ティアル・ナ・エストレア ―青髪の双子の王子―

涼月

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第二章 使命を探す旅

第21話 ミザロの町

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「飛翔、お昼の時間だけど……起きられるかしら?」
 フィオナの声に、飛翔はうっすらと目を開けた。

「お昼……」
「ええ、起きたら食堂に降りて来てくれるかしら」
「……分かった」

 ぼーっとする頭のまま、旅行記を閉じて枕元に置き直す。
 ゆっくりと起き上がって、階下の食堂へ降りていった。

 食堂のテーブルには、魚を揚げたものと、香辛料の効いた炒めご飯が用意されていた。飛翔は砂漠のオアシスで魚料理があることに驚いて尋ねた。

「この辺りでは、魚が釣れるんですか?」
「ああ、ここミザロの町は、中央に川が流れているからね。その川のお陰で発展したオアシスだよ」
「川があるんですね」
 飛翔は聖杜の川を思い出した。

「川から取れる新鮮な魚が、町の 市場メルカートで買えるのよ。さあ、食べて食べて!」
 フィオナが二人の会話を遮って食事を促した。

「その川はミザロの西端にある泉が水源になっているんだ。地下水が沸き出ているんだよ」
「泉!」
「ああ、『スルス』と呼ばれているよ。水の量が多いから、わが家がこんな丘の上にあっても井戸水に困らないでいられるのさ」
「なるほど」
 ドルトムントの説明を聞きながら、飛翔はミザロのことをもう少し詳しく知りたいと思った。

「ミザロの国も、壮国の一部ですよね」
「そうだね。ルシア国と国境を接しているロイド、その次のウルク、ミザロ、この三つのオアシスは、元々アブドル朝というオアシス国家だったんだがね、延世王によって壮国に組み込まれてしまったんだよ。とは言っても、隊商路としての役割はそのままだから、共通語のバルト語が公用語だよ。アブドル朝時代のサファル語も残っているから町に行くと普通にサファル語で会話しているけどね」

「サファル語?」
「バルト語に似てるよ。ちょっと発音が違うだけで。だから、まあなんとなくは分かると思うけど」
「 スルスはどんな感じですか?」
「どんな? そうだなー、椰子の木に囲まれた小さな泉だよ。まあ、ウルクやロイドにも湧き水があって、そのお陰でオアシスが出来上がっているからね。この砂の下にあんなにたくさんの水が蓄えられていると思うと不思議だよね」

 飛翔はドルトムントの言葉に考えこんだ。

『スルス』は特別な存在なのかと思ったけれど、他のオアシスにもあるんだな。
 砂漠に泉や川があるのは、普通のことなのか……

 もしかしたら、この泉が聖杜に繋がっているかもしれないと期待した飛翔はがっかりした。

「ミザロは砂漠の玄関口のような位置で、これより東に行くとだんだん緑が増えてくるよ。 景林ヂィンリィンという町から先は、もとから壮国だよ」
 ドルトムントは続けた。

「ミザロは昔から隊商商人が行き来しているからね。西のルシア国、キルディア国、アルタ国からの旅人が沢山泊まっていくから、国際色豊かなんだ。元気になったら、 市場メルカートに行ってみるといいよ。面白い品もいっぱいだし、面白い恰好の人もいるしね」

「お父さん! 説明はほどほどにして、二人とも温かいうちに食べてよ」
 フィオナが頬を膨らませている。
 ドルトムントはまずい! という顔をして、飛翔にも目配せした。

 聖杜で食べた魚の味と似ているような気がして、飛翔は嬉しくなった。
 ご飯の香辛料は、食べたことの無い味だったが、黄色い色をしているので、多分薬で使われていたカリムと言う植物の粉だろうと思った。

 その時、ドルトムントが思い出したように付け加えた。

「ミザロでは、ククミスが美味しいよ」
「ククミス?」
「ああ、緑色の皮をして、中に甘い水分がいっぱい含まれていて、美味しいんだよ。砂漠の乾燥した大地でも割とよく育つんでね。隊商人たちのお気に入りだし、旅先での水分補給にも役立つからね」

 ドルトムントが口の中の甘みを想像して幸せそうな笑顔になると、
「今度、食べさせてあげるね。庭のククミスが育ったら」
 フィオナがニコニコしながら言った。

「それは楽しみだな」
 素直に喜ぶ飛翔に、隣のドルトムントが耳打ちする。

「フィオナのククミスは、いつになったら食べられるかわからないから、あまり期待しないほうがいいよ」
「何か言った? お父さん」
「べ、別に……」
 フィオナのジト目を見て、ドルトムントは開き直ったように言った。

「庭のククミスのツタ、今にも枯れそうになってるのは本当だろう」
「う……自然栽培よ。自然は厳しいのよ。実が生る時と生らない時があるのよ」

 フィオナが言い訳のように言っている。
 めんどくさがり屋のフィオナは、水やりをさぼりがちである。
 いくら乾燥に強いとは言え、全然水が無いと流石に厳しい時もある。

 してやったり!

 ドルトムントが珍しくフィオナに勝ち誇ったような顔を向けると、フィオナはかわいく口を尖らせた。
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