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第一章 伝説の始まり
第6話 禊祭
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『聖杜の民の誓い』が彫られた大理石の壁を見つめながら、飛王は飛翔に語りかけた。
「飛翔、これまで『ティアル・ナ・エストレア』の継承者は一人だった。けれど、俺たちは双子として生まれた。きっとこれは、二人で継承しろという、宇宙の神の言葉だと思う。二人で引き継ぐことに、何らかの意味があるはずだ。だから、これからも俺を支えて欲しい」
「もちろんだよ、飛王。俺はいつでもお前の傍にいる」
飛王はその端正な顔を悲し気な表情に変えると、飛翔の瞳を真っ直ぐに見て、先ほどまでとは反対の事を言った。
「飛翔、禊祭が終わったら、お前はその指輪で時の輪をくぐって逃げろ」
「え! 飛王、何を言っているんだ!」
飛翔は思ってもみなかった飛王の言葉に驚く。
今回の継承者交代は、予期せぬ出来事だった。いや、不穏な前兆は度々認められた。だから用心していたはずだった。それなのに、まさかあんな形で王の命が奪われるとは思ってもみなかった。
二人の父である、彰徳王が毒殺されると言う、聖杜国始まって以来の悲惨な事件。
それが成人前の王子達に突然降りかかった責任の理由だった。
今まで、他国から軍隊をもって攻めて来られたことは多々あった。だが、王の毒殺事件など起こった事が無く、起こるはずがないと思われていた。使命感に溢れた聖杜の民が、王を裏切るなどと言うことは、考えることすらできない出来事だったからだ。
身内を疑う……それがどれほどバカげた考えであるか。
だが、毒殺の犯人もまだ分かっておらず、犯人の目的は恐らく、『ティアル・ナ・エストレア』の略奪。
ならば、せめて二つの神器がそろわないようにすれば、危険が半減するはず……飛王はそう考えていた。
「指輪を時の輪の中に隠すんだ。二つともそろっていたら、いつ何者に奪われるかもしれない」
「確かにそうかもしれないが……それでは俺は飛王のそばに居られない」
「大丈夫。俺たちは双子だ。どこにいても、心は繋がっている。継承者が二人。その意味は、きっとこういうことだと思っているんだ」
「……」
飛翔が戸惑いを隠せずに黙っていると、
「リフィアも一緒に連れていけ」
「え!」
飛王が穏やかな口調で言った。
「一人で時の輪を超えるのは寂しすぎる。きっとリフィアも一緒に行きたいはずだ」
「飛王……」
「とは言っても、どうやって時の輪をくぐり抜ければよいのかは、わからないけどな」
飛王は情けない顔でそう言った。
「父上がご存命だったら、その方法も共に引き継ぐ事が出来たはず」
飛翔もそう言って唇を噛み締めた。
そこまで話したところで、最高司祭の真成が禊祭を取り仕切るために入場してきた。
二人は会話を止めて『知恵の泉』に向き直る。
そこへ、真成以外の人影を見かけて、飛王の目が鋭くなった。
「真成、禊祭は、お前と私たち三人だけで執り行う神聖な儀式のはずだが」
「少々事情が変わりまして」
『聖杜の民の誓い』を率先して守ってきたはずの神官の思いもよらぬ言葉に、飛王と飛翔は身を固くした。
「王子様方、大人しくその剣と指輪をお渡しください。それは神親王様が持つべきもの。あなた方では荷が重い。真の継承者は、天空国の覇王、神親王様です!」
「飛翔、これまで『ティアル・ナ・エストレア』の継承者は一人だった。けれど、俺たちは双子として生まれた。きっとこれは、二人で継承しろという、宇宙の神の言葉だと思う。二人で引き継ぐことに、何らかの意味があるはずだ。だから、これからも俺を支えて欲しい」
「もちろんだよ、飛王。俺はいつでもお前の傍にいる」
飛王はその端正な顔を悲し気な表情に変えると、飛翔の瞳を真っ直ぐに見て、先ほどまでとは反対の事を言った。
「飛翔、禊祭が終わったら、お前はその指輪で時の輪をくぐって逃げろ」
「え! 飛王、何を言っているんだ!」
飛翔は思ってもみなかった飛王の言葉に驚く。
今回の継承者交代は、予期せぬ出来事だった。いや、不穏な前兆は度々認められた。だから用心していたはずだった。それなのに、まさかあんな形で王の命が奪われるとは思ってもみなかった。
二人の父である、彰徳王が毒殺されると言う、聖杜国始まって以来の悲惨な事件。
それが成人前の王子達に突然降りかかった責任の理由だった。
今まで、他国から軍隊をもって攻めて来られたことは多々あった。だが、王の毒殺事件など起こった事が無く、起こるはずがないと思われていた。使命感に溢れた聖杜の民が、王を裏切るなどと言うことは、考えることすらできない出来事だったからだ。
身内を疑う……それがどれほどバカげた考えであるか。
だが、毒殺の犯人もまだ分かっておらず、犯人の目的は恐らく、『ティアル・ナ・エストレア』の略奪。
ならば、せめて二つの神器がそろわないようにすれば、危険が半減するはず……飛王はそう考えていた。
「指輪を時の輪の中に隠すんだ。二つともそろっていたら、いつ何者に奪われるかもしれない」
「確かにそうかもしれないが……それでは俺は飛王のそばに居られない」
「大丈夫。俺たちは双子だ。どこにいても、心は繋がっている。継承者が二人。その意味は、きっとこういうことだと思っているんだ」
「……」
飛翔が戸惑いを隠せずに黙っていると、
「リフィアも一緒に連れていけ」
「え!」
飛王が穏やかな口調で言った。
「一人で時の輪を超えるのは寂しすぎる。きっとリフィアも一緒に行きたいはずだ」
「飛王……」
「とは言っても、どうやって時の輪をくぐり抜ければよいのかは、わからないけどな」
飛王は情けない顔でそう言った。
「父上がご存命だったら、その方法も共に引き継ぐ事が出来たはず」
飛翔もそう言って唇を噛み締めた。
そこまで話したところで、最高司祭の真成が禊祭を取り仕切るために入場してきた。
二人は会話を止めて『知恵の泉』に向き直る。
そこへ、真成以外の人影を見かけて、飛王の目が鋭くなった。
「真成、禊祭は、お前と私たち三人だけで執り行う神聖な儀式のはずだが」
「少々事情が変わりまして」
『聖杜の民の誓い』を率先して守ってきたはずの神官の思いもよらぬ言葉に、飛王と飛翔は身を固くした。
「王子様方、大人しくその剣と指輪をお渡しください。それは神親王様が持つべきもの。あなた方では荷が重い。真の継承者は、天空国の覇王、神親王様です!」
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