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俺の初恋
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~~
俺は高校の入学式で、
人生で初めて一目惚れというモノをした。
恋をしたのも初めてで、
こんなふわふわと心地良い気持ちに
なるんだと分かった。
彼女は、同じクラスの鞘田さや。
俺なんかと住む世界が違う
明るくていつも笑顔が可愛らしい女子。
同じクラスのおかげで毎日顔を合わせ
ごくたまに挨拶をしてくれた。
俺はそのごくたまにが嬉しくて、
この好きがどんどん膨らんでいく。
矛井「乃亜、好きな人でも出来た?」
高校が同じと言う事で、
親戚の矛井眞琴の家に居候する事になり
俺と真逆だけど、仲良くしてくれる眞琴に
俺の初恋がバレてしまった。
久藤「どうして、分かったの?」
矛井「勘」
久藤「勘で分かるって、やっぱり眞琴は凄いな」
矛井「凄くなんてねーよ、
勘が俺にあっても、意中になかったら
意味ねーだろ」
久藤「眞琴も好きな子が居るの?」
矛井「勘が全く働かない無い奴なんだよ」
俺と違って明るく友達が多くて、
女子から憧れられている眞琴も俺と同じで
片想いをしてるんだと分かると嬉しくなる。
それから、鞘田さんへの好きが膨らみ続け
2年に上がり、幸運な事にまた同じクラスになれた。
この好きは膨らみ続けるんだと思っていたが
最初の席替えで、鞘田さんの友達の籠山さんに
声を掛けられることになった。
籠山「久藤って、手綺麗だね」
手が綺麗?
そんな事初めて言われた。
籠山「ピアノとかやってたの?」
籠山さんは俺の手をジッと見ている。
久藤「え…いや、何もしてない」
籠山「何もしてないから、逆に綺麗なのか」
女子に初めて笑い掛けられ、
戸惑ってしまった。
籠山「指も細いし、爪も綺麗で
羨ましいな」
籠山さんは、自分の手を隠しているが
俺なんかよりもきっと綺麗な手をしている。
籠山「いや、私の手はゴツいし
豆が硬くなってて…
ほら、手出して」
彼女に手を掴まれ、
手と手を合わせられ、こんな事も初めてで、
指と指の隙間に彼女と目が合った。
籠山「一目瞭然でしょ」
籠山さんの手なんて目に入らなかった…
ただ、彼女が綺麗だと思った。
籠山「…え」
耳まで真っ赤になった彼女は、
反対方向を向いてしまった。
驚いたとは違う…先程の表情…
どこか共感のようなモノを覚えた。
~
それから、籠山さんは
俺に声を掛けてくれるようになった。
体育の後
籠山「これ、濡らすと冷たくなる素材で」
放課後の資料室清掃
籠山「なんてやらしいんだ」
朝、話し掛けられた時とは違く、
何故か辿々しかった。
バシャーッ
資料室から走り去った籠山さんを追いかけると
眞琴と一緒に居て、
籠山さんはいきなり水道で水浴びをし出した。
そして、濡れたまま窓枠を飛び越え、
中庭に出て行った。
久藤「眞琴、何が遭ったの?」
矛井「ぶッ…まじ腹痛いって…」
眞琴は腹を抱えて笑い、
俺は出しっぱなしの水道を止めた。
矛井「さっきの馬鹿は、籠山って言うんだけど…
ほら、乃亜の隣の席の」
久藤「知ってるよ」
矛井「あいつさ、中学同じで
中1からずっと同じクラスなんだけどよ、
今からキャラ変しようとしてて、
高校デビューには遅いだろ」
眞琴は、また笑い出し
俺の勘で眞琴が想いを寄せる子は、
籠山さんなんだと分かった。
矛井「まじ、真冬に水浴びって
絶対風邪引くよな」
眞琴が言った事は本当になり、
次の日、籠山さんは風邪で学校を休んだ。
鞘田「死ぬの⁈」
鞘田さんは誰かと電話をしていて、
たまたま俺はその横を通った。
鞘田「まじで金無いな…どうしよ」
電話が終わったのか、鞘田さんが困っている声がして
これは自分から声を掛けるチャンスだと、
俺は初めて鞘田さんに声を掛けた。
鞘田「何?」
久藤「こっ困ってるようだったから…」
想いを寄せる子と対面してるなんてと、
声は震えるが少しでも話したいと続けた。
久藤「えと…俺に出来る事が…あるなら」
鞘田「まじ?助かるわ!
じゃあ、この住所に病人が居るからさ~
色々食べ物買って、放課後持ってってあげて」
鞘田さんにメモを渡され、
少しだけだが、彼女と話しが出来て
また好きが膨らんだ。
にしても、詳細が全然分からないなと
再度聞こうにも、忙しそうな彼女に
話し掛ける隙が無く
そのまま放課後になってしまった。
久藤「さっ鞘田さん!」
下校しようとしている鞘田さんを追いかけ、
決死の覚悟で呼び止めた。
鞘田「何」
久藤「この住所って」
鞘田「あー言ってなかっけ?
かこの家の住所…苗字は籠山ね!
私急いでるから よろしくー」
鞘田さんは走り去って行き、
まさか籠山さんの家とは思いもせず、
この事を早く聞いておけば、
眞琴に伝えられたのに…
眞琴はバスケ部で試合が近く、
夜遅くまで部活をやっている為
これから籠山さんの家に行くのは難しいだろう。
眞琴には悪いが、電話で鞘田さんは
死ぬと言っていたし、
俺はおかゆのパウチや栄養ドリンクなどを買って
籠山さんの家に向かった。
インターホンを鳴らしたが、
どちら様とも聞かれないまま、玄関が開かれた。
籠山「…え」
籠山さんは体調が悪いのか、
顔が真っ赤で、俺が来た事に驚いたからなのか
自分の頬をつねり出した。
夢じゃないと言えば、また辿々しく
寝ぼけているのか、体調が悪いからなのか
籠山さんは色々俺に頼って来た。
籠山「あーんして欲しい」
久藤「…え?」
籠山「死ぬかもしれないから」
久藤「…」
籠山「フーフーもして欲しい」
きっと、お母さんと間違えているのだろう。
でも、おかゆを食べさせるなんて
眞琴を裏切る事になってしまう。
籠山「お願い!」
でも、病人だ。
籠山さんの要望には応えないと…
俺は籠山さんのお願いを聞き、
おかゆをスプーンで掬い、熱を冷まそうとすると
籠山さんに謝られた。
籠山さんが俺にした事が
セクハラって、どう言う事だろう…
久藤「…籠山さん、口開けて」
籠山「あ…美味しい」
久藤「それなら、良かった」
何故か、胸がチクチクとする。
久藤「籠山さんは変わってるね…
でも、あまりからかわない方がいいよ。
いくら俺でも勘違いしちゃうから」
俺は籠山さんの家を後にし、
なんで去り際にあんな事言ってしまったのか…
このチクチクの正体が分からないまま
遠縁の法事に行く事になった。
矛井「俺、行かなくていいっぽい」
久藤「そうなんだ…」
矛井「乃亜、なんか遭ったのか?」
久藤「どうして?」
矛井「勘」
眞琴は、籠山さんの事が好きなんだ…
さっきの事を話したら、
きっと眞琴に嫌な思いをさせる。
あぁ…このチクチクは、罪悪感か。
矛井「籠山の見舞いに行ったんだろ?」
久藤「…え」
どうして知ってるんだ?
矛井「鞘田から聞いてるから、
その事で口籠ってんなら、構わねーよ。
鞘田に押し付けられたんだって分かってるし」
久藤「鞘田さん?」
矛井「よく部活見学しに来るんだよ」
久藤「…そっか」
鞘田さんは、眞琴の事が好きなんだ。
まぁ、当たり前か…眞琴は俺なんかと違って
明るくて人気者で…
久藤「籠山さん、体調悪そうだったよ」
矛井「やっぱ?
真冬に水浴びすっから」
久藤「眞琴がお見舞いに行けば良かったね」
矛井「え、あーでも迷惑だろ」
久藤「なら、ノート取ってあげれば?
喜ぶと思うよ」
矛井「ノートか!」
眞琴は、新しいノートを取り
楽しそうに今日のノートを書き写し出した。
鞘田さんも、俺も叶わない恋をしている。
また、胸がチクチクする。
~
矛井「あー」
法事から帰ると、眞琴はベットに枕に顔を埋めて
唸っていた。
久藤「どうしたの?」
矛井「あっ乃亜、長旅ご苦労さん」
久藤「ありがとう…それで?」
本当にどうしたんだろう…
眞琴は再び枕に顔を埋め、また唸り出した。
矛井「俺さー…失恋確定したんだよ」
久藤「…え」
矛井「…はぁ…好きだけど…
あんなあからさまな…はぁ」
眞琴が失恋確定って…籠山さんと何が遭ったのか?
矛井「鞘田にも聞いたけど…あーもう」
鞘田さんとも何か遭ったのだろうか…
矛井「乃亜って、籠山の事どう思う?」
久藤「え、どうって」
矛井「まぁ、いきなりじゃ応えらんないよな」
…まさか、籠山さんは俺の事?
いや、俺なんかを好きになる人はいない…
また胸がチクチクして、
眞琴はそのまま寝てしまい
俺はこのチクチクを抱いているせいで
なかなか寝付けなかった。
~
朝
矛井「俺、諦めるからさ、
乃亜は頑張れよ!」
眞琴に背中を叩かれ、
前の方に鞘田さんと籠山さんの
背中を見つけた。
鞘田「?」
俺も眞琴も鞘田さんも失恋したんだ。
でも、この鞘田さんに抱き続けた
好きはどうすればいい?
俺は鞘田さんではなく、何故か
籠山さんに声を掛けていた。
久藤「一か八かで質問するけど、いい?」
籠山「うん」
久藤「籠山さんは、俺の事好きなの?」
何で本人にそんなこと聞いてしまったんだ?
いや、俺の鈍い勘が働いたのかもしれない…
籠山さんは、頷いた。
また胸がチクチクする。
久藤「俺、鞘田さんの事が好きなんだ」
そう言うと、籠山さんは肩を落とし
背を向け、歩き出した。
失恋をさせてしまった?
籠山さんは、こんな俺なんかの事を
好きでいてくれたのに傷付けてしまった。
俺は鞘田さんが好きで
この好きは沢山膨らんでいて…
でも、鞘田さんは眞琴の事が好きで…
俺は失恋していて…
どうしたらいいか分からない…
俺は籠山さんを呼び止め、
自分では解決出来ない質問をした。
傲慢だけど、この好きをどうすればいいのか
分からない。
籠山「叶わないなら、
この好きを無くすしかないでしょ」
好きを無くす…?
籠山「知らないよッ…別に好きな人が出来たら
無くなんじゃない?」
好きの上書きなんて、出来るのか?
また、胸がチクチクする。
涙を流す籠山さん。
もしかしたら、籠山さんなら
俺の鞘田さんへの好きを
どうにかしてくれるかもしれない。
濡れた頬に手を添え、
目が赤くなった籠山さんに俺は…
籠山「…ぇ」
本当に俺は傲慢だ…
でも、チクチクが何故か治った。
俺は高校の入学式で、
人生で初めて一目惚れというモノをした。
恋をしたのも初めてで、
こんなふわふわと心地良い気持ちに
なるんだと分かった。
彼女は、同じクラスの鞘田さや。
俺なんかと住む世界が違う
明るくていつも笑顔が可愛らしい女子。
同じクラスのおかげで毎日顔を合わせ
ごくたまに挨拶をしてくれた。
俺はそのごくたまにが嬉しくて、
この好きがどんどん膨らんでいく。
矛井「乃亜、好きな人でも出来た?」
高校が同じと言う事で、
親戚の矛井眞琴の家に居候する事になり
俺と真逆だけど、仲良くしてくれる眞琴に
俺の初恋がバレてしまった。
久藤「どうして、分かったの?」
矛井「勘」
久藤「勘で分かるって、やっぱり眞琴は凄いな」
矛井「凄くなんてねーよ、
勘が俺にあっても、意中になかったら
意味ねーだろ」
久藤「眞琴も好きな子が居るの?」
矛井「勘が全く働かない無い奴なんだよ」
俺と違って明るく友達が多くて、
女子から憧れられている眞琴も俺と同じで
片想いをしてるんだと分かると嬉しくなる。
それから、鞘田さんへの好きが膨らみ続け
2年に上がり、幸運な事にまた同じクラスになれた。
この好きは膨らみ続けるんだと思っていたが
最初の席替えで、鞘田さんの友達の籠山さんに
声を掛けられることになった。
籠山「久藤って、手綺麗だね」
手が綺麗?
そんな事初めて言われた。
籠山「ピアノとかやってたの?」
籠山さんは俺の手をジッと見ている。
久藤「え…いや、何もしてない」
籠山「何もしてないから、逆に綺麗なのか」
女子に初めて笑い掛けられ、
戸惑ってしまった。
籠山「指も細いし、爪も綺麗で
羨ましいな」
籠山さんは、自分の手を隠しているが
俺なんかよりもきっと綺麗な手をしている。
籠山「いや、私の手はゴツいし
豆が硬くなってて…
ほら、手出して」
彼女に手を掴まれ、
手と手を合わせられ、こんな事も初めてで、
指と指の隙間に彼女と目が合った。
籠山「一目瞭然でしょ」
籠山さんの手なんて目に入らなかった…
ただ、彼女が綺麗だと思った。
籠山「…え」
耳まで真っ赤になった彼女は、
反対方向を向いてしまった。
驚いたとは違う…先程の表情…
どこか共感のようなモノを覚えた。
~
それから、籠山さんは
俺に声を掛けてくれるようになった。
体育の後
籠山「これ、濡らすと冷たくなる素材で」
放課後の資料室清掃
籠山「なんてやらしいんだ」
朝、話し掛けられた時とは違く、
何故か辿々しかった。
バシャーッ
資料室から走り去った籠山さんを追いかけると
眞琴と一緒に居て、
籠山さんはいきなり水道で水浴びをし出した。
そして、濡れたまま窓枠を飛び越え、
中庭に出て行った。
久藤「眞琴、何が遭ったの?」
矛井「ぶッ…まじ腹痛いって…」
眞琴は腹を抱えて笑い、
俺は出しっぱなしの水道を止めた。
矛井「さっきの馬鹿は、籠山って言うんだけど…
ほら、乃亜の隣の席の」
久藤「知ってるよ」
矛井「あいつさ、中学同じで
中1からずっと同じクラスなんだけどよ、
今からキャラ変しようとしてて、
高校デビューには遅いだろ」
眞琴は、また笑い出し
俺の勘で眞琴が想いを寄せる子は、
籠山さんなんだと分かった。
矛井「まじ、真冬に水浴びって
絶対風邪引くよな」
眞琴が言った事は本当になり、
次の日、籠山さんは風邪で学校を休んだ。
鞘田「死ぬの⁈」
鞘田さんは誰かと電話をしていて、
たまたま俺はその横を通った。
鞘田「まじで金無いな…どうしよ」
電話が終わったのか、鞘田さんが困っている声がして
これは自分から声を掛けるチャンスだと、
俺は初めて鞘田さんに声を掛けた。
鞘田「何?」
久藤「こっ困ってるようだったから…」
想いを寄せる子と対面してるなんてと、
声は震えるが少しでも話したいと続けた。
久藤「えと…俺に出来る事が…あるなら」
鞘田「まじ?助かるわ!
じゃあ、この住所に病人が居るからさ~
色々食べ物買って、放課後持ってってあげて」
鞘田さんにメモを渡され、
少しだけだが、彼女と話しが出来て
また好きが膨らんだ。
にしても、詳細が全然分からないなと
再度聞こうにも、忙しそうな彼女に
話し掛ける隙が無く
そのまま放課後になってしまった。
久藤「さっ鞘田さん!」
下校しようとしている鞘田さんを追いかけ、
決死の覚悟で呼び止めた。
鞘田「何」
久藤「この住所って」
鞘田「あー言ってなかっけ?
かこの家の住所…苗字は籠山ね!
私急いでるから よろしくー」
鞘田さんは走り去って行き、
まさか籠山さんの家とは思いもせず、
この事を早く聞いておけば、
眞琴に伝えられたのに…
眞琴はバスケ部で試合が近く、
夜遅くまで部活をやっている為
これから籠山さんの家に行くのは難しいだろう。
眞琴には悪いが、電話で鞘田さんは
死ぬと言っていたし、
俺はおかゆのパウチや栄養ドリンクなどを買って
籠山さんの家に向かった。
インターホンを鳴らしたが、
どちら様とも聞かれないまま、玄関が開かれた。
籠山「…え」
籠山さんは体調が悪いのか、
顔が真っ赤で、俺が来た事に驚いたからなのか
自分の頬をつねり出した。
夢じゃないと言えば、また辿々しく
寝ぼけているのか、体調が悪いからなのか
籠山さんは色々俺に頼って来た。
籠山「あーんして欲しい」
久藤「…え?」
籠山「死ぬかもしれないから」
久藤「…」
籠山「フーフーもして欲しい」
きっと、お母さんと間違えているのだろう。
でも、おかゆを食べさせるなんて
眞琴を裏切る事になってしまう。
籠山「お願い!」
でも、病人だ。
籠山さんの要望には応えないと…
俺は籠山さんのお願いを聞き、
おかゆをスプーンで掬い、熱を冷まそうとすると
籠山さんに謝られた。
籠山さんが俺にした事が
セクハラって、どう言う事だろう…
久藤「…籠山さん、口開けて」
籠山「あ…美味しい」
久藤「それなら、良かった」
何故か、胸がチクチクとする。
久藤「籠山さんは変わってるね…
でも、あまりからかわない方がいいよ。
いくら俺でも勘違いしちゃうから」
俺は籠山さんの家を後にし、
なんで去り際にあんな事言ってしまったのか…
このチクチクの正体が分からないまま
遠縁の法事に行く事になった。
矛井「俺、行かなくていいっぽい」
久藤「そうなんだ…」
矛井「乃亜、なんか遭ったのか?」
久藤「どうして?」
矛井「勘」
眞琴は、籠山さんの事が好きなんだ…
さっきの事を話したら、
きっと眞琴に嫌な思いをさせる。
あぁ…このチクチクは、罪悪感か。
矛井「籠山の見舞いに行ったんだろ?」
久藤「…え」
どうして知ってるんだ?
矛井「鞘田から聞いてるから、
その事で口籠ってんなら、構わねーよ。
鞘田に押し付けられたんだって分かってるし」
久藤「鞘田さん?」
矛井「よく部活見学しに来るんだよ」
久藤「…そっか」
鞘田さんは、眞琴の事が好きなんだ。
まぁ、当たり前か…眞琴は俺なんかと違って
明るくて人気者で…
久藤「籠山さん、体調悪そうだったよ」
矛井「やっぱ?
真冬に水浴びすっから」
久藤「眞琴がお見舞いに行けば良かったね」
矛井「え、あーでも迷惑だろ」
久藤「なら、ノート取ってあげれば?
喜ぶと思うよ」
矛井「ノートか!」
眞琴は、新しいノートを取り
楽しそうに今日のノートを書き写し出した。
鞘田さんも、俺も叶わない恋をしている。
また、胸がチクチクする。
~
矛井「あー」
法事から帰ると、眞琴はベットに枕に顔を埋めて
唸っていた。
久藤「どうしたの?」
矛井「あっ乃亜、長旅ご苦労さん」
久藤「ありがとう…それで?」
本当にどうしたんだろう…
眞琴は再び枕に顔を埋め、また唸り出した。
矛井「俺さー…失恋確定したんだよ」
久藤「…え」
矛井「…はぁ…好きだけど…
あんなあからさまな…はぁ」
眞琴が失恋確定って…籠山さんと何が遭ったのか?
矛井「鞘田にも聞いたけど…あーもう」
鞘田さんとも何か遭ったのだろうか…
矛井「乃亜って、籠山の事どう思う?」
久藤「え、どうって」
矛井「まぁ、いきなりじゃ応えらんないよな」
…まさか、籠山さんは俺の事?
いや、俺なんかを好きになる人はいない…
また胸がチクチクして、
眞琴はそのまま寝てしまい
俺はこのチクチクを抱いているせいで
なかなか寝付けなかった。
~
朝
矛井「俺、諦めるからさ、
乃亜は頑張れよ!」
眞琴に背中を叩かれ、
前の方に鞘田さんと籠山さんの
背中を見つけた。
鞘田「?」
俺も眞琴も鞘田さんも失恋したんだ。
でも、この鞘田さんに抱き続けた
好きはどうすればいい?
俺は鞘田さんではなく、何故か
籠山さんに声を掛けていた。
久藤「一か八かで質問するけど、いい?」
籠山「うん」
久藤「籠山さんは、俺の事好きなの?」
何で本人にそんなこと聞いてしまったんだ?
いや、俺の鈍い勘が働いたのかもしれない…
籠山さんは、頷いた。
また胸がチクチクする。
久藤「俺、鞘田さんの事が好きなんだ」
そう言うと、籠山さんは肩を落とし
背を向け、歩き出した。
失恋をさせてしまった?
籠山さんは、こんな俺なんかの事を
好きでいてくれたのに傷付けてしまった。
俺は鞘田さんが好きで
この好きは沢山膨らんでいて…
でも、鞘田さんは眞琴の事が好きで…
俺は失恋していて…
どうしたらいいか分からない…
俺は籠山さんを呼び止め、
自分では解決出来ない質問をした。
傲慢だけど、この好きをどうすればいいのか
分からない。
籠山「叶わないなら、
この好きを無くすしかないでしょ」
好きを無くす…?
籠山「知らないよッ…別に好きな人が出来たら
無くなんじゃない?」
好きの上書きなんて、出来るのか?
また、胸がチクチクする。
涙を流す籠山さん。
もしかしたら、籠山さんなら
俺の鞘田さんへの好きを
どうにかしてくれるかもしれない。
濡れた頬に手を添え、
目が赤くなった籠山さんに俺は…
籠山「…ぇ」
本当に俺は傲慢だ…
でも、チクチクが何故か治った。
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