熊ダイブ

なゆか

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何故そうなる②

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火曜日

一美の怒りは昨日の部活で収まり、
朝練では、まともに話せるようになった。



ねりねりねり

那須野「…ふふふ」

ねりねりねり

那須野「ふふふふ」

八木岡「お前はさっきから、
何をしているんだ!」

今は、4時限目の家庭科の授業中。

私は調理実習でクッキー生地を練っていた。

ねりねりねり

八木岡「おい、聞いているか那須野!」

口うるさいクラス委員かつ、同じ班の
八木岡に注意された。

那須野「うるさいな八木岡。
私は今忙しいって見りゃ分かるでしょ!
クッキー練ってんのよ!」

私はクッキー生地を練り続ける。

八木岡「それは分かっている!
俺が言っているのは、
その生地の量の事だ!」

私が抱えるボールの中には、
大量のクッキー生地があった。

八木岡「今日の課題はマドレーヌだろ!」

ねりねりねり

那須野「班の分は、もう焼いてるでしょ!
この生地は、各班で余った材料を頂戴してるから
問題無し!」

八木岡「…ぐぬぬ」

何がぐぬぬだよ、小姑め…

「那須野ー、その量のクッキー
授業中に焼き終わんなくない?」

那須野「確かに」

昼休みには、用意しておきたかったのにな…

八木岡「はははッ!
那須野は馬鹿という次元を超えているな!」

息を吹き返したように私を嘲笑う八木岡。

那須野「本当にうるさいな」

結局、クッキーは昼休み中でも焼き終わらず
5時限目と6時限目の休み時間にダッシュで
調理室に来て、焼き終えていたクッキーを梱包した。

そうして、村野君へ献上するのは
放課後の部活前時間になる。



那須野「おーい、村野君!」

私は、多分部活に行こうとしている
村野君を呼び止めた。

一美「何、その量?
そのクッキーを献上するの?」

那須野「熊ダイブの為に頑張った」

一美「へぇ、部活始まるから
早くしてね」

私は村野君に駆け寄り、クッキー袋を渡した。

村野「わーたくさん、ありがとうー」

村野君は嬉しそうに
後ろを向いてくれた。

那須野「よっし」

私は一美が居るところまで下がった。

一美「今度、明地君に
抱きついたら殺すからね」

那須野「怖っ!
流石に二度はないでしょ!
今日で熊ダイブを決めて見せるから」

私はスタートを切る。

一美「2度ある事は
3度あるって…本当にあるのね」

一美はその光景を見て呟いた。

ドサッ

那須野「なんでなんだよッ」

本来なら私の腕は村野君の脇腹辺りに
回っていたはずが、今回も残念…

八木岡「何をするんだッ!」

八木岡だった。

那須野「小姑ッ!
本当、邪魔すんな!」

八木岡「誰が小姑だ!」

私は八木岡から離れ、
頭を抱えて嘆く。

那須野「ほら、もう村野君居ない!」

村野君が私に背中を向けるのは、
せいぜい15秒程度で、
すぐに去って行ってしまう。

那須野「もうサイテー」

八木岡「それが、突然
人に抱きついててきた人間の態度か!」

ご立腹な八木岡…
いや、私の方がご立腹だわ…

那須野「走ってる私の前を
横切ろうとすんな!
足音聞こえんでしょ、その耳は飾りか!」

八木岡「廊下は走らないと
教えてもらった事は無いのかッ
そもそも、飛び出して来たのはお前だからな!」

那須野「交わせよ!」

八木岡「その言葉そのまま返すからな!」

一美「まぁまぁ、怒鳴り合いはその辺に
ほら、先生来ちゃうから」

一美は私達を宥め、
熊ダイブの説明を八木岡にした。

一美「と言う事なの、ごめんね八木岡君。
本当に気にしないで!こいつ馬鹿だからね」

八木岡「人智を超えた馬鹿め」

那須野「黙れ、小姑ッ!」



部活にて

先輩「また失敗しちゃったんだね」

那須野「本当最悪ですよ」

先輩「2度あることは3度あるって
言うから、人を交わす練習したらいいよ」

那須野「ナイスアドバイスです!」

私は帰宅後、部屋の電気紐で
人を交わす練習に勤しんだ。
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