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第七章 バンドスの船乗り
第64話 灯台守
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「おーい! バハル爺さん! アドラスだ。客人を連れてきたぞ!」
扉をたたきながら叫ぶと、中から少年の声が答えた。
「アドラスさん、いらっしゃい!」
「おう! ラメル。忙しいところ悪いな。バハル爺さんに客人だ」
ラメルと呼ばれた少年は、黒髪に金色の瞳の美しい少年だった。慌てて中へ六人を通すと、奥の作業場にバハルを呼びに行った。
「ラメルの父親は、去年海に出たきり帰って来てないんだ。だから、バハル爺さんがまだ早いけど、海図の知識を教え始めたらしい。海に出るってのは、今も変わらず命がけってことさ」
アドラスはそう言って顔を引き締めた。
「客人てのは、誰だ?」
そう言いながら出てきた白髪の老人は、ニコリともせずみんなを見回した。最後に飛翔に目を止めると、値踏みするかのようにじっくりと見つめた後、
「まあ、奥へ来いよ。」
と言って、作業部屋へ案内してくれた。
作業場の真ん中には大きな机があって、描きかけの海図があり、線を引く道具や 方位磁針などが転がっている。
「そこいらに適当に座ってくれ。ラメルは続きをやってろよ」
ラメル少年は黙って海図の前に戻り、手を動かし始めた。
「で、何を知りたいんだ?」
バハルはそう言って、飛翔の目を真っすぐに見た。
「こちらにある、古いお品について聞きに来たんです」
飛翔がそう言うと、ドルトムントが後を引き継いだ。そして、アドラスから貰った 方位磁針でシャクラ砂漠へ発掘に行っていること、言い伝え通り、 方位磁針が指し示した場所を発掘したところ、下から古い遺跡らしき物が見つかったことを、包み隠さず話した。
横で聞いていたアドラスはびっくりして聞き返した。
「おまえ、昨日はそんなこと一言も言って無かったじゃないか! 遺跡が見つかっただって! そりゃすげえや!」
「ただ、その遺跡については、今まで私が調べた限りどの記録にも残っていないのです。誰にも知られていない、未知の遺跡です。にも関わらず、なぜか 玉英王から発掘の指示が改めて出されました。これには何か理由があるのではないかと思って、調べているところなのです。アドラスから、元々あの 方位磁針はこちらの物と聞いてお伺いしました。協力していただけないでしょうか?」
ドルトムントの話を聞き終わったバハルは、分かったと言ってみんなを作業部屋の更に奥にある、道具部屋のようなところへ案内した。
「うちにある古い物は、別に大切に保管されているような物じゃないんでね。海図を描いたり船を作ったりする時に使う道具の一部さ。古い物を使える限り使っているだけで、骨董品みたく飾っているわけじゃないんだよ。だが、一つだけ大切に飾っている物がある」
そう言ってバハルが埃避けに掛けてあった布を外すと、木で作られた帆船の模型が現れた。
これは!
飛翔は喜びで胸が震えるのを感じた。
孝建が作っていた模型!
こんな品が残っているとは、思いもよらなかった。
あの頃、 エストレアの工房で一緒に学びながら作っていた模型。
アマルの木で作られた船は、 孝建が夢を語りながら作っていた作品そのものだった。
遂に見つけられた! 孝建がここで生きていたと言う証を!
「どうだ! 見事だろ!」
ドルトムントが感嘆の声をあげ、フィオナとジオの目が好奇心で煌めいた。
彼らの中で唯一、大型帆船に乗った経験があるハダルでさえ、驚きで目を見開くほど、それは先進的で美しい船の模型であった。
「俺は、自分の祖先がいつ頃どこから来たかなんてことは考えたことも無いが、これだけは自慢の品さ。俺の遠い祖先が、船の知識を一杯勉強して、それを仕事に選んだ。そして、代々家族にそれを引き継いで、うちはそれでご飯が食べられていると言う訳さ。ありがたい話さ。俺はこの仕事が好きだからな。」
バハルの目が少し優しくなった。
「これは、そのご先祖が作ったわが家の家宝だな。こんなでっかい模型、見たこと無いだろう。かなり正確に作られているんだぞ! で、これがデカいのには意味があってな」
バハルはそう言うと、船の胴体の船室に当たる部分をガタガタと動かすと、パカッと開いて中から何かを取り出した。
「こんな風に物を隠せるんだな」
扉をたたきながら叫ぶと、中から少年の声が答えた。
「アドラスさん、いらっしゃい!」
「おう! ラメル。忙しいところ悪いな。バハル爺さんに客人だ」
ラメルと呼ばれた少年は、黒髪に金色の瞳の美しい少年だった。慌てて中へ六人を通すと、奥の作業場にバハルを呼びに行った。
「ラメルの父親は、去年海に出たきり帰って来てないんだ。だから、バハル爺さんがまだ早いけど、海図の知識を教え始めたらしい。海に出るってのは、今も変わらず命がけってことさ」
アドラスはそう言って顔を引き締めた。
「客人てのは、誰だ?」
そう言いながら出てきた白髪の老人は、ニコリともせずみんなを見回した。最後に飛翔に目を止めると、値踏みするかのようにじっくりと見つめた後、
「まあ、奥へ来いよ。」
と言って、作業部屋へ案内してくれた。
作業場の真ん中には大きな机があって、描きかけの海図があり、線を引く道具や 方位磁針などが転がっている。
「そこいらに適当に座ってくれ。ラメルは続きをやってろよ」
ラメル少年は黙って海図の前に戻り、手を動かし始めた。
「で、何を知りたいんだ?」
バハルはそう言って、飛翔の目を真っすぐに見た。
「こちらにある、古いお品について聞きに来たんです」
飛翔がそう言うと、ドルトムントが後を引き継いだ。そして、アドラスから貰った 方位磁針でシャクラ砂漠へ発掘に行っていること、言い伝え通り、 方位磁針が指し示した場所を発掘したところ、下から古い遺跡らしき物が見つかったことを、包み隠さず話した。
横で聞いていたアドラスはびっくりして聞き返した。
「おまえ、昨日はそんなこと一言も言って無かったじゃないか! 遺跡が見つかっただって! そりゃすげえや!」
「ただ、その遺跡については、今まで私が調べた限りどの記録にも残っていないのです。誰にも知られていない、未知の遺跡です。にも関わらず、なぜか 玉英王から発掘の指示が改めて出されました。これには何か理由があるのではないかと思って、調べているところなのです。アドラスから、元々あの 方位磁針はこちらの物と聞いてお伺いしました。協力していただけないでしょうか?」
ドルトムントの話を聞き終わったバハルは、分かったと言ってみんなを作業部屋の更に奥にある、道具部屋のようなところへ案内した。
「うちにある古い物は、別に大切に保管されているような物じゃないんでね。海図を描いたり船を作ったりする時に使う道具の一部さ。古い物を使える限り使っているだけで、骨董品みたく飾っているわけじゃないんだよ。だが、一つだけ大切に飾っている物がある」
そう言ってバハルが埃避けに掛けてあった布を外すと、木で作られた帆船の模型が現れた。
これは!
飛翔は喜びで胸が震えるのを感じた。
孝建が作っていた模型!
こんな品が残っているとは、思いもよらなかった。
あの頃、 エストレアの工房で一緒に学びながら作っていた模型。
アマルの木で作られた船は、 孝建が夢を語りながら作っていた作品そのものだった。
遂に見つけられた! 孝建がここで生きていたと言う証を!
「どうだ! 見事だろ!」
ドルトムントが感嘆の声をあげ、フィオナとジオの目が好奇心で煌めいた。
彼らの中で唯一、大型帆船に乗った経験があるハダルでさえ、驚きで目を見開くほど、それは先進的で美しい船の模型であった。
「俺は、自分の祖先がいつ頃どこから来たかなんてことは考えたことも無いが、これだけは自慢の品さ。俺の遠い祖先が、船の知識を一杯勉強して、それを仕事に選んだ。そして、代々家族にそれを引き継いで、うちはそれでご飯が食べられていると言う訳さ。ありがたい話さ。俺はこの仕事が好きだからな。」
バハルの目が少し優しくなった。
「これは、そのご先祖が作ったわが家の家宝だな。こんなでっかい模型、見たこと無いだろう。かなり正確に作られているんだぞ! で、これがデカいのには意味があってな」
バハルはそう言うと、船の胴体の船室に当たる部分をガタガタと動かすと、パカッと開いて中から何かを取り出した。
「こんな風に物を隠せるんだな」
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