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入隊
入隊初日
しおりを挟む自衛隊に来て2日目、地獄の初日となるこの日は、寝不足と軽い二日酔いから始まった。
7時に担当班長が起こしに来て、皆を連れ食堂へ向かう。
昨日の時点で仲間も出来、極度の緊張から解放されていたオレ達は、指示された隊列もお構い無しに各々が自由気ままな足取り。昨夜の宴会や担当班長の穏やかな言動もあり、皆何処か開き直った様な雰囲気に包まれていた。
食堂での食事も、昨日の夕飯に続き2度目とあってか、周りの目を気にする事も無くワイワイ楽しいものだった。
食事も終わり、隊舎へ戻った後、今日1日の行動予定を説明すべく朝礼が行われた。
「はい、皆さん、集まって並んで下さ~い」
皆ダラダラと集まり出す。
終始笑顔の担当班長は、取り敢えず整列を促しこれからの行動、特に入隊式及び出発式について事細かに説明。
ココで1つの疑問が…。
(ん?入隊式は解る。……出発式?)
昨日も一応説明したそうだが、何でも今日の午後に前期教育隊がある九州のとある駐屯地へ移動するとの事。しかも輸送ヘリで!
俄かに騒めく一同。
(うーむ、テンション上がるぜ!しかし急だな…)
と言う訳でオレ達は午前中の間で全ての準備を終え、午後一で出発式に臨む事となった。
8時半、初めて体験する国旗掲揚を終え、早速会議室に集められる。
そこでまず契約書が配られ様々な説明の後、署名&捺印。
これで正式に陸上自衛隊員となった訳だ。
で、事件は直後に起きた…。
担当班長が一言、「きょ~つけぇ~!!」
…しかもMax Volumeで!!
捺印する直前まで優しく笑顔で語りかけてたあの担当班長がいきなりの変貌!
呆気に取られるオレ達を尻目に、これまで見せた事の無い様な硬い表情で隊員の心得、気構え、規律等延々と語り続ける。
「姿勢を正せっ!!」
会議室の後方から更なる怒声が!!
振り向くと補佐役の隊員までもが凶暴化!
昨日飲み過ぎて弱りきった1人が肘を着いて座ってたのを見逃さなかったのだ。
判子押すまではお客様。押さしちまえばコッチ側、か。
畜生、ハメられた。
これまでの爽やかな笑顔と優しい語り口に完璧に騙された! しかも超怖ぇーし…。
再燃した不安と奴等の豹変という恐怖の中、説明は終わったのだが、間を置かず今度は、昨日サイズ合わせをした制服に着替え隊舎前に集合との命令が下された。
着替えの際、
「おい、何かやべーな…」
「………」
何気無く語り掛けたオレに、皆言葉を失い眼だけで返事。
他の連中も隅の方で何やらコソコソ話をしていた。
9:45分、制服に着替えたオレ達は昼食までの間、徹底的に基本動作を叩き込まれる事になった。
なんせ昼食後には、出発式が予定されており大勢の友人知人、家族の見送りを受けるのである。
それまでに、せめて自衛官としての最低限の身のこなしを覚えなければならない、という事らしい。
集まったオレ達が最初にやらされた訓練は、「整列」。
身長順に並びが割り振られコレを基に行う。
先ず各自バラバラの状態から、号令の下駆け足で集まり整列する。 前後左右は勿論の事、隣との間隔、立ち方に至るまで細かく指示される。…しかも怒声で。
コレを延々とやり続けた。
次に、気を付け、敬礼、番号、休め等の超基本動作。
「気を付け」
背筋の伸ばし、両腕の位置、両足の踵を合わせた状態で爪先の開く角度、顎の引き具合等々えらい細かい。
「休め」
休めも通常の休めから、「整列休め」なる通常の休めとは違い、厳粛な場に用いる所謂、気を付けの様な?休め、何かこんがらかってきた。まあ、そんな感じの休め等、姿勢やその動作に至るまでの素早い動きとかを、細くしかも厳しく指導。
「敬礼」
腕の上げ方、上げる際の速度、腕の角度から指の伸ばしに至るまでこれまた事細かに何度も何度も…。
「番号」
番号とはなんぞや?という人の為にちょいとだけ説明補足。
たまーにテレビの軍隊や警察等を扱った番組で、整列している隊員が端から順に「1,2,3,4~」って大声で番号を言って行くシーン見た事ない?
それが番号。
で、話に戻るが、これが中々厄介な訓練。
先ずキチンと整列気を付けした後、教官の「番号!!」の号令で前列の隊員が一斉に右端の基準の方を首だけで振り向く。コレが1人でも遅れたりしたら何度もやり直し。全員が綺麗に揃うまでやり続ける。
で次の「始め!!」の号令に従って端の基準から順に「イチッ!!」「ニッ!!」と出来るだけの大声で叫び始める。
番号を叫ぶ際、同時に頭を前方へ素早く戻す。
このタイミングが中々合わない。番号の途中で少しでも間が空くとやり直し。勿論、頭の振り戻しが遅れても同じ。
端から綺麗に、流れる様に最後まで決まらなければ容赦なく徹底的にやり直し。
その間、2列目以降の連中は身動き1つせず気を付けで立ってなきゃならない。4月とは言え、太陽の下制服姿では流石に暑い。その中、1人でもチョコっとでも動こうものなら怒声と共にまた最初から。
この超基本動作教練の後は、整列、気を付けからの、「右向け右、左向け左、回れ右」。
言うまでもないが全員綺麗に揃うまで。
最後に「行進」。
これも番号と並ぶ厄介な訓練。
脚を揃えながら行進を続けるのだが、そもそも各自の歩幅が違うので背の低い者と高い者が徐々にズレていくのだ。
その為、先頭の背の高い者は歩幅を狭くして歩かざるを得ない。
左脚を1、右脚を2とし、「イチッ!、ニッ!~」と掛け声に合わせて行進する。その際どうしても歩幅がズレた奴は、スキップの要領で脚を合わせる。
本来なら行進に加えて、「右向け前へ進め」「左向け前へ進め」「回れ進め」等細かい歩法が有るのだがそれは又後ほど。
と言う訳で、これも皆が合うまで延々と。
基本的な動作を一通り学んだ後は、バラバラの状態からの整列→気を付け→休め→敬礼→番号→右向け右~→行進と、通しで何度も練習。
皆、慣れない動きと教官からの怒声により身も心もヘトヘト、気が付くともう昼食時間になっていた。
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