改札へ向かう。

多田「総受けヤンキーも、
登校早いね」

真嶋「その呼び方止めろ、
時狼って呼べ」

真嶋君の名前は時狼と書いて、
【タイムウルフ】ってキラキラネーム読みかと
勝手に思っていたのに、【じろう】って
案外普通なんだな…

多田「さぁ、急ごうか
総受けヤンキー」

真嶋「お前、耳ついてねーのかよ」
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