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第一章 伝説の始まり
第7話 裏切りの理由
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真成の後ろから次々と刺客が表れて、泉の前の飛王と飛翔を取り囲んだ。
恐らくは、地下の碑文の間にかなり前から隠れていたのだろう。刺客はみな顔を布で覆い、黒い装束に身を包んでいる。
一目で、聖杜の民でないことが分かった。
「もしや、これは天空国の暗殺部隊か?」
「もちろん、神親王直属の隠密部隊です」
「そう言う事か! 父上を毒殺したのは、お前だったのだな!」
驚きと悲しみと悔しさの入り混じった飛王の声に、真成は呆れたような仕草を返す。
「今頃気づかれたのですか? なんと甘々な王子様方ですね。彰徳王とそっくりです。及び腰で臆病な『ティアル・ナ・エストレア』は必要ありません!」
「なぜだ? 『ティアル・ナ・エストレア』を守るために一番尽力してきたはずの、神官のお前が、なぜ裏切るようなことをするのだ?」
真成は心底うんざりしたような顔をした。
「『聖杜の民の誓』のことですか? あんなものに縛られているから、我々聖杜の民はいつまでたっても貧しいのです。犠牲ばかり払っているのに、民の未来は消滅へ走っているだけ。『知恵の泉』という大きな国の財産を持ちながら、隠しておくだけなんてもったいない! そんなことだから、『ティアル・ナ・エストレア』の力が弱まってしまっているのです」
飛王は頷きながら、なだめるように言葉を紡いだ。
「お前の考えは分かった。だが、十年前まではそんなことは無かったではないか。人々は『知恵の泉』の知恵を持って他国へ赴き、人々の幸せのために尽力していた。けれど、行った先々で、せっかくの知恵が、人々の生活の向上に使われずに軍事転用されたり、酷い時には知恵を伝えた者がスパイ容疑で処刑されたり、聖杜の民の思いが無に帰する事件が多発したから、父上は門を閉ざしたのだ。決して、弱腰になった訳ではない。聖杜の民を守ろうとされたのだ」
その時、飛王と飛翔は、真成が灌漑施設を普及に行って、スパイ容疑で聘楽国に処刑された安頼の息子であったことを思い出した。
「現に、そなたの父上も、非業の死を遂げられたでは無いか!」
「だからですよ!」
真成は目を血走らせて続けた。
「父は人々のために働いたのに殺された! なのに、聖杜の民は、国王は、『ティアル・ナ・エストレア』は、何もしてくれなかった。門を閉ざしただけ。せっかくの知恵も、民の身を守るためには使ってくれない。なぜです! せっかくこんな力がありながら、なぜ他国のためにばかり働いて、自国の民のために使おうとしないのですか! 何のための知恵ですか!」
「それは……」
飛王も飛翔も、何も言い返せなかった。
確かに、今まで聖杜の民が、伝説のために犠牲になってきた。それは紛れもない事実だった。
「なぜあの時、父の仇をうちに行ってくれなかったのですか!」
「それは……仇を打っても父上の命は還ってこないし、更なる争いを産むだけだ。争いの連鎖が起きれば、それこそ聖杜の民は消滅してしまうではないか!」
「そんな、綺麗ごとが、通用すると思っているのですか! あなた方は、それで気持ちが収まるのですか? どうです! 父王の仇が目の前にいる気分は! 怒りが沸き上がってきませんか? 私を殺したいとは思わないのですか?」
真成は笑いながら、挑発するように飛王と飛翔の前で腕を広げ、無防備な姿をさらした。
「さあ、私を殺すがいい! 聖人ぶった王子たちよ!」
飛王と飛翔は、服の上から自分の剣に手を掛けた。けれど、抜こうとはしない。
厳しくも悲しみに満ちた目を真成に向け、唇から血がでるほど噛み締めるだけだった。
「やっぱりあなた方は腰抜けだ! だから、私はもっと力を使える方に、『ティアル・ナ・エストレア』の継承者になって欲しいのです! この力をきちんと使える、強力な支配者に! 命をちゃんと守れる支配者に! 強力な力で他国をねじ伏せる。圧倒的力を持てば、他国に自国の民を蹂躙される危険なんてないんですよ!」
「それは違う! 圧倒的な力を持てば争いがなくなるなんてことはあり得ない!」
飛王が必死に抗議したが、真成は無表情に聞き流した。
そして、無言のまま右手を挙げると、暗殺部隊に合図を出した。
「殺せ」
恐らくは、地下の碑文の間にかなり前から隠れていたのだろう。刺客はみな顔を布で覆い、黒い装束に身を包んでいる。
一目で、聖杜の民でないことが分かった。
「もしや、これは天空国の暗殺部隊か?」
「もちろん、神親王直属の隠密部隊です」
「そう言う事か! 父上を毒殺したのは、お前だったのだな!」
驚きと悲しみと悔しさの入り混じった飛王の声に、真成は呆れたような仕草を返す。
「今頃気づかれたのですか? なんと甘々な王子様方ですね。彰徳王とそっくりです。及び腰で臆病な『ティアル・ナ・エストレア』は必要ありません!」
「なぜだ? 『ティアル・ナ・エストレア』を守るために一番尽力してきたはずの、神官のお前が、なぜ裏切るようなことをするのだ?」
真成は心底うんざりしたような顔をした。
「『聖杜の民の誓』のことですか? あんなものに縛られているから、我々聖杜の民はいつまでたっても貧しいのです。犠牲ばかり払っているのに、民の未来は消滅へ走っているだけ。『知恵の泉』という大きな国の財産を持ちながら、隠しておくだけなんてもったいない! そんなことだから、『ティアル・ナ・エストレア』の力が弱まってしまっているのです」
飛王は頷きながら、なだめるように言葉を紡いだ。
「お前の考えは分かった。だが、十年前まではそんなことは無かったではないか。人々は『知恵の泉』の知恵を持って他国へ赴き、人々の幸せのために尽力していた。けれど、行った先々で、せっかくの知恵が、人々の生活の向上に使われずに軍事転用されたり、酷い時には知恵を伝えた者がスパイ容疑で処刑されたり、聖杜の民の思いが無に帰する事件が多発したから、父上は門を閉ざしたのだ。決して、弱腰になった訳ではない。聖杜の民を守ろうとされたのだ」
その時、飛王と飛翔は、真成が灌漑施設を普及に行って、スパイ容疑で聘楽国に処刑された安頼の息子であったことを思い出した。
「現に、そなたの父上も、非業の死を遂げられたでは無いか!」
「だからですよ!」
真成は目を血走らせて続けた。
「父は人々のために働いたのに殺された! なのに、聖杜の民は、国王は、『ティアル・ナ・エストレア』は、何もしてくれなかった。門を閉ざしただけ。せっかくの知恵も、民の身を守るためには使ってくれない。なぜです! せっかくこんな力がありながら、なぜ他国のためにばかり働いて、自国の民のために使おうとしないのですか! 何のための知恵ですか!」
「それは……」
飛王も飛翔も、何も言い返せなかった。
確かに、今まで聖杜の民が、伝説のために犠牲になってきた。それは紛れもない事実だった。
「なぜあの時、父の仇をうちに行ってくれなかったのですか!」
「それは……仇を打っても父上の命は還ってこないし、更なる争いを産むだけだ。争いの連鎖が起きれば、それこそ聖杜の民は消滅してしまうではないか!」
「そんな、綺麗ごとが、通用すると思っているのですか! あなた方は、それで気持ちが収まるのですか? どうです! 父王の仇が目の前にいる気分は! 怒りが沸き上がってきませんか? 私を殺したいとは思わないのですか?」
真成は笑いながら、挑発するように飛王と飛翔の前で腕を広げ、無防備な姿をさらした。
「さあ、私を殺すがいい! 聖人ぶった王子たちよ!」
飛王と飛翔は、服の上から自分の剣に手を掛けた。けれど、抜こうとはしない。
厳しくも悲しみに満ちた目を真成に向け、唇から血がでるほど噛み締めるだけだった。
「やっぱりあなた方は腰抜けだ! だから、私はもっと力を使える方に、『ティアル・ナ・エストレア』の継承者になって欲しいのです! この力をきちんと使える、強力な支配者に! 命をちゃんと守れる支配者に! 強力な力で他国をねじ伏せる。圧倒的力を持てば、他国に自国の民を蹂躙される危険なんてないんですよ!」
「それは違う! 圧倒的な力を持てば争いがなくなるなんてことはあり得ない!」
飛王が必死に抗議したが、真成は無表情に聞き流した。
そして、無言のまま右手を挙げると、暗殺部隊に合図を出した。
「殺せ」
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