ティアル・ナ・エストレア ―青髪の双子の王子―

涼月

文字の大きさ
9 / 91
第一章 伝説の始まり

第9話 時の輪の中で

しおりを挟む
『知恵の泉』に落ちた飛翔は、沸き上がる泡にもみくちゃにされた。水面を目指して必死で泳ぐも、一向に辿り着けない。

「飛王! 大丈夫か!」

 叫ぼうとして、ごふっと水を飲み込んだ。鼻もツーンとする。

 一体どうなっているんだ!

 意識が朦朧とする中、温かく白い光に包まれるのを感じた。

 俺はこのまま死ぬのか?
 いや、まだ死ねない!
 飛王の元に戻ならなければ……

 そこまで思ったところで、完全に意識が途切れた。


 どれくらい時がたったのだろうか……

 気づくと、星空の中を漂っていた。

 俺は今、宇宙にいるのか?

 その時、頭の中に直接声が降ってきた。

 これが宇宙そらの神の声なのか?

 少し高くて細いけれど、優しく温かい声だった。


 人の子よ。私に何用だ。


 飛翔は必死で願った。

 飛王のところへ帰してください!
 飛王を助けなければならないんです!
 だから、元いた場所へ帰して欲しい!


 そうか…

 宇宙の神は静かに言った。

 そろそろ時が満ちたと思っていたのだが、そなたは自分の使命を知らぬようだな。

 私の使命?

 飛翔は驚いて尋ねる。

 神の声は静かに告げてきた。

 よかろう! 
『ティアル・ナ・エストレア』の片割れよ。
 これから、そなたに大切な役割を与える。
『ティアル・ナ・エストレア』の本当の使命を見つけ出すのだ。
 それは遠い昔に失われ、少し違った形で伝わってしまったようだ。
 だから、まずは、本当の使命を探せ。


 飛翔は混乱と落胆の心のまま、神に頼んだ。

 なぜ、今それを教えていただけないのですか?
 もともと、神であるあなたが私たちに下された使命なのですよね。
 ならば、今、ここで教えてください!

 
 ほほほほ…

 宇宙の神は面白そうに笑った。

 なぜ私が教えてやらねばならぬ。
 私は人を作った。そして、知恵を与えた。
 その知恵を使ってどう生きていくのか。
 それは、そなたたち人の自由だ。
 私がどうこうする話ではない。
 だが……


 その声が、自愛に満ちた響きに変わる。

 知恵が人を生かす時もある。
 知恵が人を陥れる時もある。
 そなたの求める真実が、簡単に辿り着けるとは限らぬ。
 探し続けるか、あきらめるか。
 それもまた、そなたたち人の自由だ。

 さあ、おしゃべりはここまで。
 おまえのなすべきことをせよ。
 おまえの片割れも、今そのことに気づいたようだ。
 本当の使命を知った時、そなたたちがどのような道を選択するのか。
 それは、そなたたち次第である。

 大丈夫だ。
 そなたたちは二人で一人。
 剣と指輪がそろわなければ、『ティアル・ナ・エストレア』の役目も果たせぬ。

 大丈夫。
 そなたたちは、いずれまた必ず会える。
 だから心置き無く、そなたはそなたの役割を果たせ。


 そうだな、一つだけヒントをやろう!

『ティアル・ナ・エストレア』のは『希望』を表すと言われているが、最初は別の意味だったのだ。
『希望』などという不確定で明るい言葉では無かった。
 が、いつの間に『希望』と言う意味に変わったのか。
 なぜ意味を変えたのか。

 さあ、謎解きの時間の始まりだ!


 その言葉が終わると同時に、飛翔はまた光に包まれた。

 有無を言わさぬ光の渦の中で、飛翔はそれでも、飛王の元へ帰れることを願っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...