ティアル・ナ・エストレア ―青髪の双子の王子―

涼月

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第二章 使命を探す旅

第20話 壮国

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 来幸の旅は、まず長栄港より南下して、宝燐山から流れくる玄灰シュァンフゥ川の河口を目指した。
 飛翔の知る、聘楽ピィンルゥよりも更に南の地域を指す。

 壮国の国に統合される前は、河口域に散らばる小国を統一した、ラオプタヤ王朝と言う王政国家が治めていた。
 玄灰川はとても長く大きな川のため、雨季になると氾濫が起こった。その氾濫によって、宝燐山からの肥沃な土が、やがて河口に新たな土地を作っていく。

 人々はそこをデルタ地帯と名付け、稲作や畑作を始めたが、治水管理が難しく定住できる地域では無かった。

 統一王朝、ラオプタヤ王朝の財力や、土木技術の発達によって、ようやく貯水地がつくられ、堤防が整備されて、徐々に緩やかな氾濫管理が行われるようになったのであった。

 現在では、大規模な稲作地域として、壮国の食糧庫的役割を担っている。

 雨季と乾季があるが、一年を通して暖かな気候のため、来幸は体がほぐされていくような開放感を味わったと記している。

 旅行記には、治水工事の様子や、稲作風景の描写が細かく描かれていた。
 また、農地について、ラオプタヤ王朝から引き継いだ後、農民へ一定の広さを分け与えたほうが良いと提言し、一定農地の私有化が、生産意欲の向上に役立つと付け加えられていた。
 若い官吏の言葉を、どこまで延世王が受け入れたのかは記されていないが、こんなふうに自由に書き残されているところを見ると、意見の言い易い雰囲気が出来上がっていたのだろうなと飛翔は思った。

 広大な国土をもつ壮語は、王都以外の地域を三十五に分けて、それぞれ地方省ディーファンシァンと呼ばれる機関を設けていた。
 当然、その長は、中央から赴任した役人が務めていたのだが、それ以外の役人については、採用試験に合格しさえすればそのまま雇用が維持された。

 つまり、制圧した地域の人々をそのまま雇用したのである。
 ここが、延世王の成功の秘訣でもあった。
 そのまま地域の雇用が確保される、地域の特色が生かされる……その保証があると、無用な争いや反発が減り、人材の無駄や能力の喪失も防げる。
 今までと変わらない悪習が立ちきれない場合もあるが、そこは中央からの役人が手をくだす。

 延世王と言う人物は、双方の良いところを生かす手腕に長けていたようだ。

 採用試験も二通り用意された。
 四省スゥシァン地方省ディーファンシァン、それぞれの試験があって、優秀な者は、地方出身者でも、迷わず四省に採用した。

 これも、昨日まで敵だった人々にも出世の道が閉ざされていないという希望に繋がった。
 こうして、偏見無く、優秀な人材を集めようとした延世王は、やはり尊敬できる王だったのだろうと飛翔は思った。

 できれば会ってみたかったな……

 門戸を広げながらも、鉄壁の中央集権国家体制を貫く、壮国。
 だが、唯一例外を設けたのが、海洋都市バンドスであった。
 

 貿易商人の街バンドス。
 港の貿易で富を得た商人たちは、次第に力をつけ街に貢献するようになっていく。
 多数の商人が協力して街を守り、国を作り上げていく過程で、みんなで協議しながら街を統治していく方法が編み出された。
 その協議の場は、『議会コングレソス』と呼ばれるようになり、そのメンバーである『議員コングレシスタ』は街の人々の選挙によって選ばれるようになった。

 これは、壮国のような君主制とは全然違う国の形であった。

 そんな人々に、いきなり頭ごなしに皇帝の強権を振りかざすのは得策でないと判断した延世王は、バンドスを特別地区とした。
 もともと存在する議会を残し、議会の長と中央官吏を同等の立場として、協議する方式をとったのだ。
 これにより、反発を最小限に抑えることに成功している。

 だが、延世王はしたたかさも持ち合わせていた。

 反発を抑えながらも、商人の財力を国へ回収することは忘れない。
 自治を認める代わりに、港で取引される商品に港使用料を認めさせたのだ。
 一つ一つに掛けられた使用料は低く抑えつつも、全体の利用料を考えると大きくなる。
 こうして、延世王は、バンドスを壮国の金蔵と位置付けたのであった。
 
 バンドスはその頃も美しい港街だった。

 白い壁、青い屋根の建物が立ち並び、海の青さを引き立てた。
 街の中央には、美しい模様の彫られた時計台もあり、時を刻んでいる。
 街中に楽し気な楽器の音が鳴り響き、美しいガラス細工が店先に並び、美味しい葡萄酒ルヴァンが飲める。

 来幸は訪れた時の感動をつぶさに記録していた。

 海……
 飛王が行きたいと言っていたな。
 海賊の話や貿易商人の話を聞くのが好きだったよな。
 そう言えば仲間の考建こうけんは、大きな船を作って、いつか大海原に乗り出すんだと息巻いていたっけ。
 俺もいつか見に行かれるだろうか?

 飛翔は、そこまで読み進めたところで、どうにも瞼が重くて耐え切れなくなってきた。そのままベッドに突っ伏して、いつの間にか眠り込んでしまった。
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