記憶の片隅 陸上自衛隊 入隊、教育部隊編

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入隊

出発式&移動

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午前中、約2時間程の集中的な基本訓練を行ったオレ達は、昼食を摂る為に食堂へと向かった。
各自好き好きにダラダラ歩いてた朝とは勝手が違い、食堂までキチッと整列し行進。その間も歩調のズレた者、列からはみ出した者には容赦なく怒声が飛ぶ。
4時間チョイ前の朝飯がまるで遠い日の事の様に感じた。

食堂へ着いても我等新兵は端っこの決まった席に座り、飯時間も15分間と指定、んでもって全員揃った所で合わせて「頂きますっ!」。  …刑務所か!

慌しい昼食も終わり、食堂前で再び整列。隊舎まで行進した後、此処でやっと20分間の休憩。12時50分に隊舎前で集合整列、昼礼と説明された。
この間に部屋の私物等荷物を片付けトイレを済ます。
やる事を急いでやり、ギリギリ空いた時間で5時間ぶりに煙草を吸うのだが、皆、口数が異常に少ない。消え掛けていた今後への不安が更にデカくなって蘇っちまった様だ。 
誰かがボソッと呟く。

「初日、入隊直後でコレか…、明日からの教育隊ではどんだけキツいんだろ…」
「………」

誰も答えない。
言い方を変えれば、ここに居る誰もが心で思っていた不安だったのだろう。
まあ、この不安は当然の如く的中する事となるのだが…。


   短い休憩時間を終えたオレ達は隊舎前に集合整列していた。
間も無く昼礼が始まり、教官から午後の行動予定の説明を受ける。

「13:30より出発式、それまでは午前中の訓練内容の再確認、以上っ!!」

(……残り40分、直射日光の中また訓練。…でもまあ、仕方無い。何せ、40分後には出発式が待っている。ここまで来たらせめて、出発式をキッチリ極めてやろう)

そう開き直る以外もうどうしようも無かった。


訓練の最終確認も終えた13:20分、会場となる陸上自衛隊航空隊滑走路には続々と見送りの人々が集まり始めていた。
この大人数の前で、習ったばかりの基本動作をこなし出発式に挑む。改めて皆に緊張が走る。
もう何処にも逃げ場など無い。やるしか無いのだ。

そして遂にその時が来た。
満場の拍手の中、楽隊の演奏に合わせ教官の号令の下、習ったばかりのぎこちない動きで、しかし一糸乱れず入場する。
整列から気を付け、敬礼、番号、とキッチリと極めた…、筈。
実際の所、極度の緊張で習った事をちゃんと出来てたか以前に、式典の内容すらよく憶えていない。

式典の間は何も考えられず、只々教官の号令を聞き逃すまいと集中し、又その号令に従って行動する事だけに必死だった。
今にして思えば、あの入隊契約書に捺印した瞬間から、何か催眠術にでも掛けられたのか、はたまたほんの短い時間で一気に洗脳されたのか、兎に角その時のオレ達は教官の号令に従う事のみが正しい事なのだと盲信していたと言っても過言ではなかった。

そういう訳で式典は無事に終わり、行進しながら輸送ヘリに乗り込む。
初めて間近で眼にする巨大輸送ヘリコプター、ましてや搭乗なんて殆どの者が初体験だった筈。
しかし今はそんな事に浮かれている者は誰一人居なかった。



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