ヒロインポジション

なゆか

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通学路

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総受けヤンキーと登校していると、
これまた、私のルーティンがねじ曲がろうとしていた。



「金は?」

定木「…も…ぅ、無いです」

「はぁ?無いなら、親の金でも何でも
今から盗ってこい」

定木「そ…んな事…出来ないです」

「口答えしてんじゃねーよッ」

通学路の路地裏から、
そんな声が聞こえて来た。

真嶋「あれ、同じクラスの定木だな」

総受けヤンキーの身長からは、
恐喝現場が見えるようだ。

定木君の名前は、政宗。
政宗と言ったら、独眼竜だが
定木君は教室だと空気扱いされていて
伊達感ゼロである。

多田「恐喝は、犯罪だ!」

私は恐喝現場に向かい、
通行人が静まるくらいの
ボリュームで叫んだ。

多田「警察ーッ!」

私はブレザーを脱ぎ、
手に持って振り回す。

多田「恐喝だーッ!」

真嶋「火事と同じテンションだな」

多田「恐喝だーッ!
警察ーッ!」

あまりにも叫び過ぎて、
恐喝していた人はいつの間に居なくなり、
私は警察に補導された。



真嶋「騒いでたのは、コイツが
恐喝されていたからで」

定木「…僕が弱いばかりに、
迷惑を掛けてかけてしまって…
恐喝というのは、本当で」

私の代わりに、2人が警察に説明してくれた。

「そうだったんですね、呼び止めてしまって
申し訳ございません」

時間的に今から走れば7時48分に
登校出来そうである。

警察は去って行き、私はしゃがみ
クラウチングスタートの体勢に入る。

真嶋「お前、何やってんだよ」

定木「多田さん、迷惑掛けてすみません」

多田「謝られるような事してないから、
とにかく私は登校しないと」

真嶋「登校すんのは、俺らも同じだろ。
お前いくら紺パン穿いてても、
そんな体勢すんじゃねーよ、みっともねぇな」

定木「そうですね、僕が言える事じゃ無いですが
女子としてどうかと思います」

2人に注意されるが、それよりも
ルーティンである。

多田「じゃあ、また学校で」

ドンッと、頭の中でスターターピストルの音が鳴り
私はスタートを切ろうとしたが、
首根っこを掴まれ阻止された。

多田「ぐぇッ」

この力は、総受けヤンキーだなと
振り向くと定木君だった。

多田「案外力あるんだね」

定木「助けてもらったお礼をさせてください」

多田「そういうのいらないから」

定木「駄目です。
僕は多田さんに助けて貰って感謝してるんです」

定木君の手の平が顔の前…いや、鼻当たってるし
手で制すんなよと思う。

定木「何かお礼をさせてください」

多田「お礼の押し付けすんな、優等生」

定木「…え、優等生?」

多田「定木君みたいな不憫な優等生は、
弱みを握られたりして、いいように使われて
不憫な運命を辿るんだよ、総受け優等生」

真嶋「また、変な事言い出しやがったな」

定木「何の話ですか?」

多田「とにかく、私は7時48分に
登校しないといけないから」

定木「早くないですか?」

私は立ち上がり、やれやれと
総受け優等生にも説明する事にした。

多田「私はいつも午前6時10分に起き、
朝シャンをして、6時30分からの占いを観ながら
髪を乾かし、制服に着替えて朝ごはんを食べる。
6時54分に家を出て、7時13分の電車に乗り、
7時35分に高校の最寄駅に到着し、
7時48分に教室に到着する。
そして…」

真嶋「コピペ止めろって言ってんだろ」

定木「えと、多田さんは見た目によらず計画的に
動く人なんですね」

見た目によらずって何だよと思うが、
こんな話してる時間も惜しい。

定木「多田さん」

多田「ぐぇッ」

定木「お礼するって言いましたよね?」

総受けヤンキーよりも、総受け優等生の方が
威圧的だなと、その細腕でどんな腕力してんだよと
首根っこを掴まれながら、学校とは逆方向へ
引き摺れる。

定木「重いので立ってください」

引っ張るから身を委ねたのに、
突然手を離され、私の後頭部は
お亡くなりになった。

多田「痛いな」

真嶋「お前の方が総受けだろ」

多田「いや、受けではないでしょ。
というか、受け攻め知ってんだね」

真嶋「従兄弟が同級生ネタにして
そう言うの描いてんだよ」

定木「同級生をネタにって、
倫理的にどうなんですか?」

真嶋「知らねーよ」

多田「興味深いけど、まじで朝間に合わないから」

私は総受けの2人から逃げ、
学校へ走った。
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