色んなストーカー

なゆか

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妖精さん

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それは突然現れた。

深夜、トイレに起きると
枕元に人影があった。

?「あぁ起きちゃったか、
もっと寝顔を見ていたかったのに」

そう言われ、人影は消えた。

幽霊かと思ったが、開けた覚えの無い
窓の鍵が開いていた為、警察を呼んだ。

特に金目の物が盗られたとかでもなく、
ただ、あの人は部屋に入って来ていたっぽかった。

ストーカーなんじゃ無いかと言われたが
思い当たる節が無かった。

元々、自分が住む地域は治安が悪く
今回大した被害が出ていなかった為、
蔑ろにされ、また何か遭ったら連絡をと
警察は帰って行ってしまった。

「全く、夜中に警察なんて呼ぶんじゃ無いわよ。
あんたと違って、こっちは朝早いし忙しいのよ」

隣の部屋の住人に文句を言われ、
私は落ち込んだまま部屋に戻った。

ガラッ

?「警察帰ったね」

部屋に戻るなり、
ストーカー?がベットに座っている。

すぐに警察をとスマホを手にしたものの、
先程の警察や、隣人の迷惑そうな顔が頭を過り、
助けを呼ぶ手が止まってしまった。

ストーカー「あれ?
また呼ぶんじゃなかったの?」

そう言って立ち上がると、
近付いて来た。

ストーカー「まっいいか…
とりあえず、俺村木よろしくね」

村木と名乗ったその人は私に
笑みを浮かべ、手を差し出した。

「ひッ」

村木「何々ー?
そんなリアクションしちゃって、
俺傷付いちゃうなー」

何を考えてるのか一切分からない村木に、
腰が抜け、床に座り込む。

村木「あはっ」

村木は私に笑顔を向け、目線を合わせる為に
しゃがみ込んだ。

村木「よろしくね」

バチッ



目を覚ますとベットの中、
あの村木って人は夢だったのかと
起き上がると、枕元に村木が頬杖を突いて
微笑んでいた。

村木「おはよ」

「…なッ…け…け…警察…」

村木「あははっどもり過ぎでしょ。
ほら、スマホはこーこ」

村木の手には私のスマホが握られていて、
すぐに手を伸ばすが易々と取らせてくれなかった。

村木「朝ご飯作ったんだ!
さあ、もりもり食べて、今日も一日頑張ろう!」

腕を引かれ、無理矢理ベットから引き摺り出される。

村木「ほらほら、俺
料理には定評あってさー」

今の状況は異常じゃないと錯覚するほど、
普通に…当たり前のように村木は笑っている。

「…な…何で…」

村木「声ちっさくて震え過ぎて、
聞き取れないから、もう一回!」

「…ど…どういう…つもりで…私に…」

村木「どういうつもり?」

首を傾げる村木は本当に分からないのか、
楽しそうに唸っている。

村木「うーん、うーん」

「…出て…行って…ください…そうしないと、
けっ警察を」

村木「やっぱ、警察呼ぶ?」

警察を呼ばれる事が平気なのか、
余裕そうに盛り付けられていたミニトマトを
摘む。

村木「呼んでも無意味だよ。
俺、妖精だし」

意味の分からない事を言って、
ミニトマトを口に放り込む。

村木「貴方って、いつも1人だよね。
会社でも、ほら昨日だって隣人や警察にさえ
蔑ろにされて、家族にも見放されて
それって、孤独って言うんでしょ?」

村木はテーブルに飛び乗った。

村木「貴方は可哀想だから、
俺みたいな妖精は必要なんだって!
俺が居れば、貴方は寂しくないから
俺と一緒にいよ?」

「…勝手な事…言わないでください」

何処で調べたのか、確かに私は肩身の狭い生活を
送っているが、自分を妖精だという人に縋るほど
落ちぶれてはいない。

村木「大丈夫大丈夫、俺は妖精だから」

「不法侵入…は…犯罪で…」

村木「妖精には、不法侵入なんて概念は無いね」

何を言っても無駄なのか、村木は盛り付けられた
朝食を踏み付けながら、テーブルの上を飛んだり
回ったりしている。

踏まれた朝食は部屋中に飛び散り、
壁、床、棚が汚されていく。

村木「俺、妖精だからね」

グチャッグチャッ

村木はテーブルに座り、
私に見せつけるように口の中で
ミニトマトは咀嚼する。

警察を呼んだら殺すと言っているようで
確かにこの近距離で、警察を呼んだとしても
確実に到着前には殺されてしまう。

村木「貴方の心を埋めてあげられるのは
俺だけだよ?」

笑う村木の口から、
ミニトマトの赤い汁が垂れる。



時は流れ
村木という自称妖精兼ストーカーが
私の元に来てから、1ヶ月経過した。

村木「あはははっ、この芸人俺好きなんだよねー
めっちゃ面白い」

私の横でテレビを観ながら楽しそうに笑う村木。

村木「お背中流そっかー?」

にやにやとふざけて風呂場を覗いて来る村木。

村木「やばいよ、これ!
でっかい、ゴキブリベランダでスタンバってる!」

いちいちゴキブリに過剰反応をする村木。

村木「こーら!
遅くなるなら、遅くなるって言わないと
心配するでしょーが!」

私の帰りを夜遅くまで待っていてくれる村木。

村木「朝ごはん作ったよ!
もりもり食べて今日も一日頑張って行こう!」

彼の目的は未だに分からない。

暴力を振われる事もなく、
私が嫌がる事も一切しない。

金銭目的でも無く、私の居ない間に
働いてるのか何なのか、
勝手に作っている料理の食材は自費で
最近は公共料金も勝手に払っている。

「何で…こんなに尽くしてくれるの」

村木「まーた、言ってんのそれ。
俺は妖精だからだってば」

【妖精だから】

そんなの道理が立たないはずなのに…

村木「俺に出てって欲しいって思うなら出てくよ」

私にとって彼は…

「出て行かないで、
ずっと側に居てください」

私がストーカーだと思わなければ
彼は、ストーカーでは無くなる。

村木「りょーかい♪」

私の妖精さんは、幸せそうに微笑んだ。
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